倉庫の人員配置を最適化する5つの施策|要因から委託先の見極め、成功事例まで
「繁忙期は人手が足りず、閑散期は人件費が膨らむ。このズレをなくす人員配置の方法はないのか」
「各作業にかかっている時間や人数が把握できていない。勘に頼らないやり方に切り替えたい」
倉庫の人員配置において、こうした悩みを抱える現場担当者は少なくありません。人員配置が最適でなければ、売上や利益を最大化できないほか、機会損失、ひいては顧客満足度の低下につながる可能性すらあります。
本記事では、人員配置が最適化できない根本原因から、具体的な5つの改善策、委託倉庫を見極める視点、そして成功事例までを解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、倉庫の人員配置における課題解決を実現してください。
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目次
倉庫の人員配置が最適化できない要因
まずは、倉庫の人員配置が最適化できない要因について、以下の3つのポイントで解説します。
- 物量予測の精度が低く人員が足りない/余る
- 勘や経験に頼った人員配置になっている
- 作業の属人化により適正な人員数がわからない
物量予測の精度が低く人員が足りない/余る
人員配置の出発点となるのが、物量予測(将来予測)です。数ヶ月先の入出荷量を高い精度で見通せなければ、現場に必要な人員数を正しく定めることはできません。
わかりやすい例として、大型ECショップのセール開催が挙げられます。開催時は発注が増えることが予想されるため、あらかじめ多くの人員を確保しようとするはずです。
その物量を「どんぶり勘定」ではなく、過去のデータなどから高い精度で予測できなければ、繁忙期の人手不足や閑散期の人件費超過を招いてしまいます。
勘や経験に頼った人員配置になっている
物量予測が仮に正確であっても、各作業にかかる時間や必要人数がデータ化されていなければ、配置の判断はベテラン担当者の経験と勘に依存してしまいます。
筆者がかつて従事していたアナログな現場でも、まさにこの状態でした。「どの作業に、どれくらいの時間がかかっているか」は、感覚値でしか把握できていなかったのです。
一方、大手ECの物流倉庫では、1人ひとりの生産性が数値で可視化されていました。ボトルネックとなっているラインへ、生産性の高い作業員を再配置するなど、日々の改善にデータを活用していたのです。
両者の違いは、データの有無に尽きます。感覚に頼った配置は、担当者本人の勘という「見えない資産」の上に成り立つ、不安定な仕組みだといえます。
作業の属人化により適正な人員数がわからない
特定の作業が特定の人にしかできない状態では、そもそも適正な人員数を算出すること自体が困難です。
筆者が経験した現場においても、検品担当のベテランが不在になった際、代わりに2名を投入しました。それでも、生産性はまったく追いつきませんでした。作業スピードだけでなく、ミスの発見力や判断の精度といったノウハウは、一朝一夕には引き継がれなかったのです。
適正な人員数を把握するためには、まず作業そのものを属人化から解放する必要があるのです。
次章では、「人員配置の最適化に必要な3つの視点とは?」という疑問にお答えします。
人員配置の最適化に必要な3つの視点

本章では、人員配置の最適化に必要な3つの視点について、以下のポイントで解説します。
- 物量予測の精度を高める
- 作業の標準化を推進する
- 生産性・力量の可視化
- 【コラム】「レイバーコントロール(レイバースケジューリング)」という考え方
物量予測の精度を高める
物流センターの物量分析では、月末ピークや週間波動といった変動の波を数値で把握し、平準化を図る計画を立てることが有効とされています。
取得したデータの分析や活用方法については以下の資料で詳しく解説しています。気になる方は以下のリンクをクリックし、詳細を確認してください。
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作業の標準化を推進する
2つ目の視点は、作業の標準化です。手順とNG行為が明確になっていれば、経験の浅い人材でも一定の品質で作業をこなせます。
筆者が勤めていた大手ECの物流倉庫では、ベテランからアルバイトまでが同じ手順に沿って作業していました。その結果、入社初日にわずか2時間程度の講習を受けただけで、すぐさま現場業務に従事できたのです。
標準化が進んだ現場は、特定の担当者に依存しません。前章で触れた「属人化による必要人員数の暗黙知化」を防ぐ土台にもなります。
生産性・力量の可視化
3つ目の視点は、1人ひとりの生産性を数値で可視化することです。誰がどれだけの成果を上げているかが見えれば、配置の判断は感覚から数値へと変わります。
筆者が経験した大手ECの物流現場では、リーダーが各作業者の生産性をリアルタイムで把握していました。その数値をもとに、ボトルネックとなっているラインへ生産性の高い作業員を再配置するなど、日々の改善にデータを活用していたのです。
可視化された生産性データは、繁忙期の人員シフトだけでなく、教育やスキルアップの計画にも活用できます。
【コラム】「レイバーコントロール(レイバースケジューリング)」という考え方
ここまで解説してきた3つの視点は、「レイバーコントロール(レイバースケジューリング)」という考え方として体系化されています。
【レイバーコントロールとは】
従業員の労働時間スケジュールの調整を行い、人手が必要なときに必要な分だけ人員を投入することを目的とする人材運用の手法。
例えば、ある食料品スーパーでは、曜日や天候による来店客数の変動を踏まえてシフトや作業スケジュールを調整し、レイバーコントロールを実践しています。さらに従業員ひとりあたりの生産性(人時生産性)のばらつきを減らす仕組みを構築したことで、繁忙・閑散に応じた無駄のない人員配置につながりました。
こちらは小売業の例ですが、倉庫・物流センターであれば、「来客数」を「出荷数」に置き換えるなどして応用できます。物量・作業・生産性3つの視点を個別に取り組むのではなく、レイバーコントロールという1つの管理サイクルとして捉え直すこと。それが、継続的な最適化につながる考え方です。
次章では、「倉庫の人員配置を最適化するために、具体的に何から着手すればいいのか?」という疑問にお答えします。
倉庫の人員配置を最適化するために実施すべき5つの具体策

本章では、人員配置を最適化するために実施すべき5つの具体策について、以下のポイントで解説します。
- 需要予測手法を活用し必要人員数の精度を上げる
- 作業手順書や動画マニュアルを活用し作業の標準化を推進する
- WESなどを活用し作業員の生産性を可視化する
- トラック予約受付システムで庫内作業を平準化する
- 日々調整し改善を続ける(KPI設定・PDCAサイクル)
需要予測手法を活用し必要人員数の精度を上げる
1つ目の具体策は、需要予測の精度を引き上げることです。
必要な人員数は、本来「必要処理量」を「標準作業生産性」と「設定する作業時間」で割ることで、定量的に導き出せます。
- 必要処理量:その日・その時間帯に処理すべき物量のこと(入出荷ケース数やピッキング件数など)
- 標準作業生産性:作業者1人が1時間あたりにこなせる標準的な作業量のこと。過去の実績値やマテハンの仕様などから設定
- 設定する作業時間:その作業を何時間で終わらせるかという目標時間
例えば、以下のようなケースであれば、計算式に当てはめて必要な人員数が算出できます。
【モデルケース】
- 1日の必要処理量:30,000ケース
- 標準作業生産性:300ケース/1人1時間
- 作業時間:4時間
【計算式】
30,000 ÷(300×4)=25人
もしこの計算を経ず、勘や経験だけで20人を配置したとすると、実際の作業時間は5時間まで伸びてしまいます。出荷の遅れや残業の発生、急な増車の手配など、コスト増につながりかねません。
需要予測の具体的な手法や活用分野について詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてご確認ください。
関連記事:需要予測とは?具体的な手法や活用分野、成功事例などを解説
作業手順書や動画マニュアルを活用し作業の標準化を推進する
2つ目の具体策は、作業手順書や動画マニュアルを整備し、作業の標準化を推進することです。
文字と写真だけでは、動作の細かいニュアンスまで伝わりにくいもの。動画マニュアルと組み合わせることで、新人教育やスポット人材の受け入れがスムーズになります。
マニュアル作成は、一度きりで終わらせてはいけません。現場の変化に合わせて定期的に見直し、更新のルールも決めておくことが大切です。ルールがなければ、せっかくのマニュアルも形骸化してしまいます。
WES(倉庫運用管理システム)などを活用し作業員の生産性を可視化する
3つ目の具体策は、WESなどのツールで、作業員の生産性を可視化することです。
【WES(Warehouse Execution System/倉庫運用管理システム)とは】
在庫管理を主目的とするWMS(倉庫管理システム)とは異なり、作業指示とリアルタイムの実績データを連携させ、倉庫の作業効率そのものを最適化する仕組み。また、設備の制御機能を併せ持つ。
誰が、どの作業を、どれくらいの速さでこなしているかが数値で見えるようになれば、配置転換の判断材料が明確になります。さらに、生産性データが蓄積されれば、教育計画やスキルアップの優先順位づけにも活用できます。
トラック予約受付システムで庫内作業を平準化する
4つ目の具体策は、トラック予約受付システムを導入し、庫内作業を平準化することです。
トラック予約受付システムを活用し入場時間をあらかじめ分散させることで、時間帯ごとの作業量が読みやすくなります。その結果、適正人員が把握しやすく、ムダのない人員配置を実現します。
さらに、トラックの入場を管理することは「焦りの発生源」を仕組みとして取り除き、事故を防ぐことにも寄与します。トラックの入場時間が特定の時間帯に集中すると、庫内作業も連動して忙しくなり、作業者は「早く捌かなければ」という焦りに追われ、事故やミスのリスクが高まるからです。
筆者がいた倉庫現場では、トラック入場が午前中に集中していました。その結果、ヤードが混雑する中で、焦りから生じる事故が後を絶ちませんでした。そこで現場管理者が主導し、「待たせてもよいので、安全第一で作業する」という方針を現場に共有。その結果、焦りの空気そのものが緩和され、事故が着実に減っていったのです。
そんなトラック予約受付システムの中でも特におすすめなのが、「MOVO Berth」です。累計80万人を超えるトラックドライバーが登録しているため、スムーズな導入が期待できます。MOVO Berthについて少しでも気になった方は、以下のリンクをクリックし詳細をご確認ください。
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日々調整し改善を続ける(KPI設定・PDCAサイクル)
5つ目の具体策は、事前に目標を立て(KPI設定)、それに基づいて配置した結果を振り返り、PDCAサイクルを回し続けることです。
人員配置は、一度組んで終わりではありません。実際の生産性や欠品率、残業時間などを指標として設定し、計画と実績のズレを定期的に検証することが欠かせません。
ズレが生じた箇所を放置せず、翌月の配置計画に反映させる。この地道な繰り返しこそが、精度を高め続ける方法です。
物流KPIの具体的な設定方法については、以下の記事も併せてご確認ください。
関連記事:物流業務を効率化する「物流KPI」とは?3つの評価項目と計算式を解説
次章では、物流業務を外部に委託している・委託を検討している方に向けて「委託先の人員配置が最適化されているかを、どう見極めればいいのか」という疑問にお答えします。
委託倉庫の人員配置が最適化されているかを見極める視点
本章では、委託倉庫の人員配置が最適化されているかを見極める視点について、以下の3つのポイントで解説します。
- 生産性・データの開示・共有が可能か
- 現場業務を効率化する仕組みが整っているか
- 繁忙期の自社の物流量に対応可能か(人員確保/多能工化)
「その前に物流業務の委託(3PL)の基本を確認したい」という方は、以下の記事を先にご覧ください。
生産性・データの開示・共有が可能か
委託先を見極める1つ目の視点は、生産性データを数値で開示・共有できるかどうかです。
感覚的な報告に終始する委託先では、繁忙期の人員配置が適正かどうかを荷主側が判断できません。定例会などの場で、時間帯別の生産性やKPIを開示できる体制が整っているかを確認することが有効です。
データを介した対話ができる委託先ほど、人員配置の実態も把握しやすくなります。逆に、数値の開示を渋る委託先は、内部の管理体制そのものに課題を抱えている可能性があります。
現場業務を効率化する仕組みが整っているか
次にご紹介する視点は、庫内業務を効率化する仕組みが、具体的なシステムとして整っているかどうかです。
それらを活用していれば、人員配置を最適化する仕組みが構築されている可能性が高まります。さらに、人員の確保という観点からも有利になります。
例えば、以下のような業務について、効率化の現状と導入システムを確認しておくと判断がしやすくなります。
これらの仕組みがなく、人員配置を担当者の勘や経験のみに頼っている事業者は避けたほうが無難です。
繁忙期の自社の物流量に対応可能か(人員確保/多能工化)
3つ目の視点は、自社の繁忙期に対応できる体制かどうかです。繁忙期で物量が増加した際、捌ききるための人員確保が可能かどうか確認しておきましょう。
不可能である場合、出荷能力が追いつかないことが原因で、機会損失や顧客満足度の低下を招いてしまう危険性があります。
また、委託先の作業員が複数の作業を担当できる「多能工化」が進んでいれば、突発的な物量増にも柔軟に対応できる可能性が高まります。
契約前の段階で、過去の繁忙期対応の実績や、増員時の体制について確認しておくべきです。
次章では、実際に人員配置を見直したことで、成果が出た具体的な事例をご紹介します。
人員配置を最適化した現場の事例
アスクル株式会社の事例|入荷の平準化で待機42分→12分、入荷生産性も向上
オフィス通販「ASKUL」を展開するアスクル株式会社では、物流センターの入荷受付が先着順だったため、朝の受付開始前に入荷車両の約3割が集中していました。いつ、どれくらいの入荷があるのかが読めず、受け身の対応にならざるを得ない。その結果、倉庫作業者のシフトと実際の物量が噛み合わないという課題を抱えていたのです。かつては待機時間の長さで知られ、サプライヤーやドライバーから「納品したくないセンター」と言われるほどでした。
そこで同社は、AVC関西(大阪府吹田市/バース数49・1日あたり受入車両約300台)にトラック予約受付サービス「MOVO Berth」を導入。導入して終わりにせず、サプライヤー・配送業者・ドライバー向けの説明会を何度も開催し、操作マニュアルも自社で作り込むという運用面の徹底が奏功し、事前予約率は85%(うち約6割はドライバー自身による予約)まで向上しました。
その結果、平均待機時間は42分から12分へ短縮。1時間以上待機の発生率も3%台まで改善しました。人員配置の観点で注目すべきは、次の2点です。
- 入荷の平準化:特定の時間帯に偏っていた入荷が分散され、時間帯ごとの作業量が読めるようになった
- 実績のデータ化:経験則に頼っていた部分が可視化され、PDCAを回せるようになった
この2つが揃ったことで、バース稼働率が上がり、入荷作業の生産性向上にもつながりました。同社の担当者は「導入当初は待機時間短縮が目的だったが、実は生産性向上こそが本来目指すべきものだったのかもしれない」と振り返っています。
「いつ、どれだけ荷物が来るか」が読めるようになることは、そのまま「その時間帯に何人必要か」が読めるようになることを意味します。人員配置の最適化は、まず入荷の波を平準化し、実績をデータとして残すことから始まるのです。
参考:トラックの待機時間が平均42分から12分まで短縮 事前予約率の向上でバースの稼働率が高まり、入荷の生産性もアップ|アスクル株式会社
人員配置とシフトを最適化し出荷能力1.4倍を達成した事例
ある通信事業者の物流センターでは、日々変動する出荷量に対して、人員配置とシフト設計が大きな課題となっていました。
そこで、工程ごとの生産性を可視化し、そのデータをもとにシフトを自動作成する仕組みを導入。ボトルネック工程への人員配置が明確になり、シフト設計も手作業からデータドリブンな仕組みへと移行しました。
2023年度の実証実験では、この取り組みにより出荷能力が約1.4倍まで向上し、2024年8月には商用運用へと移行しています。可視化とシフト自動化を連携させることで、同じ人員・設備のままでも出荷能力を引き上げられることを、この事例は示しています。
まとめ
倉庫の人員配置がうまくいかない背景には、物量予測の精度の低さ、勘や経験への依存、そして作業の属人化という3つの要因があります。
最適化の土台となるのは、物量予測・標準化・可視化という3つの視点です。この考え方を体系化したものが、「レイバーコントロール」という概念です。
その具体策として、本稿では以下の5つの具体策をご紹介しました。
- 需要予測手法を活用し必要人員数の精度を上げる
- 作業手順書や動画マニュアルを活用し作業の標準化を推進する
- WESなどを活用し作業員の生産性を可視化する
- トラック予約受付システムで庫内作業を平準化する
- 日々調整し改善を続ける(KPI設定・PDCAサイクル)
また、物流業務を専門業者に委託している、または委託を検討している場合は、生産性データの開示力、業務効率化の仕組み、繁忙期対応力という視点で、委託先の実態を見極めることも欠かせません。
倉庫の人員配置を最適化することは、単なる人件費の適正化にとどまりません。繁忙期・閑散期を問わない安定した生産性の確保や、現場で働く従業員の定着にもつながります。
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