いまさら聞けない「バンニング・デバンニング」| 具体的な流れや注意点、効率化ポイントなどを解説
バンニング・デバンニングは貿易や国際物流において頻出する用語であり、物流担当者であれば正しく理解しておくべきです。用語の意味だけでなく、流れや効率化の方法を知らなければ、思わぬ出費やコスト増につながる恐れがあります。
そこで本記事では、物流現場で18年間バンニング・デバンニング作業に従事した筆者が、基礎知識を解説します。また、具体的な作業の流れ、そして現場が抱える課題と効率化のポイントをご紹介します。
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目次
バンニング(Vanning)とは
まずは「バンニング」について、概要と知っておくべきポイントを解説します。
バンニングとは「コンテナへ貨物を積み込む作業」のこと
国際物流において、バンニングは主に輸出業務のスタート地点となります。
工場や倉庫で用意された輸出用貨物を、空の海上コンテナへ積み込むことが主な作業です。取り扱う貨物の種類は多岐にわたり、主に以下のような形態があります。
- バラ積み:ダンボール箱、袋などを手作業で一つひとつ積み込む
- パレット貨物:パレットに載った商品をフォークリフトで積み込む
- 特殊貨物:ドラム缶、フレコンバッグ、自動車などを貨物に適した方法で積み込む
ポイントは、偏荷重にならないようバランスよく積みつけることです。また、満載の指示があった際は、スペースを無駄なく活用し、効率よく収める技術が求められます。
特にバラ積みの際、これらを考えながら作業するのが難しく、筆者も慣れるまでは上手くいきませんでした。ただ手を動かすだけでなく、はじめに仕上がりのイメージを持つことが、安全で効率的なバンニングのコツです。
積み付けた貨物を固定する「ラッシング」が不可欠となる
海上輸送中は、波による船の揺れや、クレーンでの積み下ろし時の衝撃がコンテナに加わります。もし貨物の固定が不十分だと、コンテナ内で貨物が動き、製品の破損やコンテナ内壁の損傷につながりかねません。
そのため、ベルト、角材などを使用し、貨物が動かないよう強固に固定する必要があります。ただし、バラ積みの場合は前後左右に隙間がなく、最上部の貨物が押さえられ、転がることがなければ、ラッシングの必要はありません。
このラッシング作業も慣れや経験が必要です。揺れや衝撃により貨物がどのような動きをするのかイメージし、適切な資材や道具で絶対に荷崩れが発生しないようにします。筆者は、港湾荷役会社に入社し、釘をハンマーで打って木材を固定したり、チェーンソーで角材を切る作業があることに驚きました。
デバンニング(Devanning)とは
デバンニングは、バンニングの対義語であり、現場では略して「デバン、バン出し」と呼ばれることもあります。
デバンニングとは「コンテナから貨物を取り出す作業」のこと
国際物流において、デバンニングは主に輸入業務の一環として行われます。海外から到着したコンテナを開封し、中の貨物を外へと降ろしていきます。作業方法はバンニング同様、荷姿によって異なります。
- 手降ろし:バラ積みされたダンボールなどを人力で運び出す
- フォークリフト作業:パレット貨物などをスピーディーに降ろす
手降ろしの場合、ローラーコンベアに載せて外へ流し出したり、コンテナ内で空パレットに貨物を載せ、フォークリフトやハンドリフトで運び出したりします。
コンテナを開ける際の荷崩れに注意する
デバンニング作業で最も注意すべきなのが、コンテナの扉を開ける瞬間です。 輸送中の揺れにより、中で荷崩れが起きている可能性があります。実際に筆者の勤めた現場でも、扉を開けた時コンテナ間口の貨物が雪崩のように崩れ、下敷きになり足を負傷した作業員がいました。
そのため、開封時は必ず安全な立ち位置を確保し、ゆっくりと扉を開け内部の状況を確認することが鉄則です。
国際輸送で使用されるコンテナのサイズは主に2種類
国際海上輸送で使われるコンテナのサイズは、主に20ft(フィート)と40ft(フィート)の2種類があります。これらは国際規格(ISO規格)で定められており、扱う貨物の量や重量に応じて使い分けられます。
▼ISO(国際)規格ドライコンテナサイズ
| コンテナの種類 | 外寸(長さ×幅×高さ) | 最大積載重量 | 内容積 |
|---|---|---|---|
| 20ft | 6,058㎜×2,438㎜×2,591㎜ | 28,080㎏ | 33.0㎥ |
| 40ft | 12,192㎜×2,438㎜×2,591㎜ | 26,670kg | 67.7㎥ |
| 40ft(9.6ft背高) | 12,192㎜×2,438㎜×2,896㎜ | 25,680㎏ | 76.0㎥ |
これらに加え、海外では45ftコンテナなども使用されています。また、これより小さな10ftや12ftのコンテナもありますが、国内輸送での使用がメインです。
次の章では「実際の作業はどんな流れ?」という疑問にお答えします。

バンニング・デバンニング作業の具体的な流れ
ここでは、バンニングとデバンニングそれぞれの標準的な流れを、以下の順に解説します。
- 【5ステップ】バンニングで貨物を出荷する際の流れ
- 【3ステップ】デバンニングで貨物を入荷する際の流れ
【5ステップ】バンニングで貨物を出荷する際の流れ
輸出貨物をコンテナに積み込むバンニングは、事前の計画と確認が非常に重要です。
1.貨物に応じたコンテナの選定・手配
まず、出荷する貨物の量(容積・重量)や性質に合わせて、最適なコンテナ(20ft、40ftなど)を選定し、船会社やフォワーダーを通じて手配します。
2.バンニングプランの策定
「どの貨物を、どのくらい、どのように積むか」などを記した計画書(バンニングプラン)を作成します。重量バランスや空間効率を計算し、コンテナ内に無駄なく安全に収めるためのシミュレーションを行います。
3.コンテナの点検
空のコンテナが到着したら、積み込み前に必ず点検を行います。項目は、壁や床に穴が開いていないか、汚れや異臭がないか、濡れていないかなどです。不備がある場合は、良質なコンテナへの交換を要請する必要があります。
4.積み込みとラッシング
バンニングプランに基づき、フォークリフトや手作業で貨物を積み込みます。積み込み後は、輸送中の荷崩れを防ぐため、ベルトや木材などで貨物を固定(ラッシング)します。
5.記録とセキュリティ管理
作業完了後、トラブル時の証拠となるよう、積み付け状態や固定状況を写真撮影します。最後にコンテナの扉を閉め、シリアルナンバーの入った「封印(シール)」を施して完了です。封印(シール)は、非常に硬い金属で作られており、一度ロックしたら産業用ボルトカッターなどでしか開けられません。
【3ステップ】デバンニングで貨物を入荷する際の流れ
輸入貨物を取り出すデバンニングは、安全確保と迅速な作業がポイントです。
確認と安全管理
コンテナが到着したら、まず封印(シール)のシリアルナンバーを確認します。書類上の番号と一致しているか、開封された痕跡がないかをチェックします。 扉を開ける際は、前述の通り荷崩れのリスクがあるため、慎重に片側の扉から様子を見て開放します。
荷降ろし作業
コンテナ内部の安全が確認できたら、貨物を取り出します。パレットならフォークリフトで、バラ積みなら手作業で搬出し、検品を行いながら倉庫内の指定場所へ保管します。契約上、時間の指定があれば、すみやかに作業し時間内に完了させる必要があります。
清掃と返却
すべての貨物を出し終えたら、コンテナ内部を清掃し扉を閉めて返却します。
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次の章では、バンニング・デバンニングの課題を3つご紹介します。
バンニング・デバンニングの4つの課題
ここでは、バンニング・デバンニングが抱える課題を、以下の4つのポイントに整理して解説します。
- コンテナ内で発生する「結露」に注意
- 身体的負担が大きく、作業員が集まらない
- 作業遅延による「追加料金」のリスクがある
- 貨物の質や状態により作業時間が大きく変わる
コンテナ内で発生する「結露」に注意
海上輸送において、避けて通れない問題の一つが「結露」です。 対策を怠ると、せっかくバンニングした商品が到着時に水浸しになっていたり、カビや金属のサビが発生したりする原因となります。対策法は以下のとおりです。
- 業務用の強力な乾燥剤を投入する
- 吸水シートや内張りを施す
- 貨物をシートで覆う
粉製品や食料品など、水に弱い商材は特に注意が必要です。
ここまで解説したバンニング・デバンニング作業を含む、「荷役(にやく)作業」についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
荷役とは?概要や物流現場での課題、最適化方法をわかりやすく解説
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身体的負担が大きく、作業員が集まらない
コンテナ内での手作業は、非常に過酷な環境になります。筆者は18年間毎日のようにコンテナ内で作業していましたが、時には重量物を1日中積み降ろしすることもあり、身体的な負担が大きかったです。
特に夏場のコンテナ内部は過酷です。熱を帯びた鉄板に囲まれたコンテナはとても熱く、サウナのような状態になります。スポットクーラーで冷風を送ったとしても、奥行きが6m以上もあるため、奥まで届きません。
こうした「きつい」作業環境は敬遠され、作業員が確保できません。ただでさえ深刻化している物流業界の人手不足と相まって、働き手がいない現状が大きな課題です。
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作業遅延はさまざまなリスクがある
バンニング・デバンニング作業が遅れると、さまざまなリスクが発生します。主なリスクは以下のとおりです。
- 遅延料金の請求:「到着後、〇時間以内に完了」という契約があれば、遅延料金を請求される可能性があります。
- 欠品による販売機会損失(デバンニング):入荷が遅延すると在庫計上も遅れ、注文が来ているのに販売できない状態になるリスクがあります。
- 急いで作業することによる事故やケガ:「遅れているから」と慌てて作業すると、思わぬ事故やケガの原因となります。さらに、品質低下も懸念されます。
作業遅延によるコスト上昇を回避するためにも、計画的な作業スケジュールの設計が重要です。
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貨物の質や状態により作業時間が大きく変わる
荷姿や作業方法により作業時間が大きく変わるため、予測しにくいことも大きな課題です。たとえば、パレットに載っている貨物ならフォークリフトですぐに積み降ろしできますが、バラ貨物の場合は、すべて手作業になるため数倍の時間がかかります。
また、デバンニングにおいては輸送中にコンテナ内で荷崩れが起きていると、安全確保と慎重な取り出し作業のために、想定以上の時間を要します。その結果、次のコンテナやトラックを待たせてしまい、物流拠点全体の稼働効率を下げてしまうことも珍しくありません。
次の章では、これらの課題を解決し、作業を効率化するための具体的なポイントをご紹介します。

バンニング・デバンニングを効率化する5つのポイント
バンニング・デバンニングは、適切な対策を講じることで、安全性と生産性を向上させることができます。ここでは、効率化を実現するための5つのポイントを解説します。
- マテハン機器・作業ロボットを導入する
- デバンニングする貨物や積み付けの状態を把握する
- パレット活用を推進する
- 外部委託(アウトソーシング)を活用する
- トラック予約受付システムを活用する
マテハン機器・作業ロボットを導入する
身体的負担が大きく、時間がかかる「バラ積み・手降ろし」の作業には、マテハン機器の導入が有効です。
たとえば、コンテナの奥まで「ローラーコンベア」を入れれば、貨物を運んで歩く距離を減らせます。また、近年導入されているのが、自動で貨物を積み下ろしする「デバンニングロボット」です。 初期投資は必要ですが、作業員の負荷軽減と省人化に大きく貢献します。
デバンニングする貨物や積み付けの状態を把握する
「開けてみるまで中身がわからない」状態は、作業遅延の原因となります。可能であれば事前に海外の荷主から詳細なパッキングリストや、バンニング完了時のコンテナ内部の写真を取り寄せておきましょう。
「どのような商材か」「どのような順序で積まれているか」を事前に把握できれば、適切な作業人員を配置したり、特殊な機材を準備したりと、段取りを組むことができます。
パレット活用を推進する
可能であれば、貨物をバラ積み(手積み)から、パレット積みへと切り替えるよう取り組みましょう。パレット化されていれば、フォークリフトでの作業が可能になり、手作業に比べて短時間で積み降ろしが完了します。
筆者の勤めた現場は、以前はほとんど手作業でバンニングを行っていました。しかし、効率化の観点からパレット化を進めたところ、作業にかかる時間と人員の大幅削減に成功。身体への負担が減ったことも実感しました。
ただし、バンニングの際、パレットや隙間の分だけコンテナに積める貨物量が減る(積載率が下がる)というデメリットもあります。作業コスト削減効果と輸送コストのバランスを見極めることが重要です。
外部委託(アウトソーシング)を活用する
自社で人員や設備を確保するのが難しい場合は、コンテナ作業を得意とする3PL企業(物流一括受託企業)へアウトソーシングするのも一つの手です。
プロに任せることで、作業品質の安定や波動への柔軟な対応が可能になります。また、自社でフォークリフトの運用や人材教育にかける固定費を削減できるメリットもあります。
外部委託のメリット・デメリットや選び方については、以下の記事で詳しく解説しています。
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トラック予約受付システムを活用する
デバンニングの効率化には、コンテナ到着の管理も欠かせません。いつコンテナが来るか分からない状態では、作業員や機材の準備や保管場所の確保が後手に回ってしまいます。結果として作業が遅れ、遅延金の発生や倉庫業務全体の遅れにつながりかねません。
そこでおすすめなのが、トラック予約受付システムの導入です。 トラックやコンテナの到着時間や詳細を事前に把握することで、計画的な受け入れが可能になり、待機時間の削減や作業の効率化を実現します。
中でも、シェアNo.1の実績を持つ「MOVO Berth」は、多くの物流現場で導入されています。
MOVO Berthの詳細は以下のリンクをクリックし、資料をダウンロードしてご確認ください。
まとめ|バンニング・デバンニングを理解し物流戦略を最適化しよう!
「バンニング」はコンテナへ貨物を積み込む作業であり、その逆に降ろす作業を「デバンニング」と呼びます。ただ積み降ろすだけでなく、ラッシングや封印(シール)、荷崩れへの注意など、専門知識が不可欠です。
不適切な管理は、事故やケガ、作業遅延による追加コストを招き、経営に悪影響を及ぼすリスクがあります。マテハン機器やシステムを活用しこの工程を最適化できれば、品質向上とコスト削減を同時に実現し、企業の競争力を高める武器となります。
もし「自社の物流現状を分析したい」「具体的な改善策をプロと一緒に考えたい」とお考えなら、Hacobu Strategyが力になります。現状分析から戦略立案まで、貴社の物流改革を伴走いたします。
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