更新日 2026.11.08

ラウンド輸送とは?共同輸送との違い・メリット・事例を解説

ラウンド輸送とは?共同輸送との違い・メリット・事例を解説

「行きは荷物でいっぱい、帰りは空っぽ」。荷物を届けたトラックが、空の荷台で戻る運行はないでしょうか。往路と復路の荷物を組み合わせるラウンド輸送は、空車で走る区間を減らす方法です。

実現に向けて大切なのは、帰り荷を探す前に、運行データから「どこで、いつ、どれだけ車両が空いているか」を把握することです。データを基に組み合わせ候補を見つけ、現場の条件を確認し、運行後の効果を検証する。この流れで、継続できる輸送を目指します。

本記事では、物流DXパートナーのHacobuが次のポイントを解説します。

  • ラウンド輸送の仕組みと、共同輸配送など似た言葉との違い
  • 企業の公式発表に基づく効果と、実施前に確認したい課題
  • 運行データを活用した空車区間の把握から、相手探し、条件調整、効果検証までの進め方

データに基づく課題整理から改善策の設計・実行までの支援を検討している方は、物流DXコンサルティング「Hacobu Strategy」の紹介資料もご覧ください。

「3分でわかる Hacobu Strategy」の資料をダウンロードする

ラウンド輸送とは

ラウンド輸送とは、荷物を届けたトラックが空のまま戻るのではなく、帰りにも別の荷物を積んで往復で運ぶ輸送の形です。

「ラウンド便」とも呼ばれ、片道で終わっていた荷物の流れを、帰りの輸送とつなぎます。往路と復路の荷物を同じ車両で運ぶため、荷主の組み合わせだけでなく、集荷場所や時間の接続も確認します。

行きと帰りで別の荷物を運ぶ仕組み

図1:往路の納品後に近隣で別の荷物を積み、出発地側へ運ぶことで、行きと帰りをつなぎます。拠点間の移動には空車区間が残る場合があります。

ラウンド輸送は、A地点からB地点へ荷物を運び、B地点の近くで別の荷物を積んで、A地点の近くへ戻る仕組みです。

往路の荷降ろし先と復路の集荷先は、必ずしも同じ施設ではありません。往路の納品を終えた後、復路の荷物がある近隣の拠点に移動して積み込み、出発地側へ運びます。荷降ろしから次の積み込みまでの移動を含めて、往復の運行を組むのがポイントです。

往路と復路の荷主は、異なる会社の場合も、同じ会社の別拠点や別部門の場合もあります。行きの荷物を扱う部門だけで検討するのではなく、帰り方面へ出荷する拠点や、原料を調達する部門にも確認すると、社内で往復をつなげられる可能性があります。

なぜ「片道だけ荷物がある」状態が生まれるのか

片道だけ荷物がある状態は、工場から倉庫、倉庫から店舗という荷主の出荷の流れが、一方向に偏ることで生まれます。

荷主が手配するのは、自社の荷物を目的地へ届ける便です。帰りの便に載せる荷物の確保は運送会社に任せきりになりやすく、自社の出荷計画だけを見ても、復路の輸送需要は見つかりません。往路の配送が完了しても、帰りに運べる荷物がなければ、トラックは空のまま戻ります。

荷物を積まずに走ることを「空車回送」といいます。ラウンド輸送を検討するときは、納品先までの荷物の流れだけでなく、納品後に車両がどこへ戻り、どの区間を空車で走っているかまで確認します。荷主と運送会社で復路の実態を共有することが、往復を組む出発点になります。

ラウンド輸送が注目される背景

ラウンド輸送が注目される背景には、トラックドライバーの労働時間の制約と、積載効率を高める必要性があります。荷主企業も、空車で走る区間や荷待ち時間・荷役時間を確認し、限られた輸送力を活用する立場になっています。

ドライバーの労働時間に上限ができた

物流の2024年問題の背景にある時間外労働の上限規制と、拘束時間などを見直した改善基準告示は、2024年4月からトラックドライバーに適用されています。

臨時的な特別の事情がある場合でも、時間外労働の上限は年960時間です。拘束時間の上限も短くなり、長時間の勤務を前提とした運行は見直す必要があります。

出典:厚生労働省「トラック運転者の改善基準告示」(2024年4月適用、参照日:2026年10月7日)

同じ輸送力で運べる荷物を増やすには、空で走る区間の削減がひとつの方法です。帰りに荷物を積むだけでなく、追加される荷役・荷待ち時間も含めて運行を組みます。

トラックの積載効率は約4割にとどまる

国土交通省が2021年に公表した資料によると、営業用トラックの積載効率は約4割の水準でした。

出典:国土交通省「物流をとりまく状況と物流標準化の重要性」(2021年6月17日、4ページ、参照日:2026年10月7日)

積載効率は、トラックが運べる能力に対して、実際にどれだけの荷物を運んだかを、輸送距離も含めて示す指標です。荷物を少量しか積まずに走る区間や、空のまま走る区間があると、車両の輸送能力を十分に活用できません。

ラウンド輸送は、空車で戻っていた区間にも荷物を載せることで、往復全体の積載効率を高める方法です。限られた台数でより多くの荷物を運ぶために、行きの積載量だけでなく、帰りの荷物の有無も見直す必要があります。

改正物流効率化法で荷主にも積載効率の向上が求められる

改正物流効率化法では、荷主・物流事業者に努力義務が課され、一定規模以上の特定事業者には中長期計画の作成などが義務付けられています。

努力義務は2025年4月、特定事業者への義務は2026年4月から施行されています。取り組みの柱は、積載効率の向上、荷待ち時間の短縮、荷役等時間の短縮です。

出典:国土交通省「物流効率化法」理解促進ポータルサイト「5分でわかる物流効率化法の改正のポイント」(参照日:2026年10月7日)

ラウンド輸送は積載効率の向上を検討する方法ですが、すべての荷主にラウンド輸送そのものが義務付けられているわけではありません。自社の空車区間や受け入れ条件に照らして、実施可能な改善策を選びます。

ラウンド輸送と似た言葉との違い

図2:複数企業で行うラウンド輸送は共同輸送と重なります。ラウンド輸送が往復全体を捉えるのに対し、バックホールは主に復路に着目した言葉です。

ラウンド輸送と似た言葉は、それぞれ着目する点が異なります。ただし、互いに独立した輸送方式ではなく、共同輸送の一形態としてラウンド輸送を行うなど、重なる場合があります。バックホールとの関係も含めて整理します。

ラウンド輸送共同輸送ミルクラン中継輸送バックホール
往路と復路の荷物を組み合わせる複数企業が車両や輸送区間などを共同利用する複数の集荷先を巡回途中でトラックドライバーや荷台を交代出発地側へ戻る輸送・復路に着目する

共同輸送との違い

共同輸送は、複数の企業が連携し、車両や輸送区間などを共同利用する取り組みです。同じ方面に向かう荷物を積み合わせる方法に加え、往路と復路で別の企業の荷物を運ぶ方法もあります。同方向の混載だけに限定されるものではありません。

ラウンド輸送は、往路と復路の荷物を組み合わせ、空車回送を減らす輸送の形です。複数企業が連携して行う場合は、共同輸送の一形態と捉えられます。一方、自社の拠点間や部門間だけで実施することもできます。

例えば、伊藤園と全農グループは、関東から新潟へ飲料を運び、復路に新潟から関東へ米穀を運んでいます。伊藤園の公式発表でも、空車で運行していた区間を「共同輸送として活用」と説明しています。共同輸送とラウンド輸送は、別々の方式として対比するのではなく、重なる概念として理解するとよいでしょう。

バックホールとの違い

バックホールは、往路の輸送を終えた車両が出発地側へ戻る輸送・復路を指します。米国連邦道路庁(FHWA)の用語集では、当初の目的地から出発地へ戻る動きと説明されており、帰り荷の活用という意味でも使われます。

ラウンド輸送が往路と復路をつないだ運行全体に着目するのに対し、バックホールは主に復路に着目した言葉です。例えば、関東から新潟へ飲料を運び、新潟から関東へ米穀を運ぶ場合、米穀を運ぶ復路がバックホール、両者をつないだ往復全体がラウンド輸送という整理ができます。

ただし、両者は重なる概念であり、明確に分かれた別の輸送方式ではありません。バックホールという言葉自体に、荷物をその都度探すスポット輸送に限るという意味はなく、「バックホールは都度手配、ラウンド輸送は定期便」と区分するのは適切ではありません。

ミルクランとの違い

ミルクランは1台のトラックが複数の仕入先を回って集荷する「巡回」で、ラウンド輸送は行きと帰りをつなぐ「往復」です。

ミルクランでは、仕入先ごとに別々の車両を手配するのではなく、1台が順に集荷先を回ります。検討の中心は、どの仕入先をどの順番で訪問し、荷物をまとめて運ぶかです。

ラウンド輸送で確認するのは、往路の納品を終えた後に、帰り方面へ運ぶ荷物があるかという点です。複数の集荷先を回ることが主眼ではありません。集荷先の巡回順と、復路に載せる荷物の接続を分けて考えると、両者を混同せずに運行を設計できます。

中継輸送との違い

中継輸送は長距離の運行を途中で区切り、トラックドライバーや荷台を交代する方法で、ラウンド輸送は往復の荷物を組む方法です。

中継輸送では、途中の拠点で交代し、トラックドライバーが担当区間を走った後に戻れるようにします。長距離を1人が通して運転する形から、区間を分担する形へ変え、日帰りできる運行を目指します。

ラウンド輸送は、帰りの区間でも荷物を運ぶことが中心です。帰り荷があっても、長距離を同じ人が走り続ける問題が解消するとは限りません。荷物の往復と、トラックドライバーの担当区間は、別の条件として確認する必要があります。

帰り荷マッチング(求貨求車)との違い

帰り荷マッチングは、空いている帰り便と、その区間で運べる荷物を結び付ける仕組みです。ラウンド輸送が往復をつないだ輸送の形を指すのに対し、帰り荷マッチングは復路の荷物を確保する手段に当たります。

帰り荷とは、目的地へ荷物を届けた後、帰りの区間で運ぶ荷物を指します。帰り荷マッチングでは、運送会社が空いている車両や区間に合う荷物を探します。その都度、帰り荷を探す場合もありますが、定期便かスポット便かだけでラウンド輸送と区分するものではありません。

本記事では、主に荷主や運送会社が相談し、往路と復路の時間、荷物の条件、費用を合わせて継続的な往復を組む場合を説明します。帰り荷マッチングのサービス紹介・比較は、配送マッチングサービスの記事で扱います。

ラウンド輸送のメリット

ラウンド輸送のメリットは、往復の荷物を組み合わせ、必要な車両や空車走行、拘束時間、CO2排出量を減らせることです。効果は荷降ろしと積み込みの位置関係や時間に左右されるため、運行全体で確認します。

トラックの台数と空で走る距離が減る

ラウンド輸送は、別々に手配していた輸送を往復の運行に組み直し、必要なトラックの台数と空で走る距離を減らす方法です。

行きの便が空で戻り、逆方向の便も別に走る状態では、荷物を運ぶ区間のほかに、それぞれの空車区間が発生します。行きの納品後に帰りの荷物を積めれば、往復をつなぐ運行へ組み替えられます。

ただし、復路の集荷先が離れている場合は、接続のための空車移動が残ります。納品先と集荷先の距離を含め、組み替え前後の運行を比較する必要があります。削減幅は一律ではなく、具体的な数値は後述する企業の事例で確認します。

ドライバーの拘束時間が減る

往路の荷降ろしと復路の積み込みを近くで行えれば、空車移動を減らし、トラックドライバーの拘束時間の短縮につなげられます。

荷降ろし後に遠くの集荷先へ移動する運行と、近隣や同じ場所で積み込む運行では、次の荷物を載せるまでの移動時間が異なります。往復の接続を短くすれば、移動に使っていた時間を減らせます。

一方、帰りの荷物を積むために長く荷待ちしたり、荷役時間が増えたりすると、短縮効果が相殺されます。空車で戻る時間だけを比較せず、出発から帰着までの移動・荷待ち・荷役を含めて、拘束時間が短くなるか確かめます。

CO2の排出量が減る

ラウンド輸送で空車走行と運行全体の走行距離を減らせれば、燃料の使用量を抑え、CO2排出量の削減につなげられます。

荷物を積んでいない区間でも、トラックは燃料を使います。別々の運行を往復でまとめ、不要な空車回送を減らすことが、環境負荷を抑える仕組みです。

集荷のための迂回が大きい場合は、走行距離の減少を確認できないこともあります。復路の積み込み先までの移動を含めて、運行全体で燃料と排出量の変化を確認します。

ラウンド輸送の事例

ラウンド輸送は、飲料と米穀、原料と製品、鉄道コンテナの空き区間など、異なる荷物の流れを組み合わせて実施されています。企業の公式発表から、発表年、区間、荷物、効果を確認します。見込みと実績は分けて読みます。

伊藤園とJA全農グループ:飲料と米を往復で運ぶ

伊藤園とJA全農グループは、関東から新潟へ飲料を運び、帰りに新潟から関東へ米穀を運ぶラウンド輸送を始めました。

2024年11月26日の伊藤園の発表によると、本格稼働は同月からです。往路は群馬の出荷倉庫から新潟センターへ飲料を輸送し、復路はJA全農にいがた倉庫から関東の米穀卸・営業倉庫へ米穀を運びます。

従来の輸送に比べ、トラックの使用台数は約33%減少、CO2排出量は約16%削減できる見込みとされています。

出典:伊藤園「伊藤園と全農グループで物流連携を強化」(2024年11月26日、参照日:2026年10月7日)

両社がそれぞれ週3回運行するうち1回をラウンド輸送にしました。全便を一度に変更せず、一部の便から小さく始めた点が参考になります。

出典:伊藤園「伊藤園と全農グループで物流連携を強化」(2024年11月26日、参照日:2026年10月7日)

日清食品とJA全農:原料の調達と製品の出荷を組み合わせる

日清食品とJA全農は、米穀を運んだトラックで日清食品の製品を輸送し、調達物流と製品物流をつなぐラウンド輸送を実施しました。

JA全農が2024年7月12日に発表した取り組みです。往路でJA全農の米穀を運び、復路で日清食品が製造した製品を輸送します。調達物流は原料が入ってくる流れ、製品物流は製品が出ていく流れです。荷降ろしと積み込みを同じ場所で行い、両者をつなぐ移動をなくしました。

トラックドライバーの拘束時間を約7%削減、トラック積載率を約9%向上、CO2排出量を約17%削減したと発表されています。「サプライチェーン イノベーション大賞2024」の優秀賞も受賞しました。

出典:JA全農「日清食品との『調達物流』と『製品物流』を組み合わせたラウンド輸送の取り組みで『サプライチェーン イノベーション大賞2024』優秀賞を受賞」(2024年7月12日、参照日:2026年10月7日)

日本製紙・DOWAエコシステム・JR貨物:鉄道コンテナで往復する

日本製紙、DOWAエコシステム、JR貨物の取り組みは、秋田と首都圏の鉄道コンテナの空き区間を活用するラウンド輸送です。

2023年2月15日の発表では、首都圏から秋田へDOWAのリサイクル原料などを運ぶコンテナを活用し、逆方向に日本製紙の段ボール原紙を輸送します。実証実験を経て、同年3月から正式運用を開始すると発表されました。

出典:日本製紙・DOWAエコシステム・JR貨物「日本製紙、DOWA、JR貨物が秋田県―首都圏エリア間のラウンド輸送で合意」(2023年2月15日、参照日:2026年10月7日)

トラックだけでなく、鉄道でも往復の荷物を組み合わせられる例です。空荷区間を活用する仕組みと、モーダルシフトによる輸送手段の切り替えを組み合わせています。

ラウンド輸送の課題

ラウンド輸送の課題は、往復をつなぐことで時間・荷役・車両条件・費用の調整が増えることです。帰りの荷物が見つかっても、納品時刻や温度帯が合うとは限りません。運行を始める前に、双方の制約を確認します。

時間の制約が増える

図3:往路の荷降ろしが長引くと、復路の積み込みや納品も後ろにずれる可能性があります。移動・荷待ち・荷役を含めて、無理なく接続できるか確認します。

ラウンド輸送では、往路と復路の納品時間を合わせる必要があり、片方の遅れがもう片方の運行にも影響します。

往路の荷降ろしが遅れると、復路の積み込み開始も後ろにずれます。帰りの荷物の納品時刻が固定されている場合、往路の遅れを吸収できず、復路の配送にも支障が出る可能性があります。荷物の方向が合うだけでは、定期的な往復は成立しません。

確認するのは、往路の納品可能時間、荷降ろしにかかる時間、復路の集荷可能時間、復路の納品期限です。荷降ろし先から集荷先へ移動する時間も含め、往路と復路の間に無理のない接続があるか確認します。

荷役の回数と待ち時間が増える

ラウンド輸送は、空車で戻っていた便に積み込みと荷降ろしが加わるため、荷役の手間と荷待ち時間が増える場合があります。

帰りの荷物を載せるには、積み込み先での受け付けや荷役作業が必要です。到着時刻と作業開始時刻が合わなければ、空車走行を減らしても荷待ちが増え、拘束時間の短縮につながらないことがあります。

パレット積みとばら積みなど、荷姿が揃っていない場合も、積み込みや荷降ろしの条件が変わります。車両の走行だけでなく、復路で追加される作業の内容と時間を確認し、往復全体で効果が出るか見極める必要があります。

温度帯や荷姿などの条件が合わない

ラウンド輸送は、往路と復路の荷物の温度帯、荷姿、品質条件が合わなければ、同じ車両で運べない場合があります。

冷凍・冷蔵・常温では、必要な車両や温度管理が異なります。帰り方面に荷物があっても、往路で使う車両が復路の温度帯に対応していなければ、そのまま往復を組むことはできません。

におい移りが問題になる荷物や、危険物などの取り扱い条件も確認します。パレットの有無やサイズ、荷台への積み付け条件が異なる場合は、荷姿の調整も必要です。荷物の量と方向だけで判断せず、相手の輸送条件を運送会社と共有し、同じ車両で安全に運べるかを確かめます。

運賃と費用の分け方が決まらない

往路と復路で荷主が異なるラウンド輸送は、運賃や荷待ちにかかる費用の分け方を決めないと、実施に進めません。

往路だけを手配していた契約に復路を組み合わせると、運賃の負担に加え、追加の荷役や待ち時間の扱いも調整が必要になります。車両を効率よく使えることと、各社が負担する費用が合意できることは、別の論点です。

荷主同士だけでは運行条件と費用を調整しにくく、物流会社などが間に入ることも多くあります。往復全体の運行と追加作業を確認したうえで、関係する荷主と運送会社が、負担する費目と請求方法を決めます。

ラウンド輸送の始め方

図4:運行データで現状と候補を把握し、現場で条件を調整して試行します。試行後の実績を次の見直しにつなげ、往復全体の改善を確かめます。

ラウンド輸送は、まず自社の空で走っている区間を知ることから始まります。

ステップ1:自社の片道・空車の区間をデータで洗い出す

最初のステップは、運行実績から空車区間の発着地、時間、頻度を洗い出し、帰りの輸送を組める運行を把握することです。

出荷先の一覧だけでは、納品後の空車区間や、次の仕事までの空き時間は分かりません。配車表や配送実績、車両の走行・滞在記録などを確認し、発着地、発着時刻、運行曜日・頻度、積載量、空車区間を便ごとに整理します。把握できていない項目は、運送会社と確認して補います。

担当者が把握している運行を、拠点や部門をまたいで比較できるデータにすることが重要です。また、1日だけの実績で判断せず、曜日や繁閑による違いも確かめます。まずは対象エリアや定期便を絞り、継続して活用できる空車区間を探します。

Hacobuが提供する共同輸配送支援サービス「MOVO X-Data」は、運行データを活用し、長距離の空車運行や長時間労働など、課題の大きい運行を自動的に見つけ出すサービスです。時間・場所・頻度などを基に、組み合わせ候補の検討を支援します。

共同輸配送支援サービス MOVO X-Data

ステップ2:逆向きの荷物を持つ相手を探す

逆向きの荷物を持つ相手は、自社の別拠点・部門、取引先、同じ地域の他の荷主の順に、身近な接点から探します。

  1. 自社の別拠点・部門に、帰り方面へ向かう出荷や調達がないか確認します。
  2. 仕入先・納品先などの取引先に、逆向きの定期的な輸送需要がないか相談します。
  3. 業界団体や物流会社の紹介を通じ、同じ地域の他の荷主を探します。

候補とは、発着エリアだけでなく、曜日・時間帯、物量、車両条件を同じ項目で照合します。「逆方向の荷物がある」という情報を、実際に往復を組めるか判断する材料に変えるためです。企業間で共有するデータは、検討に必要な範囲と利用目的を事前に合意します。データで候補が見つかっても、荷役や契約の条件まで自動的にそろうわけではありません。運送会社や拠点担当者との確認を重ね、実行できる運行に落とし込みます。

三菱食品は、Hacobuの共同輸配送支援サービス「MOVO X-Data」による分析で、長距離配送の帰り便を別業務に活用しました。他社と配送データを持ち寄り、同じエリアの共同配送も実現しています。帰り便の活用と共同配送は、別の取り組みとして捉えます。

出典:Hacobu「三菱食品が挑む『輸配送の見える化』」(2025年9月29日更新、参照日:2026年10月7日)

ステップ3:時間・温度帯・荷姿の条件をそろえる

相手が見つかったら、荷積み・荷降ろしの時間、温度帯、荷姿をリストにし、同じ車両で往復できる条件を揃えます。

  • 時間:往路の荷降ろし、復路の積み込み、双方の納品が可能な時間
  • 温度帯:冷凍・冷蔵・常温の区分と、必要な車両条件
  • 荷姿:パレットの有無やサイズ、ばら積みかどうか
  • 品質:におい移り、危険物など、取り扱い上の制約

方向が合っていても、集荷可能な時間や車両条件が合わなければ運行は組めません。双方の荷主だけでなく運送会社も交え、実際の積み込みと荷降ろしまで実施できるかを確認します。

ステップ4:費用の分け方と遅れたときのルールを決める

往路と復路の運賃、荷待ちが出たときの費用、遅れた場合の代替手配は、運行開始前に関係会社で書面にまとめます。

決める対象は、往路と復路それぞれの運賃を誰が負担するか、荷待ちの費用をどう扱うか、片方が遅れて接続できないときに誰が代わりの便を手配するかです。負担する費目と対応する会社を明確にしておくと、運行中の判断の食い違いを防げます。

費用の分け方に一律の比率はありません。双方の荷主と運送会社が、運行条件や追加作業を踏まえて合意します。ラウンド輸送にすることだけを先に決めず、通常時と遅延時の費用の扱いまで整理します。

データから組み合わせ候補を見つけた後も、関係部門や運送会社との調整、運用ルールの設計が必要です。こうした検討を進める際には、外部の専門家を活用する方法もあります。Hacobuの物流DXコンサルティング「Hacobu Strategy」は、データに基づく課題整理から、改善策の設計、関係者の合意形成、実行までを支援します。

物流DXコンサルティング Hacobu Strategyについて詳しく見る

「3分でわかる Hacobu Strategy」の資料をダウンロードする

ステップ5:週1便から小さく試して数字で確かめる

ラウンド輸送は一部の便から試し、積載率、空車走行距離、拘束時間、費用を比較して、対象を広げるか判断します。

伊藤園とJA全農グループがそれぞれ週3回のうち1回から始めたように、全便を一度に変える必要はありません。

試行前に比較の基準となる運行実績を残し、試行後も同じ項目で記録します。物量や運行日数などの条件の違いも確認し、積載率だけでなく、接続のための空車移動、追加の荷待ち・荷役、費用まで含めて評価します。帰りに荷物を積めたかではなく、往復全体で改善したかをデータで確かめることが、継続・拡大を判断する基準になります。

Hacobuの配車受発注・管理サービス「MOVO Vista」は、協力会社への配送依頼、積載率の可視化、運行実績・コストの可視化を扱います。依頼と実績の蓄積を、運行の振り返りに活用できます。

配車受発注・管理サービス MOVO Vista

ラウンド輸送に関するよくある質問

ラウンド輸送について、呼び方、向いている荷物、費用の分け方、1社で実施する場合の疑問に答えます。検討時は荷物の方向だけでなく、定期性、時間、温度帯、荷姿を確認する必要があります。自社の運行で往復を組めるか、関係する拠点や部門と条件を照らし合わせてみてください。確認する条件ごとに整理して答えます。

ラウンド便とは何ですか?

ラウンド便とは、往路で荷物を届けた後、復路にも別の荷物を載せて運ぶ便で、ラウンド輸送と同じ考え方を指します。

運行の相談で「ラウンド便」という呼び方が使われていても、確認する対象は往路と復路のつながりです。帰りの荷物の積み込み先、出発できる時間、納品先を確認すると、実際にどのような往復を組むのか分かります。名称だけで判断せず、空車で走る区間がどこに残るかまで、運行の内容を確認してください。

どんな荷物がラウンド輸送に向いていますか?

ラウンド輸送に向いているのは、逆方向に定期的な輸送需要があり、温度帯・荷姿が合い、納品時間に余裕がある荷物です。

荷物の方向が合うことは、候補を探す入口にすぎません。運行する曜日や頻度が合わない場合、継続して往復を組むことは難しくなります。温度管理やパレットの条件が揃い、往路の荷降ろし後に復路の積み込みへ接続できるかも確認します。まず定期性と車両条件を合わせ、次に双方の納品時間を照合する順で検討します。

ラウンド輸送の運賃はどう分けますか?

ラウンド輸送の運賃に決まった配分比率はなく、関係する荷主と運送会社が、往復の運行条件を踏まえて話し合いで決めます。

往路と復路の運賃だけでなく、荷待ちや追加の荷役にかかる費用も、負担する会社を決める対象です。片方の荷主が運行全体を手配する場合でも、どの費用を誰に請求するかは確認する必要があります。金額だけを先に比較せず、見積もりに含まれる作業と含まれない作業を合わせて確認すると、負担範囲を整理できます。

ラウンド輸送は1社だけでもできますか?

ラウンド輸送は、同じ会社の拠点間や部門間でも実施でき、他社との連携だけを前提にした輸送方式ではありません。

自社の出荷と調達、別拠点からの出荷などに逆向きの荷物があれば、社内で往復を組める可能性があります。同じ会社であれば、他社と新たに条件を調整するより始めやすい場合もあります。出荷を担当する部門だけで完結させず、調達部門や別の物流拠点にも、輸送先、時間、頻度を確認すると、候補を探す範囲が広がります。

まとめ

ラウンド輸送は、行きと帰りの荷物を組み合わせ、空車回送を減らす輸送の形です。複数企業が連携して行う場合は共同輸送の一形態と捉えられ、自社の拠点間や部門間だけでも実施できます。また、バックホールは主に復路に着目した言葉です。ミルクランの「巡回」、中継輸送の「担当区間の分担」とも着目点が異なり、各手法を組み合わせることもできます。

検討では、自社の運行実績から空車区間を洗い出し、社内、取引先、地域の荷主へと候補を広げます。逆向きの荷物が見つかったら、時間、温度帯、荷姿を合わせ、運賃や荷待ちの費用、遅延時の対応を決めてから試行します。

データは、空車区間を可視化するだけでなく、企業間で運行条件を照合し、実施後の効果を確かめるための共通の判断材料になります。積載率、空車走行距離、拘束時間、費用を継続して記録し、現場との対話を通じて改善を重ねてください。一部の便で効果と実行可能性を確認してから、対象を広げます。まずは自社の運行データを確認し、帰り荷を組み合わせられそうな区間について、運送会社と相談するところから始めてみてください。

データをどう整理し、関係者と改善を進めればよいか迷う場合は、Hacobu Strategyが課題整理から実行までを支援します。支援内容の概要は、以下の紹介資料でご確認いただけます。

「3分でわかる Hacobu Strategy」の資料をダウンロードする

著者プロフィール / 菅原 利康
株式会社Hacobuが運営し、物流の基礎知識や法律を分かりやすく解説するメディア「ハコブログ」編集長。マーケティング支援会社にて従事していた際、自身の長時間労働と妊娠中の実姉の過労死を経験。非生産的で不毛な働き方を撲滅すべく、とあるフレキシブルオフィスに転職し、ワークプレイスやハイブリッドワークがもたらす労働生産性の向上を啓蒙。一部の業種・職種で労働生産性の向上に貢献するも、物流領域においてトラックドライバーの荷待ち問題や庫内作業者の生産性向上に課題があることを痛感し、物流領域における生産性向上に貢献すべく株式会社Hacobuに参画。

クラウド物流管理ソリューション「MOVO(ムーボ)」のマーケティングを管掌し、荷主企業や物流事業者の業務デジタル化(DX)を推進。専門知識を活かし、ロジスティクス分野の専門誌への寄稿や、様々な業界団体での講演活動にも登壇。「最新ツールの普及」と「分かりやすい情報発信」の両面から、物流業界の課題解決に現場目線で取り組んでいる。 >>プロフィールを見る

関連記事

セミナー

タグから記事を探す

メルマガ登録

物流に関する最新情報やお役立ちセミナーの告知などHacobuから厳選情報をお届けします