公開日 2025.04.03
更新日 2025.04.03

SCM(サプライチェーンマネジメント)のデメリットと問題点を解説。S&OPなど、さらなる対応策・発展手法とは?

SCM(サプライチェーンマネジメント)とは、サプライチェーン全体のモノ・金・情報の流れを適切に管理する手法を指します。本記事では、SCMの課題とさらなる発展手法について、物流DXパートナーのHacobuが解説します。

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SCMに関する基礎については、こちらの記事で詳細に解説しています。

SCMの課題

2010年代後半以降、IoTセンサーやビッグデータ解析、AIアルゴリズムなどデジタル技術の急速な進歩がSCMを大きく変革しました。リアルタイムでの在庫・輸送状況の把握や需要予測の高度化、サプライチェーン全体を可視化するデジタルツインの導入など、新たなテクノロジーを活用した持続的な競争優位の確立に、各企業は取り組んでいます。

しかし、テクノロジーの進化が進む一方で、SCMに対して「現代のビジネス環境にフィットしなくなってきているのではないか」という声もあります。

売上・利益貢献度が不透明

SCMはサプライチェーン上のモノの流れを最適化することに注力している一方で、その取り組みが最終的にどの程度売上や利益を増やしたのかを明確に示すのは難しい場合があります。たとえば在庫削減やリードタイム短縮によって生じたコスト削減効果は把握できても、その成果が売上アップや利益率向上に直結しているかどうかは測定しづらいのです。このため、投資対効果の検証が曖昧になりやすく、経営層の意思決定や戦略立案に十分反映されにくいという問題が生じます。

需要変化への即時対応が困難

SCMはあらかじめ計画に基づく最適化を重視するため、想定外の需要変動が起こった際に素早く対応しにくいという弱点があります。近年はSNSなどによる消費トレンドの急激な変化が当たり前になっており、こうした突発的な需要の増減に合わせて生産量や物流ルートを即時に見直す必要が高まっています。しかし、SCMの仕組みは長期スパンでの計画や過去の実績データをもとに組まれることが多いため、急な需要変化に柔軟に対応できず、結果として品切れや在庫過剰といった問題を引き起こしてしまうこともあります。

デジタル化やサステナビリティへの対応不足

従来型のSCMは物理的な在庫や輸送プロセスを管理することに重点が置かれ、デジタル技術の急速な進歩や環境・社会への配慮など、近年求められる新たな要請に対して十分な対応を行いにくい面があります。たとえばIoTデバイスやAIを使ったリアルタイム制御、CO2排出量を可視化・削減するエコロジカルな供給計画などは、従来のSCMフレームワークでは管理しきれないこともあります。さらに、サステナビリティやESG投資への注目が高まる中、環境負荷や社会的課題への取り組みをサプライチェーン全体で行わないと、企業評価やブランド価値を損ねるリスクも増大します。

SCMの発展手法

前述のようなSCMの課題に対し、取り組むべきアプローチを解説します。

S&OP(セールス&オペレーションプランニング)の導入

SCMが主にモノの流れとコスト削減に注力する一方、売上や利益との明確な関連づけが難しい問題を解決するには、S&OP(セールス&オペレーションプランニング)の仕組みを活用することが効果的です。S&OPは、販売(Sales)と生産・供給(Operations)だけでなく、マーケティングや財務、経営層なども含めて全社的に需要と供給を調整し、最終的な事業成果と紐づけるプロセスを指します。

具体的には、需要予測や在庫削減の取り組みが売上・利益にどのようなインパクトを与えるかを定量化し、KPIとしてモニタリング・共有します。たとえば、販売キャンペーンによる追加売上を可視化すると同時に、必要となる生産・物流コストの増加分と比較して利益を算出するなど、利益率やキャッシュフローと直接リンクした意思決定が可能になります。

こうした取り組みにより、サプライチェーン最適化の成果を会社全体の経営指標へ繋ぎ、投資対効果を明確化できます。

リアルタイムデータとアジャイルなサプライチェーン設計

SCMが長期計画重視のため、需要の急変動に即座に対応しにくい課題は、リアルタイムデータの活用とアジャイルな運用体制の構築でカバーできます。まずは販売チャネルやSNSなどの顧客接点から販売動向を即座に取得し、クラウドやAI解析を通じて工場や倉庫にフィードバックするシステムを整備します。

また、需要が急に高まった場合にも柔軟に生産ラインを切り替えられるよう、設備やシフト体制をモジュール化・スケーラブル化するのも有効です。加えて、物流面では小ロット高頻度配送の導入や、サプライヤーとの協業によるVMI(Vendor Managed Inventory:在庫共有)など、従来の大口・長期契約にとらわれない仕組みを構築することで、需要増減に合わせて迅速に供給計画を調整できます。

このように計画と実行のサイクルを短縮し、SCMを「定期見直し」から「リアルタイム最適化」へとシフトさせることで突発的な需要変化に対処しやすくなります。

データ連携の強化と環境指標の統合

従来のSCMでは物理的な物流管理が主眼でしたが、DX(デジタルトランスフォーメーション)が求められる現在は、IoTやAIを使ったサプライチェーン上のリアルタイム制御、データ解析の導入が不可欠となっています。

工場・倉庫・トラックなどあらゆるポイントにセンサーを配置して稼働状況やCO2排出量を把握し、クラウド上で統合的に管理すれば、コスト削減と環境負荷低減を同時に進められます。また、ESG投資やカーボンニュートラルに代表されるように、企業には環境や社会的責任が強く求められています。

そこで、サプライチェーン管理にサステナビリティ指標(排出量やリサイクル率など)を組み込み、取引先選定や輸送手段の選択に反映する手法が注目を集めています。たとえば、最短納期ではなく環境負荷の少ないルートを選択したり、グリーン電力を活用する拠点に優先的に生産を振り分けるなど、サプライチェーン全体で環境配慮を行うことで、企業評価やブランド価値を高めることが可能となります。

SCMのさらなる拡張・強化

3つの取り組みはいずれも、「従来型のSCMを脱却する」のではなく、「SCMをさらに拡張・強化する」方向性の施策と考えるとわかりやすいでしょう。

SCMはモノの流れや在庫・コストを最適化するフレームワークとして有効性を持ち続けていますが、そこにS&OPやリアルタイムデータ活用、サステナビリティ指標の取り込みなど、新たな視点やツールを「追加」することで、より現代のビジネス環境に適応したサプライチェーン管理へと進化させるイメージです。

たとえばS&OPは、従来のSCMが注力していた効率面だけでなく、売上や利益といった事業成果とダイレクトにリンクさせるための仕組みを提供します。リアルタイムデータ活用やアジャイルな運用体制は、SCMの計画・実行サイクルを短縮して需給変動に素早く対応しやすくし、デジタル化やサステナビリティ指標の導入は、環境負荷軽減や社会的責任を踏まえたSCMのアップデートを実現します。

つまり、従来のSCMを「基本」としながら、そこへ新しい考え方や技術を補完・拡張していくことで、より企業競争力を高めることができるわけです。

SCMの最適化ならHacobu Strategy

本記事では、SCMの課題とさらなる発展手法について解説しました。テクノロジーの進化が進む一方で、SCMは「現代のビジネス環境にフィットしなくなってきているのではないか」という声もあります。

しかし、SCMの発展的なアプローチも生まれてきています。それらの取り組みはいずれも、「従来型のSCMを脱却する」のではなく、「SCMをさらに拡張・強化する」方向性の施策です。このような新しい考え方や技術を補完・拡張していくことで、より企業競争力を高めることができます。

SCMにおける課題の払拭や発展的なアプローチの導入にお悩みでしたら、ぜひHacobu Strategyへお問い合わせください。

Hacobu Strategyが考える、SCM最適化に向けた実践的な4つのステップは以下の記事で解説しています。

【実践的】SCM(サプライチェーンマネジメント)の導入ステップを解説。具体的な導入事例も紹介

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2025.04.03

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