更新日 2026.09.04

マルチモーダル輸送とは?複合一貫輸送・モーダルシフトとの違いを解説

マルチモーダル輸送とは?複合一貫輸送・モーダルシフトとの違いを解説

2030年には、現在の荷物の最大で約25%が運べなくなる可能性があるとされています。物流の「2024年問題」やドライバー不足が深刻化するなか、「トラック1本に頼った輸送」では運びきれないリスクが現実になってきました。その解決策として注目されているのが、複数の輸送手段を組み合わせるマルチモーダル輸送です。

ただ、いざ調べてみると「複合一貫輸送」「モーダルシフト」といった似た言葉が次々に出てきて、違いがわかりにくいと感じる方も多いはずです。

この記事では、荷主企業の物流担当者に向けて、次の4点をわかりやすく整理します。

  • マルチモーダル輸送とは何か(仕組みと組み合わせる輸送手段)
  • 複合一貫輸送・モーダルシフトとの違い
  • メリットとデメリット(向くケース・向かないケース)
  • 導入のステップと委託先の選び方

読み終えると、自社のどの区間からマルチモーダル輸送を検討すべきか、判断する視点が身につきます。

目次

マルチモーダル輸送とは

マルチモーダル輸送とは、トラック・鉄道・船舶・航空といった複数の輸送手段(モード)を組み合わせて、出発地から到着地まで荷物を運ぶ仕組みのことです。1つの輸送手段だけに頼らず、区間ごとに最適な手段へ「積み替えてリレーする」イメージを持つとわかりやすいでしょう。

たとえば「工場からトラックで港まで運び、長距離は船で運び、到着地で再びトラックに積み替えて届ける」といった輸送が、典型的なマルチモーダル輸送です。長距離区間を鉄道や船に任せることで、トラックドライバーの負担やCO2排出量を抑えながら、輸送全体を成立させます。

マルチモーダル輸送の意味と仕組み

ポイントは、荷物(多くはコンテナ)はそのままに、運ぶ「乗り物」だけを区間ごとに乗り換えていくという点です。コンテナ単位で積み替えるため、荷物そのものを開封・再梱包する手間が少なく、効率的にモードを切り替えられます。

この「区間ごとに最適な手段を選び、つなぎ合わせる」という発想こそが、マルチモーダル輸送の本質です。

組み合わせる4つの輸送手段

マルチモーダル輸送で組み合わせる主な輸送手段は、次の4つです。それぞれ得意な距離・コスト・速さが異なります。

輸送手段得意な距離・特徴コスト速さ
トラック近〜中距離。戸口から戸口まで小回りが利く速い
鉄道長距離の大量輸送。定時運行・低CO2
船舶(フェリー・RORO・コンテナ船)長距離・大量。最も低コスト・低CO2最も低い遅い
航空長距離で急ぎの荷物。高付加価値品向け高い最も速い

実務では「出発〜港はトラック、長距離は鉄道や船、到着地はトラック」のように、距離とコスト・納期のバランスを見て組み合わせを設計します。

複合一貫輸送・モーダルシフトとの違い

マルチモーダル輸送を調べると必ず出てくるのが、「複合一貫輸送」「モーダルシフト」「インターモーダル輸送」といった言葉です。意味が重なる部分も多く、混同されがちですが、使われる場面とニュアンスが異なります。まずは全体像を1枚の表で整理します。

用語意味の中心主に使われる場面
マルチモーダル輸送複数の輸送手段を組み合わせる仕組み全体輸送設計・物流戦略の全般
複合一貫輸送複数手段を1つの契約で一貫して運ぶこと貿易・国際物流(書類・責任の一貫性)
モーダルシフトトラックから鉄道・船へ「切り替える」取り組み環境政策・2024年問題対策
インターモーダル輸送同じコンテナのまま積み替えてリレーする方式技術的・運用的な分類

複合一貫輸送・国際複合一貫輸送との違い

複合一貫輸送は、マルチモーダル輸送とほぼ同義に使われますが、より「1つの運送契約で、出発地から到着地まで一貫して責任を持って運ぶ」という契約・責任のニュアンスが強い言葉です。特に貿易の世界では「国際複合一貫輸送」と呼ばれ、船・鉄道・トラックをまたいでも1通の運送書類(複合運送証券)で荷物を扱える点が重視されます。

ざっくり整理すると、「複数手段を組み合わせる仕組み」を指すのがマルチモーダル輸送、「それを1契約で一貫受託する」点に着目した呼び方が複合一貫輸送、と捉えると混乱しにくくなります。

モーダルシフトとの違いと関係

モーダルシフトは、トラック輸送の一部を鉄道や船舶へ「切り替える」取り組みを指します。つまり「組み合わせる仕組み全体」を表すマルチモーダル輸送に対して、モーダルシフトは「手段を変える行動・施策」にフォーカスした言葉です。

マルチモーダル輸送を設計する過程で、長距離区間をトラックから鉄道・船へ切り替えれば、それがモーダルシフトになります。両者は対立概念ではなく、マルチモーダル輸送という大きな枠組みの中で、モーダルシフトという具体的な打ち手が行われるという関係です。

モーダルシフトの具体的な進め方や効果については、こちらの記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

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インターモーダル輸送・コンビ輸送との違い

インターモーダル輸送は、マルチモーダル輸送の一種で、特に「同じコンテナ・荷役単位のまま積み替えてリレーする」方式を指します。荷物を載せ替えず、容器ごとモードを乗り換えるため効率が高いのが特徴です。コンビ輸送(複合輸送)も、複数手段を組み合わせる輸送を指す言葉として使われます。

実務上は厳密に区別せず使われる場面も多いですが、「マルチモーダル=組み合わせる仕組み全体/インターモーダル=コンテナのまま積み替える方式」と覚えておくと十分です。

マルチモーダル輸送が注目される背景

マルチモーダル輸送が近年急速に注目されているのには、明確な理由があります。

物流2024年問題とドライバー不足

2024年4月からトラックドライバーの時間外労働に上限が設けられ、1人のドライバーが運べる距離・時間が制限されました。これにより、長距離をトラック1台で運びきる従来のやり方が成り立ちにくくなっています。長距離区間を鉄道や船に任せ、トラックは集配の短距離に集中させるマルチモーダル輸送は、この課題への現実的な解決策です。

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2030年には最大で25%が運べなくなるリスク

もっとも、いま向き合うべきは「2024年」ではなく「2030年」です。ある試算によれば、当初の予測では2030年に約35%の輸送能力が不足する可能性が示されていました。その後、官民の取り組みや需要減少を反映した最新の検証結果では、最大で25%まで改善される見通しとなっています

2030年はもうすぐそこですが、依然として最大で25%が運べなくなるリスクがあり、いよいよ事態は深刻な局面を迎えています。これは現在の荷物の4分の1が届かなくなる恐れがあることを意味します。

つまりマルチモーダル輸送は、2024年問題への一時的な対応策ではなく、2030年問題による輸送能力不足を前提に輸送網を組み替えるための打ち手として捉える必要があります。

2030年に向けた「物流クライシス」の詳細は、こちらの記事で解説しています。

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脱炭素・CO2削減の要請

荷主企業にも、サプライチェーン全体での温室効果ガス削減が求められる時代になりました。輸送手段別のCO2排出量は大きく異なり、船舶はトラックの約6分の1、鉄道は約11分の1とされています(国土交通省)。長距離区間を鉄道・船にシフトするマルチモーダル輸送は、輸送品質を保ちながらCO2を大きく削減できる有力な手段です。

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国の後押し(総合物流施策大綱・物流効率化法)

国も、総合物流施策大綱や改正物流効率化法を通じて、モーダルシフトや輸送の効率化を強く後押ししています。荷主にも一定の取り組みが求められる方向にあり、マルチモーダル輸送への移行は「環境対応」だけでなく「法令・社会的要請への対応」という側面でも重要性を増しています。

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マルチモーダル輸送のメリット

マルチモーダル輸送には、荷主にとって大きく4つのメリットがあります。

CO2排出量を大きく減らせる

前述の通り、鉄道・船舶はトラックに比べてCO2排出量が圧倒的に少なく、長距離区間をシフトするだけで輸送に伴う排出量を大幅に削減できます。環境負荷の低減は、取引先や投資家への説明責任を果たすうえでも有効です。

ドライバー不足・長距離輸送の負担を減らせる

長距離を鉄道・船に任せることで、トラックドライバーは集配などの短距離業務に集中でき、長時間運転や宿泊を伴う運行を減らせます。ドライバーの労働環境改善につながり、人手不足の緩和にも寄与します。

長距離では輸送コストを下げられる

鉄道・船舶は大量の荷物をまとめて運べるため、長距離・大ロットの輸送では単位あたりコストを抑えられるケースが多くあります。燃料価格の変動リスクをトラック1本に集中させない、という意味でもコスト面の安定につながります。

災害・天候リスクに強くなる(BCP)

輸送手段を分散させておくと、ある手段が止まっても別の手段で代替しやすくなります。自然災害や交通障害が起きても輸送網全体が止まりにくく、事業継続計画(BCP)の観点でも有効です。

マルチモーダル輸送のデメリット・注意点

一方で、マルチモーダル輸送には注意すべき点もあります。導入を検討するなら、デメリットも正しく理解しておくことが大切です。

リードタイムが長くなりやすい

鉄道・船は運行ダイヤが決まっており、積み替えの工程も加わるため、トラック直送に比べて到着までの時間が長くなりがちです。納期に余裕のない荷物には不向きな場合があります。

短距離ではコスト割高になりやすい

コスト優位性は長距離・大ロットで発揮されます。短距離・小ロットでは積み替えの手間やコストが上回り、かえって割高になることがあります。

積み替え・利用ルートの制約

鉄道駅や港湾のある場所、便のあるルートでないと利用しづらく、積み替え拠点での荷役や保管が新たに必要になります。自社の輸送ルートが対応可能かどうかの見極めが欠かせません。

【向くケース/向かないケース】

  • 向くケース:長距離・大ロット、納期に一定の余裕がある、CO2削減やドライバー負担軽減を重視する
  • 向かないケース:短距離・小ロット、当日・翌日必着など納期が極めてタイト、対応ルートや拠点が確保しにくい

マルチモーダル輸送の導入ステップと業者の選び方

ここからは、荷主が実際にマルチモーダル輸送を導入する際の進め方を3ステップで解説します。

ステップ1:今のトラック輸送の実態を把握する

まずは現状把握から始めます。どの区間に・どれくらいの量を・どの納期で運んでいるかを可視化し、「長距離・大ロット・納期に余裕がある」といったシフトしやすい荷物を洗い出します。ここが曖昧なまま進めると、効果の出ない区間に手を付けてしまいがちです。

ステップ2:輸送ルートと手段の組み合わせを設計する

洗い出した荷物について、どの区間をトラックのまま残し、どこを鉄道・船に切り替えるかを設計します。コスト・リードタイム・CO2削減効果を比較し、現実的に運用できる組み合わせを描きます。一部の区間・ロットから試験的に始め、効果を検証しながら広げるのが安全です。

ステップ3:複合運送人(フォワーダー)を選ぶ基準

複数手段をまたぐ輸送を一括して引き受けてくれる事業者を、複合運送人(フォワーダー)と呼びます。委託先を選ぶ際は、次の点を確認しましょう。

  • 実績:自社と同じ業種・荷種・ルートでの取り扱い実績があるか
  • 対応ルート:必要な区間・手段の組み合わせに対応できるか
  • 荷物の見える化:輸送中の荷物の現在地や状況を可視化できるか
  • サポート体制:トラブル時の連絡・代替手段の提案など運用支援が手厚いか

マルチモーダル輸送を成功させる物流DX・可視化

マルチモーダル輸送を運用するうえで、見落とされがちな課題が「荷物の現在地が見えにくくなる」ことです。

複数手段をまたぐと「荷物の現在地」が見えにくくなる

トラック・鉄道・船と手段をまたぐほど、荷物が今どこにあるのか、いつ届くのかの把握が難しくなります。積み替え拠点での荷待ち荷役の遅れも発生しやすく、せっかくの効率化が運用面のロスで相殺されてしまうこともあります。

動態管理・予約受付による積み替え拠点の効率化

こうした課題を解決するのが、物流DX・可視化の仕組みです。動態管理で輸送中の荷物やトラックの位置をリアルタイムに把握し、トラック予約受付システムで積み替え拠点の荷待ちを削減することで、マルチモーダル輸送の効果を最大化できます。

Hacobuの物流DXプラットフォーム「MOVO」は、動態管理サービス MOVO Fleetやトラック予約受付サービス MOVO Berthを通じて、複数手段をまたぐ輸送の「見える化」と拠点の効率化を支援します。マルチモーダル輸送への移行を検討する際は、輸送の可視化基盤もあわせて整えることをおすすめします。

まとめ

最後に、本記事の要点を整理します。

  • マルチモーダル輸送は、トラック・鉄道・船舶・航空を組み合わせて運ぶ仕組み全体を指す。複合一貫輸送はそれを1契約で一貫受託する呼び方、モーダルシフトは手段を切り替える取り組みで、いずれも密接に関係している。
  • 物流2024年問題・脱炭素・国の後押しを背景に、CO2削減・ドライバー負担軽減・コスト最適化・BCPといったメリットから注目されている。
  • 一方でリードタイムやルートの制約といったデメリットもあるため、長距離・大ロットから段階的に導入し、輸送の可視化基盤を整えることが成功の鍵となる。

マルチモーダル輸送への移行を検討する際は、まず自社の輸送実態の可視化から始めてみてください。

よくある質問(FAQ)

マルチモーダル輸送と複合一貫輸送の違いは?

ほぼ同義ですが、複合一貫輸送は「1つの契約で出発地から到着地まで一貫して運ぶ」点を強調した呼び方で、特に貿易・国際物流の文脈で使われます。マルチモーダル輸送は「複数手段を組み合わせる仕組み全体」を指す、より広い言葉です。

マルチモーダル輸送のメリットは?

主なメリットは、CO2排出量の削減、ドライバー不足・長距離輸送の負担軽減、長距離・大ロットでの輸送コスト低減、災害・天候リスクへの強さ(BCP)の4点です。

モーダルシフトとマルチモーダル輸送はどう違う?

モーダルシフトはトラックから鉄道・船へ「切り替える」取り組み(行動)を指し、マルチモーダル輸送は複数手段を「組み合わせる」仕組み全体を指します。マルチモーダル輸送を設計する中でモーダルシフトが行われる、という関係です。

複合一貫輸送業(複合運送人)とは?

出発地から到着地までを複数の輸送手段を使って、一社が一貫して責任を持って引き受ける事業者のことです。NVOCCやフォワーダーと呼ばれることもあります。

著者プロフィール / 菅原 利康
株式会社Hacobuが運営し、物流の基礎知識や法律を分かりやすく解説するメディア「ハコブログ」編集長。マーケティング支援会社にて従事していた際、自身の長時間労働と妊娠中の実姉の過労死を経験。非生産的で不毛な働き方を撲滅すべく、とあるフレキシブルオフィスに転職し、ワークプレイスやハイブリッドワークがもたらす労働生産性の向上を啓蒙。一部の業種・職種で労働生産性の向上に貢献するも、物流領域においてトラックドライバーの荷待ち問題や庫内作業者の生産性向上に課題があることを痛感し、物流領域における生産性向上に貢献すべく株式会社Hacobuに参画。

クラウド物流管理ソリューション「MOVO(ムーボ)」のマーケティングを管掌し、荷主企業や物流事業者の業務デジタル化(DX)を推進。専門知識を活かし、ロジスティクス分野の専門誌への寄稿や、様々な業界団体での講演活動にも登壇。「最新ツールの普及」と「分かりやすい情報発信」の両面から、物流業界の課題解決に現場目線で取り組んでいる。 >>プロフィールを見る

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