物流コストとは?内訳を把握する重要性やコスト削減のポイントを解説
「売上に対して、物流コストが高いが適正かわからない」「燃料費や人件費の上昇で物流コストが経営を圧迫している」
荷主企業の経営者や物流管理者の中で、このような悩みを持つ方も多いと思います。物流コストは企業の利益に直結しますが、その内訳は複雑で見えにくいものです。
この記事では、物流現場に18年従事し安全責任者も務めた筆者が、物流コストの定義と内訳を解説。さらに、内訳把握の重要性、高騰要因、具体的なコスト削減ポイントもご紹介します。
もし、自社の物流コスト管理をご自身で行うことに不安がある場合は、外部の専門家に相談するのも有効な手段です。Hacobu Strategyは、データに基づいた物流課題の解決を支援するプロフェッショナルです。Hacobu Strategyの概要は以下ページをご覧ください。
目次
物流コストとは?
物流コストとは、企業が部品や原材料、商品を調達し、製造や加工をした後に製品を顧客に届けて販売するまでの一連の物流活動で発生するすべての費用(コスト)です。「物流コスト」と聞くと「運送費」だけをイメージされがちですが、それだけではありません。
具体的には、以下のような費用が含まれます。
- 製品の輸送・配送費
- 倉庫での保管費用
- 荷物の梱包や積み下ろし(荷役)にかかる費用
- 物流を管理するシステムや人件費 など
これらのコスト把握が、利益を確保し経営を安定させる第一歩です。
この物流コストの削減について、以下の資料にまとめています。詳しく知りたい方は以下のリンクをクリックし、ダウンロードして確認してみてください。
資料「荷主企業 物流担当者向け 物流コスト削減 基本ガイド」をダウンロードする
次章では、この物流コストの内訳について詳しく解説します。
物流コストの内訳
物流コストは、大きく以下の4つのカテゴリーに分類されます。
- 輸送・運送費
- 荷役費
- 保管費
- 管理費・人件費
自社のコストが何に使われているか把握するため、まずはこれらの内訳の理解が不可欠です。
輸送・運送費
輸送・運送費は、製品をある場所から別の場所へ移動させるためにかかる費用です。物流コストの中でも特に大きな割合を占めることが多い項目です。
これには、以下のような費用が含まれます。
- トラック、船、飛行機、鉄道などの外部に支払う運賃
- 自社で配送車両を保有する場合の燃料費
- 自社車両の点検や修理にかかるメンテナンス費用、車両の減価償却費
- 自社のドライバーの人件費
顧客への配送料だけでなく、工場から倉庫へ、あるいは拠点間で在庫を移動させるための「横持ち輸送」にかかる費用もすべてここに含まれます。
荷役費
荷役費(にやくひ)は、物流拠点(倉庫や物流センター)内での作業にかかる費用を指します。具体的には、以下のような一連の庫内作業に関連するコストです。
- トラックからの荷物の積み下ろし
- 倉庫への入庫作業、検品
- 在庫を棚に入れる「棚入れ」
- 指示書に基づき商品を集める「ピッキング」
- 出荷前の検品、配送先ごとの「仕分け」
- 段ボールなどに詰める「梱包」
- トラックやコンテナへの「積み込み」
これら作業に従事する倉庫作業スタッフの人件費や、作業時に使用する段ボール・緩衝材・テープなどの梱包資材の費用も荷役費に含まれることが多いです。
この「荷役」についてもっと詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
荷役とは?概要や物流現場での課題、最適化方法をわかりやすく解説
荷役は物流…
2025.12.22
保管費
保管費は、製品を倉庫や物流センターで一時的に保管・管理するためにかかる費用です。
自社倉庫を運営する場合の主な内訳は、以下のとおりです。
- 建物の減価償却費や固定資産税
- 倉庫内で使用する電気代や水道代などの水道光熱費
- 商品の品質を保つための空調費用(定温・冷蔵・冷凍など)
- 万が一の事態に備える火災保険や在庫保険料
外部倉庫を利用する場合には、上記ではなく倉庫の賃借料(坪代・保管料)が発生します。
管理費・人件費
管理費・人件費は、物流全体を管理・運営するためにかかる費用です。
具体的には、在庫管理システム(WMS)や配送管理システム(TMS)といった物流情報システムの導入費用や月額利用料、維持・メンテナンス費用が挙げられます。
また、上記(輸送・荷役・保管)で分類されない、物流部門の事務スタッフや管理者の人件費、通信費などもここに含まれるのが一般的です。
次章では、売上高に占める物流コストの割合を見ていきましょう。

売上高に占める物流コストの割合
自社の物流コストが適正かどうかを判断する一つの指標として、「売上高物流コスト比率」があります。これは、売上高に対して物流コストがどれくらいの割合を占めているかを示す数値です。
【計算式】売上高物流コスト比率 (%) = 物流コスト ÷ 売上高 × 100
日本ロジスティクスシステム協会(JILS)の調査によると、全業種の平均(速報値)は5.45%でした。これは、前年から0.45%上昇しています。背景には物流事業者からの値上げ要請などがあり、今後も上昇傾向と見られています。
ただし、この比率は業種によって大きく異なります。
▼2024年度 業種別 売上高物流コスト比率
| 主な業種 | 比率 |
| 製造業 | 5.37% |
| 卸売業 | 5.19% |
| 小売業 | 6.48% |
自社の比率を算出して業界平均と比較すれば、自社のコスト水準を客観的に把握できます。 もし平均より高ければ、コスト構造に課題がある可能性があり、詳細な内訳分析が必要です。
次章では「なぜ、物流コストの内訳を把握しておく必要がある?」という疑問にお答えします。
物流コストの内訳を把握する重要性
物流コストの全体額だけ見ても、具体的な改善にはつながりません。 コスト削減で最も重要なのは、物流コストの内訳を正確に把握することです。内訳を把握して初めて、「費用の割合」や「ムダ」といった問題点を特定できるからです。
筆者の18年の現場目線でいえば、表面的なデータには現れにくい「見えないムダ」こそが、コストを圧迫しているケースが多いと感じます。たとえば、以下のような時間が挙げられます。
- 倉庫内のレイアウトが悪く、商品を探し回る「ムダな歩行」
- 作業動線が交錯し、他の作業者を待つ「手待ちのムダ」
- 手順が標準化されておらず、ベテランの感覚頼りになっている「非効率によるムダ」
これらは帳簿上「人件費」や「荷役費」として一括りにされがちです。しかし、内訳を細かく分析し、こうした現場の「ムダ」を特定することこそが、真のコスト改善につながります。
内訳を把握しないまま、「運送会社に値下げ交渉」をしたとしても、根本的な原因が倉庫作業にあれば、効果は限定的です。
なお、ピッキングなどで商品を探すムダの削減に効果的な倉庫のロケーション管理について、以下の記事で詳しく解説しています。
ムダをなくす!倉庫のロケーション管理|基本から効率化の方法まで紹介
「商品がど…
2025.10.27
ここまで物流コストの内訳について解説しました。そのうえで、「自社で算出し管理するリソースがない」「専門家に見て欲しい」という企業も多いのではないでしょうか。そういった場合は、外部のプロに相談するのも有効な手段だといえます。そこでおすすめなのが、「Hacobu Strategy」です。データに基づいた物流課題の解決を支援するプロフェッショナルが、貴社の物流課題を解決します。Hacobu Strategyの概要は以下ページをご覧ください。
【売上高に占める物流コストの割合】でも解説しましたが、物流コストは上昇傾向にあります。次章ではその要因について深掘りしていきます。
物流コストが高騰する要因
コスト削減には、高騰の背景にある社会的要因の理解も重要です。 主な要因として、以下の4点が挙げられます。
- 人手不足
- ガソリン代の高騰
- 運搬・輸送頻度の増加
- 価格転嫁(運賃・料金への上乗せ)の進展
人手不足
物流業界における人手不足は深刻で、低入職率・高離職率の傾向です。
▼産業別入職率・離職率(2022年)
| 項目 | 全産業 | 運輸業・郵便業 |
|---|---|---|
| 入職率 | 15.2% | 10.2 |
| 離職率 | 15.0% | 12.3 |
労働人口の減少に加え、長時間労働や作業負担から担い手が集まりにくい状況です。
この人手不足は、物流コストを押し上げる最大の要因のひとつとなっています。なぜなら、人手確保のため賃金を引き上げる必要があり、人件費に転嫁されているからです。また、時間外労働の上限規制への対応も、人件費や委託費の上昇に拍車をかけています。
燃料費の高騰
「輸送・運送費」に直結するのが燃料費の高騰です。トラック輸送は大量の燃料を消費するため、原油価格や為替(円安)の影響をダイレクトに受けます。
さらに、近年は世界的な情勢不安などの要因により、燃料費は高止まり傾向です。事実、米国エネルギー省(U.S. Department of Energy)内の統計・分析機関「U.S. Energy Information Administration(EIA)」による原油価格の見通しでも、ほぼ横這いに推移すると見られています。
運送会社は上昇した燃料費を「燃油サーチャージ」として運賃に上乗せせざるを得ず、それが荷主企業(自社)のコスト負担増につながっています。
運搬・輸送頻度の増加
Eコマース(ネット通販)やBtoBでは、運搬・輸送の「小口・多頻度化」が進み、コスト増の要因となっています。これは、納品先企業が「在庫圧縮(在庫を持たない)」に取り組んでいるためです。
従来の一括納品から、製造業や小売業では「必要なモノを、必要な時に、必要なだけ」納品するジャストインタイム方式の要求が急増しています。
結果、納品は小口・多頻度化し、トラックの積載効率が低下。非効率な輸送が増えがちです。配送回数が増えればトラック台数、ドライバーの拘束時間、燃料費も増加し、トータルの「輸送・運送費」が上昇します。
ここまでで、「物流コストの高騰による負担を軽減する方法は?」と思った方も多いでしょう。次の章で4つの対策法をご紹介します。

物流コストの削減方法
コスト削減には、業務の「ムダ」をなくし効率化を図ることが基本です。 主な方法は以下の4つです。
- 拠点を集約させる
- 倉庫内作業ルールを策定する
- 物流管理システムを導入する
- 物流業務をアウトソーシングする
拠点を集約させる
複数の物流拠点が分散している場合、統廃合して集約させるとコスト削減が期待できます。
拠点が分散すると、各拠点で賃借料や光熱費(保管費)、人件費(管理費)が重複します。拠点間の「横持ち輸送費」もかさみます。
拠点を集約すれば、重複コストの削減に加え、在庫の一元管理による過剰在庫の防止や管理効率化も可能です。
ただし、以下のデメリットも考慮しましょう。
- リードタイムの増大: 拠点が遠くなり、配送時間が長くなるリスク
- 災害リスク: 拠点集中で、機能停止時にサプライチェーン全体が停止するリスク
倉庫内作業ルールを策定する
「荷役費」や「人件費」の割合が大きい場合、倉庫作業の見直しが有効です。
たとえば、「ベテラン頼みで新人の効率が上がらない」「ピッキングミスで手戻りや再配送コストが発生」といったケースです。この場合、ルールを策定することで、効率化だけでなく、事故削減によるコストカットも期待できます。
筆者が勤めた大手EC物流現場では、ルール化を徹底していました。新人からベテランまで同じ工程で作業するため、スキルによる生産性のムラが少なく、過去の事例から改善したルールで事故もほぼありませんでした。そのような環境が整っていれば、間違いなくコストカットに成功しているはずです。
物流管理システムを導入する
「在庫管理が紙やExcel」「配送ルートがドライバーの経験則」など、アナログ管理は非効率が温存されがちです。
WMS(倉庫管理システム)やTMS(配送管理システム)を導入すれば、業務は大きく効率化できます。たとえば、WMSなら正確な在庫把握や効率的なピッキング指示で、倉庫作業の効率化とミス削減が可能です。
これらのシステムは初期コストはかかりますが、中長期的に人件費削減や品質向上に貢献します。
とはいえ、物流システムの導入は大きな決断です。その中で「自社専用に開発すべきか」「クラウドサービスを導入すべきか」で悩まれる担当者様も多いのではないでしょうか。そのような方は、以下のリンクをクリックしてダウンロードし、自社に最適なシステム導入形態を判断するためにお役立てください。
資料「物流システムは、スクラッチ開発とSaaS導入どちらにするべきか。両者の違いを解説」をダウンロードする
物流業務をアウトソーシングする
「自社の人手やノウハウ不足」「物量変動でコストが不安定」といった悩みには、物流業務のアウトソーシング(外部委託)も有力です。3PL事業者など専門家への委託で、プロのノウハウによる効率的な物流が実現できます。
自社で資産やスタッフを抱えず固定費(保管費・人件費)を削減でき、社員はコア業務に集中できるメリットもあります。
物流アウトソーシングの概要や成功のコツについては、以下の記事で詳しく解説しています。
物流アウトソーシングとは?外注のメリットやデメリット、選び方、成功事例を解説
「輸送量が…
2025.11.11
ただし、ここで重要なのは、アウトソーシングによるコスト削減の本質は、固定費を変動費化することで不要な固定資産を削減できる点にあるということです。自社倉庫の建設費や設備投資、人員の固定給といった「物量に関係なく発生する固定費」を、「物量に応じて変動する委託料」に転換することで、経営の柔軟性が高まります。
しかし一方で、委託先の実態がブラックボックス化してしまうと、逆に物流コストが膨れ上がるリスクがある点にも注意が必要です。たとえば、委託先での作業効率が悪化していても気づけない、無駄な配車が行われていても把握できない、といった状況では、費用対効果が悪化します。
物流業務のKPI管理を自社で主導する
前述のアウトソーシングの課題を解決するには、委託先の業務内容を可視化し、定期的にKPIをモニタリングする仕組みが不可欠です。
具体的には、委託先の物流事業者に対して以下の観点を自社で把握し、コントロールできる状況を整えることが重要です。
- KGI・KPIを設定し、達成状況を把握できているか:単に「任せっぱなし」ではなく、配送遅延率、誤出荷率、積載率といった具体的な指標を設定し、定期的にレビューする
- どれくらい運べなくなるリスクがあるのか:委託先のリソース状況を把握し、繁忙期や緊急時の対応可能性を事前に確認する
- どのような事象でコスト増加が発生しているのか:燃料費や人件費の変動要因を可視化し、値上げ要請の妥当性を判断できる状態にする
こうした管理を徹底することで、アウトソーシングのメリット(固定費の変動費化)を享受しながら、ブラックボックス化によるリスクを最小限に抑えることができます。委託先から輸送拒否や制約の通知を受けた際にも、代替手段を速やかに講じることが可能になります。
物流体制の見直しとKPI管理の詳細については、以下の記事も参考にしてください。
物流体制の再構築を成功させる3つのステップ|内部・外部の最適バランスを見直す方法を解説
企業間物流…
2025.12.08
次の章では「実際に物流コストの削減に成功した事例が見たい」という声にお答えします。
物流コストの削減に成功した事例
ここでは、物流管理システムの導入により物流コスト削減に成功した企業の実例をご紹介します。
サトー商会様:データ分析による配送効率化で年間約5,000~6,000万円削減
サトー商会様では、MOVO Fleetを導入し、配送効率の実績データを詳細に分析しました。お客様ごとの到着時間、納品回数、待機時間、検品時間などをMOVO Fleetで可視化し、そのデータを売上額と照らし合わせることで、配送制約を緩和すべき顧客を特定。営業部門と協議しながら配送ルートを再編した結果、車両8台の減便を実現し、年間約5,000~6,000万円という大幅なコスト削減に成功しました。
詳細はこちら:納品の制約条件見直しで輸配送改革 ルート再編で8台減便。新規事業の足掛かりに|サトー商会
キリングループロジスティクス様:構内滞在1時間以内のKPI設計で車両回転率を向上
キリングループロジスティクス様では、MOVO Berthを導入し、「構内滞在1時間以内」というKPIを設計しました。トラック予約受付システムにより事前に入場時間を調整し、バース作業を計画的に実施することで、待機時間を大幅に削減。データに基づいた改善活動により、車両回転率が向上し、スループットの最大化と運送コストの削減を同時に実現しました。
詳細はこちら:“構内滞在1時間以内”のKPI設計──キリングループが挑むスループット最大化戦略
物流改善なら株式会社Hacobu
株式会社Hacobuは、物流業界のデジタル化とコスト最適化を支援する企業です。
アナログな物流現場で「無駄やムラがどこにあるのかわからない」という課題には、クラウド物流管理サービス「MOVO(ムーボ)」が最適です。MOVOは配送データや倉庫作業データを自動で蓄積し、待機時間や作業効率を可視化。データに基づいた改善活動により、現場レベルでの物流効率化とコスト削減を実現します。
さらに、複数の物流拠点を持つ企業が全社的な物流改革に取り組むなら、「Hacobu Strategy(ハコブ ストラテジー)」がおすすめです。拠点横断でデータを統合的に分析し、物流戦略の立案から実行まで伴走支援。経営層の意思決定を支える物流コンサルティングサービスです。
MOVOサービス詳細はこちら | Hacobu Strategy詳細はこちら
まとめ
今回は、物流コストの内訳と把握の重要性、削減ポイントを解説しました。
物流コストは「輸送・運送費」「荷役費」「保管費」「管理費・人件費」の4つで構成されます。人手不足や燃料費高騰でコストが上昇傾向にある中、企業の利益確保には、これらの内訳を可視化し課題を特定することが不可欠です。
内訳を把握した上で、以下のような施策の検討・実行がコスト最適化につながります。
- 拠点の集約
- 倉庫内作業ルールの策定
- 物流管理システムの導入
- 物流業務のアウトソーシング
ぜひ本記事を参考に、貴社の物流改革の第一歩を踏み出してください。
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