見過ごされてきた不当な商慣行。「これからも大丈夫」は通用しなくなるのか。取適法の勧告事案から推察
2025年12月、物流事業者2社が取引適正化推進法(取適法)違反により、公正取引委員会から勧告処分を受け、社名が公表されました。
この事案は、物流業界において長年見過ごされてきた商慣行に対する行政の厳しい姿勢を示すものです。荷主や元請け事業者にとって、「これまで大丈夫だったから、これからも大丈夫」という認識は、通用しなくなるのではないでしょうか。
本記事では、勧告事案の具体的な内容と、そこから導かれる重要な示唆について、物流DXパートナーのHacobuが解説します。
見過ごされてきた「不当な商慣行」の一掃を狙う公正取引委員会
公正取引委員会の勧告では、元請管理手数料の不当な減額と、無償での荷役・荷待ちの強制が違反行為として認定されました。さらに、契約書に「その他一切の付帯業務」と記載することへの問題提起も行われました。
勧告事例1:元請管理手数料等の不当な減額
ある物流事業者は、「元請管理手数料」等の額を委託代金から差し引き、または支払わせていました。対象は合計6社、総額1896万4276円に及びます。
公正取引委員会の調査によれば、この事業者は「取適法に違反している認識はなかった」とのことです。つまり、不当な減額行為が慣行として長らく続いていた可能性があります。
勧告事例2:無償での荷役・荷待ちの強制
別の物流事業者は、再委託先の運送業者19社に対し、無償での荷役を日常的に行わせていました。さらに、積み降ろしの準備が終わっていなかったなど自社の都合により、2時間以上の荷待ちも無償で強いていました。

「その他一切の付帯業務」は違反のおそれという見解
公正取引委員会は報道発表において、以下のように述べています。この内容は、物流業界における契約実務に大きな影響を与えるものです。
- 荷待ちや積込み、取卸しなどの作業を行わせるならば、それを明記するよう指導した
- 運送業務以外の役務の内容、「その他一切の付帯業務」が具体的に何なのか、明確にするよう指導した
- 「運送業務、その他一切の付帯業務」という記載は、違反行為のおそれがあると見なされることを明示的に示した
出典:https://www.trucknews.biz/article/r122532/
この見解は、運送業務と関連する業務全部をまとめて発注する従来の慣行が、取適法上問題となりうることを示しています。
「大丈夫」が通用しなくなる3つの理由
上記の勧告事例は、「これまで問題なかったから大丈夫」という認識が通用しにくくなったことを示しています。「何を依頼し、いくら支払うか」という合意と、それが実際に履行されたかが、**「運行単位で明確」**になっているか——荷主や物流事業者があらためて点検すべきポイントを3つ挙げます。
1. 基本契約だけでは不十分かもしれない
基本運送契約書で「荷役料や待機料を払う」と定めていても、以下のいずれかが曖昧なままであれば、運行単位での合意が不明確であり、違反リスクがあります。
- 書面交付:そもそも個別運行ごとに配送依頼書(四条書面)を交付しているか
- 業務と対価の明確化:配送依頼書には付帯作業・待機など「運行以外で発生する時間に対する対価」が言及されているか
- 契約と実態の一致:契約どおりに実際に請求を受け、支払った記録があるか
特に課題となるのが、スポット便やイレギュラーな運行です。定期便では上記がカバーできていたとしても、その他の運行で管理・記録できていなければ、取適法対応としてのリスクが高まります。
2. 現場の「善意」が「違法」になりうる
運送会社側は、取引継続への配慮から、本来請求できる待機料や荷役料を『言いづらい』ために請求してこないケースや、ドライバーが早く帰りたいからと自主的に荷役をするケースもあります。自社に「払う」意思があったとしても、合意どおりに履行した記録がなければ、自社が協力会社に対して適正な対価を支払っていないと行政の目には映ってしまうかもしれません。
3.「請求がない=問題ない」ではない
「運送会社から特に請求がないので問題ない」と考えがちですが、これは危険です。そもそも「どこからが付帯作業なのか」が定義されていなければ、合意の前提がありません。運送会社側には請求の根拠がなく、定義が曖昧なままでは、結果的に「無償で付帯作業をさせていた」と見なされるリスクがあります。
取適法違反リスクを防ぐための対策
この問題を解決し、リスクをゼロにするためには、運行単位の個別契約を明確にし、その実績をシステムで記録・管理する仕組みが必要です。
配送依頼書をデジタル化し、運行ごとの合意を記録する
課題:運行単位の契約の曖昧さ
解決の方向性:運行ごとの料金・作業内容の明確化
配車受発注・管理サービス MOVO Vistaを活用して、配送依頼書(発注書)をデジタル化し、荷役料や待機料を盛り込んだ状態で運送会社と合意を取り、証拠をシステムに残すことができます。
自拠点の荷待ち・荷役時間を可視化する
課題:自拠点での荷待ち・荷役時間の把握
解決の方向性:予約・実績管理による可視化と改善
自社の物流拠点では、トラック予約受付サービス MOVO Berthを活用して、荷待ち・荷役時間を精緻に把握します。ドライバーの到着時刻、作業開始・終了時刻をシステムで記録し、荷待ちや荷役にかかった実績時間を可視化。「30分を超える荷待ちが発生していないか」を客観的なデータで確認でき、取適法で求められる荷主としての責任を果たすためのエビデンスとなります。
納品先での待機・作業実態を自動計測する
課題:納品先における待機・付帯作業の実態の不透明さ
解決の方向性:運行実態の自動・正確な計測と記録
動態管理サービス MOVO Fleetを活用して、 トラックの走行距離や納品先での滞在時間などを自動で計測。実績データがシステムに反映され、運送会社が請求しやすい、あるいは荷主や元請け事業者側が適正に対価を支払うための客観的な証拠となります。
社内のコンプライアンス意識を高める
課題:「これまでのやり方」が根付いている
解決の方向性:教育・周知による意識改革
システムを導入しても、それを使う人の意識が変わらなければ、取適法違反のリスクは残ります。「これまで問題なかったから大丈夫」という認識を改めるために、以下のような取り組みが有効です。
- 勧告事例の共有:今回のような勧告事例を社内に共有し、「違反とは気づかなかった」では通用しない現実を伝える
- 定期的な研修:取適法のポイントや自社の運用ルールを現場担当者に繰り返し伝える
- チェックリストの整備:日常業務で「書面を交付したか」「対価は明記されているか」を確認できる仕組みを作る
- 経営層のコミットメント:トップが取適法遵守の重要性を明確に発信し、組織全体の姿勢を示す
システムと人の両面から対策を講じることで、取適法違反のリスクを着実に低減し、健全な取引関係を構築できます。
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