Hacobu»導入事例»MOVO-Fleet»多重構造によるブラックボックスを克服、法令遵守と地域共生を叶える店舗配送
更新日:2025年03月10日
会社/事業所・拠点名
株式会社スギ薬局
導入製品
MOVO Fleet
導入台数
約600台
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スギ薬局グループは、売上高 約7,444億円、店舗数 1,718店舗(2023年度実績)のドラッグストアチェーンです。1976年の創業以来、医薬品、健康食品、化粧品、日用品、食品の販売および処方せん調剤を通して地域社会への貢献を目指し、さらなる企業価値の向上と地域社会の持続可能な成長への支援に取り組んでいます。
スギ薬局では、店舗配送の実態把握を目的に、2023年から動態管理サービス「MOVO Fleet(ムーボ・フリート)」を導入し、委託先、再委託先のトラックに装着し運用しています。
今回は、物流部 物流開発課 吉本昂司課長と杉山央様にお話を伺いました。

※本記事は「Hacobu Innovation Day 2025」での講演内容をまとめています。掲載内容は全て講演時(2025年1月)現在の情報に基づいています。

導入前の課題
  • 多重構造により物流センターから店舗までの実態把握が困難だった
  • ドライバーの拘束時間や納品制約の状況が把握できなかった
導入後の成果
  • ドライバーの働き方や納品制約の遵守状況が把握できるようになった
  • 配送効率向上に向けた改善サイクルを回せる環境が整った
  • 運送会社は、ドライバーの正確な就業状況の把握とBCP対策が可能になった
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多重構造で見えづらく、センターから店舗までを管理できていなかった

Q. MOVO Fleet導入の背景を教えてください

吉本様:スギ薬局の物流部では、戦略立案から管理までをスギ薬局のスコープと捉え、実際の庫内や配送のオペレーションはプロである委託先様にお任せする方針をとっています。また、物流業務の標準化を推進する中で、委託先、再委託先、再々委託先の方々の法令遵守、効率、品質向上に荷主も一体となって取り組むという考えを持っています。

管理対象を、お取引先様からセンター、センター内、センターから店舗の3つに区分しています。お取引先様からセンターに関しては、納品いただくトラックがセンターで待機していないか、過剰な荷役をしていないかをバース予約システムで管理しています。(参考:https://hacobu.jp/case-study/7375/)また弊社センター内は、共通の物流システムを全センターに導入し、同じKPI(Key Performance Indicatorの略)のもと各センターの作業を管理しています。

しかし、センターから店舗までは、今まで全く管理ができていませんでした。配送は多重構造化されているため、見えづらく、実態把握が非常に困難でした。問題があるのかないのかもわからなかったため、まずは現状の可視化を目指して動態管理システム 「MOVO Fleet(ムーボ・フリート)」を導入しました。

Q. 具体的にどのような課題がありましたか

杉山様:ドライバーの拘束時間や納品制約の遵守状況が把握できていないという課題がありました。物流2024 年問題の中、弊社の物流を支えてくださるドライバーの皆さまに違法な労働を強いている実態がないかを早急に把握する必要がありました。

納品制約については、弊社では原則、閉店後から開店1時間前までの夜間納品を実施していますが、大規模小売店舗立地法や騒音対策による時間的制約がある店舗も存在します。地域社会との共生を重視する企業として、これらの制約遵守は必須であり、その実態を把握する必要がありました。また実態を把握するだけでなく、そもそも制約内容が実態に即しているかの精査や、納品制約の内容や発生理由を委託先とで相互確認する仕組みの構築も必要でした。

Q. 導入はどのように進められましたか

杉山様:数センターでのトライアル後、本番導入時は16センターを3つのグループに分け導入しました。導入が拡大しても管理レベルが低下しないよう、また先輩センターから後輩センターへノウハウを供給するなど導入工数が嵩まないよう工夫しました。

Q. どのような成果がありましたか

杉山様:MOVO Fleetを装着することでトラックの稼働状況が確認できます。それにより、ドライバーさんが法令を遵守して運行頂けていることが確認でき安心しました。

納品制約の遵守状況の把握にあたっては、制約条件の精査・情報の一元管理にも取り組みました。制約条件の精査では、約1割の納品制約を解除することができ、コスト的にも大きな効果を生みました。また情報の一元管理では、納品制約の発生日時、理由、制約時間を物流センターを運営する委託先と我々で相互確認ができる ツールを作成しました。これにより、追加、変更、解除等のステータスが更新された時も全員に情報格差が生まれない 仕組みを構築しました。そのうえで、MOVO Fleetを活用し納品制約の遵守状況を確認しました。
導入当初は遵守率の低いセンターで 50%台という実態もありましたが、データを元に運送会社と協力し改善することで、現在は全センター平均で 90%近い遵守率になっています。

関係者を巻き込むため、「正確な事実」を「定量的に」捉えることを重視

Q. 導入にあたって重視した点を教えてください

杉山様: MOVO Fleetは我々とは直接の契約関係にない再委託先、再々委託先の運送会社のトラックに装着してもらいます。そのため、現場から理解が得られるよう、運送会社やドライバーにとってメリットが多くデメリットの少ないシステムかどうかを慎重に検討しました。

その点MOVO Fleetは、ドライバーの特別な操作なしで自動的に動態管理ができるためドライバーの負荷を最小化できます。運送会社にもMOVO FleetのIDを発行することで、各運送会社は自社のドライバーの正確な就業状況を把握することができます。位置情報をリアルタイムに確認できるので災害時の対応がスムーズに行えるというメリットも提供することができます。これらを丁寧に説明することで運送会社やドライバーの理解を得ていきました。

そして、「正確な事実」を「定量的に捉える」ことも重要視しました。今回の取り組みは、社内の関連部署、社外の委託先、再委託先、再々委託先と複数のプレイヤーの方々と協力して改善活動を行う必要があります。「感覚」や「あいまい」といった定性だけに基づいた仕事の仕方では周囲を巻き込むことは困難です。ひどい場合は門前払いを食らってしまう可能性もあります。自分たちが感じている違和感を証明するためにも、まずは事実を定量的に捉えることが改善に向けた大きな第一歩になると強く感じています。

 

配車業務の標準化と定量評価により、配送効率化に取り組む

Q. 今後の展望について教えてください

杉山様:今後は配送効率の向上に注力していく予定です。具体的には、積載率の向上、店舗滞在時間の短縮、トラック回転数の向上に取り組みます。配送実績がデータで取得できることで、このような取り組みが可能になると思います。

現在は、属人化している配車業務の標準化に取り組んでいます。配車計画においては、配車担当の力量に依存しているため、効率性においてバラつきが発生しています。これを理論に基づいた効率的な配車計画を誰もが作成できる仕組みを導入することで解消する狙いです。
標準化が実現したのちには、これらの配車計画に対し、MOVO Fleetで配送実績を正確かつ定量的に評価することで、さらなる効率化に向けた改善サイクルを確立していきたいと考えています。

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