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執筆者:佐々木 太郎

【月刊 経団連掲載記事】企業間物流インフラをアップデートする

月刊 経団連2023年11月号「シン・物流時代 ─物流の成長産業化に向けて」の特集に、代表取締役社長CEO 佐々木 太郎の寄稿文『企業間物流インフラをアップデートする』が掲載されました。

物流インフラのデジタル化が課題であると感じた理由、「運ぶを最適化する」という当社のミッションについて記載されています。

詳細は以下のページでもご覧いただけます。

原文はこのブログにも記載します。

「企業間物流インフラをアップデートする」

 当社が創業した2015年当時、物流にはあまり光が当たっていなかった。物流はサプライチェーン・マネジメント(以下SCM)の構成要素であるが、SCMが脚光を浴びても物流が意識されることは少なかった。PSI(Production:生産、Sales:販売、Inventory: 在庫)の最適化には意識が向けられ、多額のシステム投資が行われてきた一方で、物流に対しては「後は運んでおいて」というくらいの世界であった。それは、PSIには制約条件があるため最適化が必要であるが、運ぶリソースはふんだんにあるので制約条件はない、という考えがベースにあったためと考えられる。しかし、ここへきて状況は変わってきた。 ドライバー不足問題、そして、いわゆる「2024年問題」によって、これまでと異なり、物流が企業活動の制約条件になってきたのである。これからのSCMは、PSIにロジスティクス(Logistics)のLを加えたPSIL の最適化が必要になってくる。

物流インフラのデジタル化が課題 

 Hacobuを創業したのは、私がコンサルタント時代に、ある卸売会社の経営改革プロジェクトに関わったことがきっかけである。 その改革プロジェクトでは、物流コストの削減が課題の一つであったため、検討過程で企業間物流の現場を見ることができた。そして、とても驚いた。企業間物流の機能は、大きく「運ぶ」と「保管する」に分かれるが、「運ぶ」ことに関わる多くの業務がアナログで行われていたのだ。現場で目にしたのは、ファクスでの連絡の応酬や、「電話をかけることが仕事」と考える従業員、とりあえず早く行って待つドライバー、荷物が来ず、そこから始まる着荷主から発荷主、発荷主から元請け、さらに下請けへと続く電話伝言ゲームであった。 そして、こうした状況が、「一生懸命やっていますが、大変です」という定性的な情報としてしかマネジメントには上がっていかないという実情も目の当たりにした。そのプロジェクトにおいても、現場の状況を定量的に把握することに苦心した。 

 すでにインターネットの普及から約四半世紀が過ぎ、スマートフォンはiPhone6のころの話である。クラウドテクノロジーが一般化し、モノのインターネット(IoT)がバズワード化して、全てのモノがインターネットにつながり、そこから得られるビッグデータをクラウドコンピューターで解析すれば新しい世の中が開ける、と様々な場所で言われていた。その時代に、企業間物流、特に「運ぶ」世界においては、いまだに電話やファクス、紙の帳票で大方の情報のやりとりが行われていた、 あるいは、やりとりさえ行われていなかったのだ。そのため 、現状把握すら難しい状態だったのである。

 また、企業間物流の特徴として、 ステークホルダーの多さが挙げられる。例えば食品業界で言えば、メーカーが工場で商品を製造し、それを物流センターに移動して在庫とする。その物流センターは大手の3PL(*1)企業が運営を行い、現場は下請けの物流会社が運営する。その物流センターから、3PL企業の下請けの運送会社が食品卸の物流センターに商品を移動させ、食品卸の物流センターから下請けの運送会社が小売りの店舗に運ぶ。

 これらのステークホルダーの連携によって、工場で製造された商品が最終的に私たちの食卓に上る。しかし上述の通り情報のやりとりはアナログで行われている、もしくは行われていないため、その間に様々な非効率が生じてしまう。そうした非効率を吸収するために、現場のドライバーの労働条件は悪くなり、ドライバー不足へつながっていく。

 企業間物流というインフラは、私たちの生活の利便性の向上に資するだけではない。そもそも物流機能が崩壊すれば、私たちの生活自体が成り立たなくなるのだ。工場では製造・生産ができなくなるし、製造・生産したものを消費地に移動させることもできなくなる。つまり企業間物流は、生産地と消費地が異なる社会構造の中で不可欠なインフラだと言えるのである。水道や電気、電話などのインフラの重要性はよく理解されるが、企業間物流というインフラは、その社会的な重要性にもかかわらず、世の中で理解されていないのである。

ミッションは「運ぶを最適化する」

 こうした物流インフラを、デジタル化を通じてアップデートしようというのが当社の使命だ。これまでに約46億円の資金を調達し、130人を超えるメンバーで「運ぶを最適化する」をミッションに事業を展開している。一つのクラウドプラットフォーム「MOVO/ムーボ」上に、複数の物流現場における課題や物流マネジメントの課題を解決するサービスを作り、インターネット経由でユーザーに提供している。

 例えば入荷予約サービス「MOVO Berth/ムーボ・バース」は、納品者が納品時間を事前に予約することで、スムーズに納品ができるサービスであり、納品時のドライバーの待機時間を削減することができる。実際に、システム導入後に削減された待機時間は、平均63.3分と大きな効果を上げている。(*2)

 車両の位置情報を使った配送管理サービス「MOVO Fleet /ムーボ・フリート」は、自分たちの荷物がどのように運ばれているかを可視化し、配送管理の業務効率化、配送状況の可視化、データからの配送最適化を行う。また「MOVO Vista/ムーボ・ヴィスタ」は、荷主や元請け企業と運送会社の間の電話・ファクスでのやりとりから請求までを電子化する。これら一連のサービスを導入することによって、ある大手メーカーの物流センターでは業務時間の20%削減を実現できた。現在「MOVO /ムーボ」を利用する物流拠点数は1万3000を超え、日本のドライバー80万人のうち46万人が「MOVO/ムーボ」上のアプリケーションを使ったことがあると試算される。(*3)このようにステークホルダーが多岐にわたる中で、物流情報のデジタルプラットフォームが構築されつつある。当社は今後も「MOVO/ムーボ」を広げ、物流インフラをデジタルでアップデートしていくことに貢献していく。

(*1)3PL:サードパーティーロジスティクス(Third Party Logistics、第三者物流企業)の略

(*2)2023年2月 当社調べ

(*3)「MOVO Berth」を利⽤する際に登録するドライバー電話番号のID数と、国⼟交通省「物流⽣産性向上に資する幹線輸送の効率化⽅策の⼿引き」より2015年の従事者数76.7万⼈を基に試算(https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001415371.pdf)

著者プロフィール / 佐々木 太郎

Hacobu代表取締役社長CEO。アクセンチュア株式会社、博報堂コンサルティングを経て、米国留学。卒業後、ブーズアンドカンパニーのクリーブランドオフィス・東京オフィスで勤務後、ルイヴィトンジャパンの事業開発を経てグロッシーボックスジャパンを創業。ローンチ後9ヶ月で単月黒字化、初年度通年黒字化(その後アイスタイルが買収)。食のキュレーションEC&店舗「FRESCA」を創業した後、B to B物流業界の現状を目の当たりにする出来事があり、物流業界の変革を志して株式会社Hacobuを創業。

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