迫る2024年問題、待機時間の削減・バース計画の標準化は必然だった
Q.MOVO Berth導入前の課題を教えてください
茨木様:私たちの関西支店は、東芝ブランドの家電製品を40年以上取り扱ってきた経験から、家電のメーカー物流、家電量販センターの運営などを得意としています。当センターは、家電の流通を最適化する「家電プラットフォーム運営」の西日本拠点として、さまざまな取り組みを行っています。
家電製品は小さな電球から、冷蔵庫や洗濯機などの大型家電までたくさんの種類があるため、保管・荷役・輸送という物流が簡単に成り立つわけではありません。その運び方についてもメーカーによって異なるため、手積みを行わなければいけないことが課題となっています。
ドライバーの長時間労働を解消するためには、荷積み・荷降ろしによる長時間拘束や、待機などのロスを減らす策を検討しなければなりません。2024年問題への対応に向けたドライバーやサプライヤーからの要望もありますが、効率的な倉庫運営によってお客様に付加価値を提供していくためには、私たちが解消すべき問題であると考えていました。
青島様:2018年5月に当センターが立ち上がった時は、店舗向けのサービスをメインでやっていましたが、同年10月にEC向けのサービスをスタートしたことで、サプライヤーの数が急増し、入荷の担当者に負荷がかかっているという声が現場から上がりました。ECサービスの開始によってサプライヤー数が増えたことでトラックの台数が急増したこと、現場・受付・ドライバーの情報連携の必要性が高まり、この2つをどう効率化するかということが課題でした。
山中様:MOVO Berth導入前は、バースを可視化する仕組みがありませんでした。ドライバーは、倉庫に到着すると一時駐車スペースにトラックを止めて、3階の受付まで上がってもらいます。ドライバーが受付担当とやりとりをして、紙の受付簿に手書きで氏名や電話番号を記入しもらっていました。電話番号の書き間違い、字が読めないことが日常的に起こり、時には受付に行列ができることも。長い時は1時間〜1時間半の待機時間が発生しており、ドライバーからも何とかならないかという声をいただいていました。
また、MOVO Berth導入前は、受付順でバースへ案内していたため、荷積み・荷降ろしに時間のかかるトラックが集中すると、混雑するという問題が起こっていました。 効率的に利用するためバースの稼働状況を可視化する方法がないものか考えていたところ、MOVO Berthを知りました。
ドライバー70名にアンケート実施、MOVO Berthの圧倒的なシェアが決め手に
Q.MOVO Berthを選んだ理由を教えてください
青島様:最初は、バースを可視化するシステムを自社開発しようかと情報システム部門に相談したのですが、ドライバーにどうやって伝達するかという部分で、自社開発は難しいのでは?という結論に至り、MOVO Berthであれば、ドライバーとのやりとりもできるため当社の倉庫に合うのではないかと思い、トライアル利用を行いました。
松岡様:導入検討時には、実際に使用するドライバーの意見も重要と考え、ドライバー70名にアンケートを実施しました。ドライバーがどのバース管理ツールを使っているか、家電の倉庫で導入されているバース管理ツールの中で一番多いツールはどれかを調査したところ、MOVO Berthの認知度は7割で、使っているドライバーが約半数という結果でした。
シェアの大きさに加えて、ガラケーに対応していることや、営業やカスタマーサクセスの方が親身に相談に応じてくれ、カスタマイズができる点も選定の決め手です。
受付業務・現場作業で月 420 時間の業務効率化に成功
Q.紙の受付簿からMOVO Berthに変わってどのような効果がありましたか?
笹川様:家電量販センターの業務に関しては、入荷作業を行った後に、出荷作業を行っています。ほとんどのドライバーはオンライン受付を利用し、トラックから降りることなく入場登録しているため、受付に訪れる人は大幅に減りました。ガラケーを使用しているドライバーへの操作説明やご支援が必要なケースもありますが、受付業務は2名体制から1名体制に変更しました。(※受付業務はAM6時-12時まで2名体制。)
受付に置いてあった、紙の受付簿、ボールペンなどがなくなりスッキリしました。また、ドライバーへの電話連絡も必要なくなり、作業負担が減りました。受付に張り付く必要がなくなったことで、他の仕事に時間を使えるようになったことも生産性向上の効果が大きいです。
現場では、荷降ろし終了後、次の車両が来るまでの「車両の切り替え時間」が短縮されたことから、入荷作業終了時間が早くなり、その分出荷作業のスタート時間を前倒しすることができ、結果的に1日の終了時間が短縮されました。
導入して2カ月ですが、概算として、一日14時間(事務で 4 時間、現場で 10 時間)、月 420 時間の業務時間を削減することができ、その他のやるべき業務に対応する時間が捻出できたことは、大きな成果と考えています。
導入から定着に向けて受付と現場がタッグを組んで運用を推進
Q.MOVO Berthの導入で、特に尽力された点を教えてください。
笹川様:当初、バース管理を推進する荷受けエリア責任者に、入荷情報が全て集約されており、情報やノウハウを持っているのが荷受けエリア責任者だけでした。MOVO Berth導入前は、ドライバーが受付に来ると、受付担当者と現場の責任者が無線でやりとりし、細かい指示を仰いでいました。「〇〇メーカー(サプライヤー)の〇〇製品が届いたけど、トラックはどのバースに着けたらいい?」というやりとりが発生するのですが、無線なので聞き取りにくかったり、情報が間違っていたりということもあり、意思疎通の難しさを感じており、ロスも多かったです。
山田様:どのトラックがどの商品を持ってくるかが荷受けエリア責任者の頭の中にしか入っていなかったため、最初は受付簿を紙で全て出力し、1枚ずつ確認しながら、荷受けエリア責任者が普段どのようにバースへ割り振っているのかを読み解きながら、表計算ソフトにまとめました。振り返るとこの地道な作業が受付と現場間のコミュニケーションの土台になり、MOVO Berth導入に繋がったと思います。MOVO Berth導入後は、翌日の予約状況を把握できるようになり、事前に現場と「明日どうする?」と毎日相談できるようになりました。また、当日の運営状況も時間帯・バース別に可視化できるため、振り返り改善に繋げられるようになりました。
小林様:MOVO Berth導入前は、次の日の入荷量がおおよそでしか見えていませんでしたが、予約ができるようになり、受付から連絡をもらい事前準備ができるようになったのは良かったです。ただ、サプライヤーに確認した上で、うまくバースに配分しなければ効率化ができないのですが、そこは受付では把握できないため、受付と現場が連携して割り当てます。
タブレットの使用は不慣れで最初は大変でしたが、12月の繁忙期をてんやわんやで乗り越えたことで、現場スタッフ全員が使えるようになりました。それによって、作業終了の目処が見えるようになり、荷受けエリア責任者として他の業務にあたれるようになりました。
サプライヤー、ドライバー、センターをつなげる情報インフラに
Q.MOVO Berthの導入でコミュニケーションはどのように変化しましたか?
笹川様:予約が間違っていた時や内容が異なる時、以前であれば受付にドライバーが来ないとわかりませんでしたが、現在は、担当や会社の番号、メールアドレスなどもわかるので、すぐにサプライヤーに確認することができます。サプライヤーとの連絡が円滑になりました。また、サプライヤー側の課題も聞けるようになったことでコミュニケーションの幅が広がり、困りごとがわかるようになったのも大きなメリットです。
Q.ドライバーからはどのような声がありましたか?
小林様:ドライバーからは、「MOVOの入っていないセンターで、受付の前に行列ができてドライバーが地べたに座っているけど、このセンターは楽だ」という喜びの声を頂いています。
松岡様:MOVO Berth導入後に、導入前に聞いたドライバーに対してアンケートを実施したところ、MOVO Berth導入後の感想は、ドライバーの70%から「大変良い・良い」という回答を得られました!その中でも「受付簿記入の削減」と「受付に寄らないでいい」という声を多くいただけました。また予約することにより、「次の仕事の段取りを組める」というコメントもあり、今後バース予約システムが幅広く使われるようになれば、このメリットがより大きな効果として感じられるのではないかと思います。
推進メンバーが現場を理解しチームで取り組んだことが成功の鍵に
青島様:当社には「ムダ・ロスを徹底的に解消する!」という「合理化」の文化が強く根付いています。現場の改善をメインとしてさまざまな合理化を推進していくチームがあり、本プロジェクトについても私たち合理化推進担当を中心に現場が一体となって取り組んできました。「現場の皆が『やりたい』という声をあげて取り組んでいるのだから、まずはやってみなはれ」と、上長も背中を押してくれたこともあり、今回のプロジェクトがうまくいったと考えています。
また、営業・本社の改善部隊、情報システムと多数の部門が今回この導入に力を貸してくれたのも要因の一つです。
Q.今後、MOVOを使って実現したいことはありますか?
茨木様:2024年問題によってドライバーの拘束時間が短くなる中で、これからドライバーは今までのような働き方ができなくなります。またカーボンニュートラルの観点からも、物流の問題をカバーできるようなオペレーションを実現していきたいと考えています。
また、将来構想としてバース予約に加えて、手積み・手降ろしによるドライバーの負荷を削減するためのサービス提供や、予約システムなど、2024年問題に向けた対応を進めていきたいと考えています。
Q.これから検討する方へアドバイスをお願いします
茨木様:この仕事に長く従事してきて、私が大切だと思うことは「物流は段取り八分」です。仕事に取りかかる下準備がしっかりできていれば、仕事の8割は終わったようなものという意味ですが、倉庫の仕事は下準備を如何にちゃんとやるかが混乱なく進めるコツだと考えています。
HacobuのMOVO Berthは、まさに下準備をサポートする仕組みと言えます。伝達とフィードバックの速さが段取りに繋がっていきますし、ドライバーの皆さんにも安心感を持っていただけると思います。物流にはイレギュラーがつきものですから、情報伝達をスムーズに行えることで物流が変わります。
携帯電話があれば、情報のやりとりができるのかもしれませんが、情報量が多いと逆に大変です。MOVOはドライバーの間で共通のツールとして認知されており、使いやすく安心感もあり、MOVOが「物流の情報インフラ」になっていると感じています。
コロナ禍で普及したオンラインMTGツールのようにMOVOがより使いやすく進化し、物流領域においてなくてはならない存在になっていくのではないでしょうか。