更新日 2026.02.20

物流BIとは?ダッシュボード構築の注意点と失敗しない進め方を解説

物流BIとは?ダッシュボード構築の注意点と失敗しない進め方を解説

物流部門でBI(Business Intelligence)ツールを作る目的は、きれいなダッシュボードを並べることではありません。荷待ちや配送遅延、庫内の作業負荷、委託先の品質、物流コストなどの情報を、意思決定に使える形で素早く共有し、改善を回すための「道具」を作ることです。

一方で、物流はデータの発生点が多く、例外も多い領域です。指標定義やデータ整備、現場オペレーションの設計を甘く見ると、BIは作ったのに使われないという事態になりがちです。

本記事では、業界を問わず共通するBI構築の注意点に加えて、物流ならではの落とし穴を整理し、最後に失敗しない進め方と支援活用の考え方まで解説します。

なお、物流BI構築を自社だけで進めることに不安がある場合は、ロジスティクス領域に特化したBI構築支援サービスを活用する方法もあります。物流DXパートナーのHacobuが提供する Hacobu Solution Studio では、目的設計から指標定義、データ統合、ダッシュボード構築、運用定着までを一気通貫で支援しており、物流現場の実態を踏まえたBI設計が可能です。

Hacobu Solution Studioの概要資料は以下からダウンロードいただけます。

この記事でわかること

  • 物流BIを「使われるダッシュボード」にするための設計の考え方
  • 物流データ特有の落とし穴(KPI比較・マスタ整備・例外処理・コスト配賦)
  • 失敗しないスモールスタートの進め方と支援活用の選択肢

目次

物流データ分析の前に押さえるべきBI構築の基本

物流に限らず、BIがうまくいかない理由は似ています。まずは土台となる注意点を押さえた上で、物流特有の論点に進むのが近道です。

そもそもBIとは

BI(Business Intelligence)とは、企業が蓄積したデータを収集・統合・分析し、経営や現場の意思決定に活かすための仕組みや手法の総称です。具体的には、売上や在庫、コストなどのデータをダッシュボードやレポートとして可視化し、傾向の把握や改善の判断材料にします。物流領域では、荷待ち時間や配送遅延、拠点ごとの作業負荷といったオペレーションデータをBIで整理することで、属人的な勘や経験に頼らない、データドリブンな改善サイクルを回せるようになります。

物流ダッシュボードの目的を「可視化」ではなく「判断」に落とす

最初にやりがちなのが「とにかくデータを集めて、ダッシュボードを作る」進め方です。しかし、可視化の目的が曖昧だと、見栄えは良くても意思決定につながりません。

おすすめは、「このBIで何を決めたいか」を文章で言える状態にしてから設計に入ることです。例えば次のように、意思決定の形で置くと具体になります。

  • どの拠点の荷待ちを優先改善するかを決める
  • どの運送会社・レーンを重点的に見直すかを決める
  • 波動が来たとき、庫内人員をどこに再配置するかを決める
  • 物流コストの増減要因を分解し、次月の打ち手を決める

この段階で「見る指標」はまだ確定していなくて構いません。先に「決めたいこと」を置くことで、必要なデータ、粒度、更新頻度が自然に決まっていきます。

ユーザー(現場・管理者・経営)を分けて設計する

同じ物流データでも、見る人によって必要な情報は違います。1つのダッシュボードで全員の要望を満たそうとすると、項目が増えて読みづらくなり、結果として誰にも使われません。

例えば、次のように利用者を分けて設計するのが現実的です。

  • 現場:当日〜翌日の運用判断に必要な情報(アラート、滞留、波動、遅延兆候)
  • 物流管理者:週次の改善に必要な情報(原因分類、拠点比較、委託先評価、改善の効果)
  • 経営・他部門:月次の意思決定に必要な情報(サービスレベル、コスト、投資判断の材料)

「誰が・いつ・何を決めるために使うか」を先に切り分けてから、画面や指標を設計しましょう。

データ定義を先に揃える(指標の辞書化)

BIの議論が噛み合わない原因の多くは、指標の定義が揃っていないことです。物流では特に、同じ言葉でも会社・部署・現場で意味が変わりやすい傾向があります。

例:

  • 「遅延」:予定時刻との差なのか、納品期限との差なのか
  • 「荷待ち」:到着〜接車なのか、指示時刻〜接車なのか
  • 「欠品」:出荷欠品なのか、入荷の検収差異なのか

対策はシンプルで、指標の辞書(データ定義書)を用意することです。

  • 指標名
  • 計算式(どの項目からどう計算するか)
  • 対象範囲(拠点、便種、荷主、委託先など)
  • 例外時の扱い(欠損、キャンセル、手入力など)

定義を文章で固定しておくと、関係者が増えてもブレが起きにくくなり、BIが「議論の共通言語」になります。

データ品質と更新頻度を設計する(“正しい”より“使える”)

完璧なデータを目指すほど、BIは遅くなります。物流改善の現場では、100%正確な翌月集計よりも、一定の精度で早く見える方が意思決定に役立つことが多いです。

更新頻度は、目的とセットで決めるのが基本です。

  • 当日運用の判断:日次、できれば時間単位
  • 改善の打ち手検討:週次
  • 経営・投資判断:月次

さらに、データ品質の課題(欠損、異常値、手入力のばらつきなど)は、最初からゼロにしようとせず、「何が起きたらアラート」「どの程度の欠損なら許容」といった運用ルールでカバーしつつ、段階的に改善するのが現実的です。

運用(更新・権限・改善サイクル)まで作って初めて完成

BIは作って終わりではありません。更新されない、見る人が増えない、改善につながらない、という問題は、運用設計が欠けていると起きやすくなります。

最低限、次の3点は決めておくと安定します。

  • 更新責任:どのデータを誰が担保するか
  • 権限と公開範囲:見せる範囲と粒度(個社・拠点・委託先など)
  • 改善サイクル:週次会議・月次レビューなど、使う場を固定する

「ダッシュボードがある」ではなく、「会議の判断が変わった」まで落とし込むことが重要です。

物流ダッシュボード構築の注意点|”物流データのクセ”を甘く見ない

ここからは物流特有の論点です。普遍的なBIのコツに加えて、物流データの性質を踏まえないと、誤った結論を導く危険があります。

物流KPIの可視化は”比較可能”にするのが難しい

物流は拠点・商材・物量・便種・委託形態で前提が変わります。単純に拠点同士を比較すると、「条件が違うだけなのに悪い評価になる」といった不公平が起きます。

例えば荷待ち時間は、以下の要因で大きく変動します。

  • 車両台数と波動(ピーク時間帯)
  • 受付ルールや荷主側の運用
  • 荷姿・作業難易度
  • 荷役設備や動線

対策として、比較軸を明示しましょう。

  • セグメント(同じ条件同士で比較)
  • 補正(物量や車両台数で補正)
  • 目的別(現場改善用の比較と、経営判断用の比較を分ける)

「比較の前提」を設計せずにランキングを出すと、BIが現場不信につながります。

マスタ(拠点・荷主・車両・運送会社・レーン)整備が最優先

物流BIでは、データの統合(結合)がボトルネックになりがちです。拠点名が表記ゆれしている、運送会社が同一企業なのに別IDになっている、レーンの定義が人によって違う、といった状態では、集計の前提が崩れます。

BI構築に着手する前に、まずは次のマスタを整備するのが効果的です。

  • 拠点マスタ(正式名称、コード、住所、運用カテゴリなど)
  • 委託先マスタ(運送会社、倉庫会社、協力会社のID統一)
  • レーンマスタ(発地・着地・便種・契約条件など)

ここを後回しにすると、後からの修正コストが跳ね上がります。

イベント時系列(受付→接車→荷役→出発…)が揃わないと改善できない

物流の改善はプロセス改善です。そのため「いつ・どこで・何が起きたか」の時系列データが揃っていないと、原因が追えません。

例えば「荷待ちが長い」という結果だけ見ても、改善は進みづらいです。

  • 受付が詰まっているのか
  • 接車待ちなのか
  • 荷役開始が遅いのか
  • 荷役自体が長いのか

この切り分けができるよう、イベント定義と取得ルール(打刻のタイミング、欠損時の扱い、手入力の基準)を揃えることが重要です。

現場の「例外」を設計に組み込む(返品・緊急・積み替え・待機など)

物流は例外が多い業務です。例外を無理に通常フローに押し込めると、現場から見て「現実を反映していないBI」になります。

おすすめは、例外を分析可能にする設計です。

  • 例外分類(返品、緊急出荷、積み替え、欠損、キャンセルなど)
  • 例外時のKPI扱い(除外するのか、別集計にするのか)

例外をきちんと扱えるBIは、現場の納得感が高く、改善に使われやすくなります。

コストは“配賦ロジック”で結論が変わる

物流コストをBIで扱うときは特に注意が必要です。配賦ロジック(どう割り当てるか)で結論が変わるため、前提が見えないと社内の対立を生みやすいからです。

例えば輸送費を、

  • 重量で配賦するのか
  • 容積で配賦するのか
  • 伝票数で配賦するのか
  • 車建て(便単位)で扱うのか

によって、商品別・得意先別の収益性の見え方が変わります。

重要なのは「唯一の正解」を作ることではなく、

  • ロジックを明示する
  • 意思決定目的に応じて使い分ける
  • 誤解されやすい数値には注釈を付ける

といった設計で、BIを安全に使える状態にすることです。

物流データの統合が難しい(WMS/TMS/配車/受付/請求の分断)

物流データは複数システムに散らばりやすいのが現実です。WMS、TMS、配車、受付、請求などが分かれていると、いきなり全統合を目指すほど難易度が上がります。

対策は段階導入です。

  • 最初に“つなぐ範囲”を絞る(例:受付・荷待ち領域から)
  • 成果が出たら、次の領域を足していく(例:配車・委託先評価、コスト)

「全部つなげてから使う」より、「使いながらつなげる」の方が成功しやすくなります。

物流BI導入で失敗しない進め方|スモールスタート×現場巻き込みが王道

物流BIは、最初に大きく作ろうとすると要件が膨らみ、データ整備が終わらずに止まりがちです。価値が出る最小単位から始め、運用に乗せながら育てるのが王道です。

最初のユースケースは1〜2個に絞る

例として、以下は成果が出やすいテーマです。

  • 荷待ち・荷役のボトルネック可視化と改善
  • 委託先評価(遅延、受付遵守、品質など)
  • 拠点別の作業負荷の波動把握と人員配置

「これが決められるようになったら成功」というゴールが明確なテーマから着手しましょう。

PoCの評価軸を決める(“見た目”ではなく“改善につながったか”)

PoCでありがちなのが、ダッシュボードの完成度や閲覧数で成功判定してしまうことです。

物流BIの評価は、例えば次のように「改善が回ったか」で置くのが実務的です。

  • 週次会議で、原因の切り分けが短時間でできた
  • 改善施策が決まり、実行された
  • 施策の効果が次週に確認できた

BIは、改善の意思決定を速くするためにあります。

定例の意思決定フローに組み込む(会議体がゴール)

BIが開かれなくなる最大の理由は、「使う場がない」ことです。

  • 週次の改善会議
  • 月次の委託先レビュー
  • 四半期の投資判断

など、既存の会議体のインプットとしてBIを位置づけると、利用が定着しやすくなります。

自社だけで抱えない――要件定義から実装まで外部委託するという選択肢

物流BIの構築を外部に委託する場合、パートナー選びで重要なのは「物流業務の解像度」です。一般的なSIerやBIツールベンダーは可視化技術には強くても、「荷待ちの定義をどう切るか」「拠点間の比較をどう公平にするか」といった物流特有の設計判断まではカバーしきれないことがあります。

その点、自ら物流SaaSを開発・運用している企業であれば、現場オペレーションの実態を踏まえた要件定義が可能です。クラウド物流ソリューション「MOVO」を開発・提供するHacobuは、バース予約・受付・荷待ち計測(MOVO Berth)、配車受発注・実運送体制管理(MOVO Vista)、車両動態管理(MOVO Fleet)などを通じて、多数の物流現場から得たデータ設計・運用ノウハウを蓄積しています。

この「SaaSメーカーとしての実装知」があるからこそ、指標定義の切り方やデータの例外設計、現場が本当に使えるダッシュボードの落とし込みまで、要件定義から実装・運用定着までを一気通貫で委託できます。社内のリソースは改善施策の実行や現場との合意形成に集中し、BI基盤の構築は物流を知り尽くしたプロに任せる。この役割分担が、結果的に「使われるBI」を最短で立ち上げる近道になります。

まとめ|物流BIは“設計”で9割決まる。だからこそ支援活用も選択肢

物流BIは、データ統合や可視化のスキルだけでは成立しません。指標定義、マスタ整備、例外設計、現場運用、会議体への組み込みまで含めて「意思決定の道具」にして初めて価値が出ます。

一方で、物流部門だけで推進すると、要件が膨らんだり、データ整備で止まったりして、長期化しやすいのも事実です。

そこで、ロジスティクス領域のBI構築を支援する Hacobu Solution Studio では、目的設計から指標定義、データ統合、ダッシュボード設計、運用定着までを一気通貫で支援しています。

「まず何から着手すべきか」「最初のユースケースをどう切るか」「データが揃うか」を整理するところから相談できるため、社内の推進負荷を抑えつつ、成果が出る形で立ち上げやすくなります。

Hacobu Solution Studioの概要資料は以下からダウンロードいただけます。

著者プロフィール / 菅原 利康
株式会社Hacobuが運営するハコブログの編集長。マーケティング支援会社にて従事していた際、自身の長時間労働と妊娠中の実姉の過労死を経験。非生産的で不毛な働き方を撲滅すべく、とあるフレキシブルオフィスに転職し、ワークプレイスやハイブリッドワークがもたらす労働生産性の向上を啓蒙。一部の業種・職種で労働生産性の向上に貢献するも、物流領域においてトラックドライバーの荷待ち問題や庫内作業者の生産性向上に課題があることを痛感し、物流領域における生産性向上に貢献すべく株式会社Hacobuに参画。 >>プロフィールを見る

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