デッドストック(不動在庫)とは?発生する理由や問題点、対策方法を解説

在庫管理の中で、特に悩ましいのが「デッドストック(不動在庫)」の問題です。長期間売れ残った在庫は、倉庫やバックヤードのスペースを圧迫するだけでなく、キャッシュフローや利益率にも影響を及ぼします。在庫管理の見直しを進めることで、無駄なコストを削減し、より効率的な運営が可能になります。
本記事では、デッドストックが発生する原因や企業にとってのリスク、そして効果的な対策についてについて、物流DXパートナーのHacobuが解説します。
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目次
デッドストック(不動在庫)とは
デッドストック(不動在庫)とは、長期間にわたり倉庫や店舗に保管されたまま、販売や使用されることのない商品在庫のことです。一般的には、6か月から1年以上動きがない在庫を指すことが多いですが、業界や企業によって基準は異なります。
デッドストックは、資金が在庫として滞留する原因となり、保管コストの増加や商品価値の低下といったリスクを伴います。そのため、多くの企業にとって、デッドストックを適切に管理し、最適な在庫バランスを保つことが重要な課題となっています。
デッドストック(不動在庫)と滞留在庫の違い
デッドストックと滞留在庫は似た概念ですが、明確な違いがあります。
滞留在庫とは、販売のペースが想定よりも遅いものの、まだ一定の需要がある在庫を指します。一方で、デッドストックはほぼ需要がなくなり、販売の見込みがほとんどない状態の在庫です。
滞留在庫は、プロモーションの強化や販路の見直しによって販売を促進できる可能性がありますが、デッドストックは処分や大幅な値下げなど、より抜本的な対策が求められます。そのため、滞留在庫の段階で適切な対応を行い、デッドストックへ移行するのを防ぐことが重要になります。
デッドストック(不動在庫)が発生する原因
デッドストックが発生すると、企業の収益に大きな影響を与えるため、その原因を正しく理解することが重要です。デッドストックはさまざまな要因が組み合わさって生まれることが多く、原因を総合的に分析することで、より適切な在庫管理が可能になります。
需要予測のミス
デッドストックが発生する代表的な原因の一つが、需要予測の誤りです。市場の動向や消費者の購買行動を正確に予測するのは簡単ではなく、特に新商品や季節商品の場合は、その難易度がさらに高まります。
売上を楽観的に見積もったり、過去のデータに過度に依存したり、市場の変化を見落としたりすると、需要予測がずれてしまいます。また、景気の変動や競合商品の登場、パンデミックや自然災害といった予測不能な要因も影響を与えます。需要予測の精度を高めるには、データを多角的に分析し、状況に応じて柔軟に計画を調整することが欠かせません。
過剰な発注や仕入れ
発注や仕入れの過剰も、デッドストックを生む大きな要因です。仕入れコストを抑えるために大量発注を行ったものの、実際の需要を超えてしまい、売れ残るケースは少なくありません。
また、最小発注数量(MOQ:Minimum Order Quantity)の制約により、必要以上の在庫を抱えざるを得ないこともあります。さらに、発注システムの設定ミスや、部門間の連携不足によって同じ商品が重複して発注されることもあります。過剰発注を防ぐには、在庫管理を適切に行い、発注プロセスを最適化することが大切です。
商品ライフサイクルの変化
商品のライフサイクルが想定より短くなると、売れ残りのリスクが高まります。特に、技術革新のスピードが速いエレクトロニクス製品や、流行の影響を受けやすいアパレル商品は、新しいモデルやデザインの登場によって、短期間で需要が減少することがあります。
また、消費者の嗜好の変化やライフスタイルの変革、環境意識の高まりなども、商品の売れ行きに影響を与えます。市場の動向を的確に捉え、適切なタイミングで在庫を調整したり、価格戦略を見直したりすることが重要です。
物流や保管の問題
物流や在庫管理の不備も、デッドストックの原因となります。複数の倉庫に分散して在庫を保管していると、正確な在庫状況を把握しにくくなり、本来は十分な在庫があるにもかかわらず、不必要な発注をしてしまうことがあります。
また、在庫管理システムの不備や人的ミスによって、実際の在庫とデータが一致しないこともあります。さらに、倉庫内の管理が適切でないと、賞味期限や使用期限がある商品が棚の奥に埋もれ、販売機会を逃してしまうこともあります。在庫管理の精度を高めるためには、物流プロセスを整備し、先入れ先出し(FIFO:First-In First-Out)の原則を徹底することが求められます。
デッドストック(不動在庫)がもたらす問題
デッドストックは単に倉庫のスペースを圧迫するだけでなく、企業経営にもさまざまな悪影響を及ぼします。そのリスクを理解することで、デッドストック削減の重要性をより明確に認識できるようになります。適切な在庫管理を行うことで、コスト削減や資金の有効活用につながるため、企業の成長にとっても欠かせないポイントです。
保管コストの増加
デッドストックが発生すると、倉庫やバックヤードのスペースを占有し続けるため、保管コストが増大します。倉庫の賃料や光熱費、保険料、セキュリティ費用などは固定費として発生しますが、売れ残った在庫がスペースを圧迫すると、新商品や売れ筋商品のための保管場所が不足し、追加の倉庫スペースが必要になることもあります。
また、長期保管には管理や棚卸のための人件費もかかります。特に温度管理が必要な商品や、特殊な保管条件を要する商品の場合、そのコストはさらに大きくなります。在庫の回転率を高め、効率的に管理することで、保管コストの削減が可能になります。
キャッシュフローの悪化
デッドストックは企業の資金繰りにも大きな影響を及ぼします。売れない在庫に資金が固定化されることで、新商品の仕入れや販促活動、設備投資に使える資金が減少し、事業の成長を阻害する要因となります。
特に中小企業や資金調達が限られている企業では、デッドストックが増えることで運転資金が不足し、資金繰りが厳しくなるリスクが高まります。場合によっては追加の融資が必要になり、金利負担が増加する可能性もあります。デッドストックを削減することは、企業の財務基盤を安定させるためにも重要です。
商品価値の低下
時間の経過とともに、デッドストックの商品価値は下がっていきます。特に、ファッションや家電製品などの流行商品は、新しいモデルが登場すると一気に需要が落ちることがあります。また、食品や化粧品などの消費期限がある商品は、販売機会を逃すと値引きせざるを得なくなります。
さらに、長期保管による品質の劣化や外装のダメージも、商品の価値を下げる要因となります。最終的に、大幅な値下げ販売や廃棄処分を余儀なくされ、当初の利益計画を大きく下回ることになりかねません。適切なタイミングで価格を調整し、早めに在庫を処理することが重要です。
廃棄コストの発生
売れ残った在庫は、最終的に廃棄せざるを得ないこともありますが、その処分にもコストがかかります。廃棄物処理費用に加え、法規制に沿った適切な処分が求められるため、電子機器や化学製品などは専門業者への委託が必要になることもあります。
また、廃棄にかかる人件費や運搬費も企業の負担になります。さらに、近年は環境問題への関心が高まっており、大量廃棄が企業のブランドイメージに悪影響を与えるリスクもあります。一部の地域では廃棄に関する規制が厳しくなっており、違反した場合の罰則や追加費用が発生することもあるため、デッドストックの発生を防ぐことが重要です。
発生してしまったデッドストック(不動在庫)への対応方法
デッドストックが発生してしまった場合でも、適切な対応を取ることで、損失を最小限に抑えたり、新たな価値を生み出したりすることが可能です。デッドストック対策は単なる在庫処分にとどまらず、企業の社会的責任や環境への配慮といった視点も求められます。ここでは、具体的な対応策を紹介します。
割引販売やアウトレットでの販売
デッドストック対策として一般的なのが、割引販売やアウトレットの活用です。特に、季節商品や流行の影響を受ける商品は、できるだけ早い段階で値引き販売を行うことで、在庫を抱えるリスクを減らせます。
期間限定のセールや特別キャンペーンを実施することで、消費者の購買意欲を高めることも有効です。また、実店舗を持つ企業であれば、専用のアウトレットコーナーを設けたり、オフプライスストアを活用したりする方法もあります。さらに、複数の商品をセットにするバンドル販売や、他の商品と組み合わせることで付加価値をつける方法も考えられます。
ただし、過度な値引きはブランド価値の低下につながる可能性があるため、価格設定には注意が必要です。
ECサイトやフリマアプリでの販売
実店舗で売れにくい商品でも、オンラインでは需要があるケースがあります。自社ECサイトに「アウトレット商品」などの特別セクションを設けるほか、Amazonや楽天市場といった大手ECモール、メルカリやラクマなどのフリマアプリを活用することで、新たな顧客層にアプローチできます。
特に、越境ECを活用すれば、国内では需要が低い商品でも、海外市場で販売できる可能性があります。SNSやインフルエンサーと連携して、デッドストック商品の魅力を再発見してもらう取り組みも効果的です。
オンライン販売では、商品の魅力を伝える写真や説明文が重要になるため、工夫を凝らすことで売上の向上につながります。
BtoB販売や在庫シェアリングの活用
一般消費者向けの販売が難しい場合は、BtoB(企業間取引)の視点で販路を探すのも一つの手です。例えば、卸売業者やディスカウントストア、オフプライスストアなどは、大量に在庫を仕入れることが多いため、一括で処分する方法として適しています。
近年では、余剰在庫を企業間でシェアする「在庫シェアリングプラットフォーム」も登場しており、こうしたサービスを活用すれば、他社にとって有用な資源としてデッドストックを再活用できる可能性があります。
また、教育機関や研究施設などに割引価格や無償提供を行うことで、社会貢献にもつながります。このような取り組みは、企業のブランド価値向上にも寄与します。
BtoB取引を行う際は、税務や会計処理に関する規則を確認し、適切な契約や取引記録を残すことが重要です。
リサイクル・リユース・寄付による活用
販売が難しい商品であっても、リサイクルやリユースを通じて新たな活用方法を見出すことができます。例えば、繊維製品や木材、金属、プラスチックなどの素材は、リサイクル業者を通じて再利用することで、廃棄コストの削減と環境負荷の軽減を両立できます。
また、近年注目されている「アップサイクル」という手法では、デッドストックの一部を活用して新たな商品を生み出すことも可能です。たとえば、不要になった衣料品をリメイクして新たなファッションアイテムにしたり、古い電子機器の部品を使ってアクセサリーを作ったりするケースもあります。
食品や日用品、衣料品などは、フードバンクや福祉施設、災害支援団体に寄付することで、社会貢献につなげることができます。寄付を行う場合は、税制上の優遇措置が受けられる場合もあるため、事前に確認しておくと良いでしょう。
デッドストックを有効活用する取り組みを積極的に発信することで、企業のCSR活動やESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みとして、社会的な評価を高めることも可能です。
デッドストック(不動在庫)を防ぐ方法
デッドストックが発生した際の対応も重要ですが、それ以上に大切なのは、そもそも発生しないようにすることです。適切な在庫管理と精度の高い需要予測を行うことで、デッドストックのリスクを大幅に低減できます。本章では、デッドストックを未然に防ぐための具体的な方法を紹介します。これらの対策を組み合わせることで、在庫の最適化を実現し、業務効率や収益性の向上につなげることができます。
需要予測の精度を高める
デッドストックを防ぐために最も重要なのが、正確な需要予測です。過去の販売データを参考にするだけでなく、市場のトレンドや消費者行動の変化、競合他社の動向、季節要因やイベントの影響、さらには天候やSNSでの話題など、さまざまな要素を組み合わせて精度を高めることが求められます。
近年では、AIや機械学習を活用した需要予測システムが普及し、膨大なデータをもとにより高精度な予測が可能になっています。また、需要予測は一度立てたら終わりではなく、定期的に実績データと照らし合わせながら修正を加えることも重要です。週次や月次で予測と実績の乖離を分析し、継続的にモデルを改善していくことで、長期的に見ても精度の高い在庫計画が可能になります。
適正在庫の管理と発注ルールの最適化
在庫管理を適切に行い、過剰な仕入れを防ぐことも、デッドストックを回避するために欠かせません。商品ごとの売上や利益への貢献度を分析し、売れ筋商品は十分な在庫を確保しつつ、動きの鈍い商品は最小限の在庫に抑えることで、在庫全体のバランスを取ることが重要です。
仕入先との関係強化も有効な手段の一つです。MOQの引き下げ交渉を行ったり、リードタイムを短縮したりすることで、必要な時に必要な量だけ仕入れられる体制を整えることができます。また、定期発注方式やジャストインタイム(JIT)方式など、自社の業態に合った発注ルールを設定することで、過剰な発注を防ぐことも可能になります。
さらに、発注ミスを防ぐための仕組みを整えることも重要です。異常な発注量を自動検知するシステムを導入したり、発注担当者への教育を徹底したりすることで、人的ミスによるデッドストックの発生を防ぐことができます。
販売戦略の見直し(値引き・セール・販促)
デッドストックを防ぐためには、販売戦略の工夫も欠かせません。販売データをリアルタイムで分析し、売れ行きが鈍化し始めた段階で早めに対応することで、大幅な値引きや在庫廃棄を回避できます。
滞留在庫が発生した場合には、小幅な値引きや販促キャンペーンを早期に実施し、販売のテコ入れを行うことが効果的です。また、シーズン終了前に計画的な値引き率を設定し、適正な在庫水準へと誘導することで、売れ残りのリスクを最小限に抑えることができます。
マーケティング施策を活用して商品の魅力を再発信することも、デッドストックの発生を防ぐ有効な手段です。商品の新たな使い方を提案したり、コーディネート例を紹介したり、顧客レビューを活用したりすることで、購買意欲を高めることができます。さらに、セット販売や期間限定キャンペーンなど、在庫回転を促進する販売手法を取り入れることで、売れ行きを改善することが可能になります。
販売チャネルの多様化も重要なポイントです。実店舗だけでなく、自社ECサイトや大手ECモール、SNSを活用した販売など、複数のチャネルを組み合わせることで、より広い顧客層にアプローチすることができます。
在庫のリアルタイム管理と可視化
デッドストックの発生を防ぐためには、在庫のリアルタイム管理と可視化も欠かせません。バーコードやRFID(電子タグ)、QRコードなどを活用した在庫管理システムを導入することで、正確な在庫データを迅速に把握することが可能になります。
特に複数の店舗や倉庫を持つ企業では、クラウドベースの統合型在庫管理システムを導入することで、全社的な在庫状況を一元管理できるようになります。在庫の偏在や過剰在庫の発生を防ぐためにも、リアルタイムでの情報共有を徹底することが重要です。
また、ダッシュボードやレポート機能を活用し、在庫回転率や滞留日数などの重要指標を視覚的に把握することで、問題が発生する前に早期対応が可能になります。在庫アラートシステムを導入すれば、一定期間動きのない商品や、設定した基準を超えた在庫がある場合に自動通知されるため、担当者が迅速に対応できるようになります。
定期的な棚卸を実施し、システム上のデータと実際の在庫状況を照合することも、精度の高い在庫管理を行ううえで重要です。データと実在庫にズレが生じると、過剰発注や誤った販売判断につながるため、日頃から正確な在庫管理を徹底することが求められます。
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