50万のSKUを取り扱う拠点。何十年と続いてきた待機問題
Q.MOVO Berth導入前の課題を教えてください
井崎様:一番の課題は、注文品の入荷バースでの待機問題です。王子流通センターでは50万にもなるSKUを取り扱っており、入場順に管理していたため構内で待たせることが多かったんです。
特に早朝はトラックが流れ込み、長時間待機させてしまうというのが、20~30年と続く大きな課題となっていました。
石津様:現在MOVO Berthは注文品の入荷バースで導入しています。
出版物は、大きく分けて新刊と注文品の2つがあります。
新刊は新しく発売されるもの。発売日が決まっていて、どこの書店に何冊配送するかを出版社と我々取次の間で連携しながら決めて、配送しています。
それに対して注文品は、書店で補充するものや、お客様から「この本が欲しい」と注文が入ったものなどです。全国の書店からの注文を受けており、いろんな商品が様々な場所から入ってくるため、トラックの台数も必然的に多くなってくるんです。
グループ会社での効果を目の当たりにし、導入を決断
Q.MOVO Berthを選んだ理由は何でしょうか?
石津様:出版共同流通の蓮田センターという弊社のグループ会社で先行して導入していたのが大きなポイントでした。
蓮田センターでも待機が課題と聞いていたのですが、実際に足を運び、バースの管理やトラック待機の様子を見せていただいたところ、構内がとても空いていたんです。そこで効果の大きさを目の当たりにし、MOVO Berthの導入を決めました。
比較検討もしましたが、トラック予約受付システムのシェアトップであるMOVOは、機能の充実度や費用の観点、蓮田センター以外の業界内でも導入が進んでいるという面でも、導入のハードルが低かったところも決め手でした。
庫内状況を把握する車両誘導担当者がタブレットを操作
Q.現在はどのように活用されていますか?
井崎様:拠点(=日本出版販売)主導でダイヤを組み、CSVで予約を一括作成しています。最初は運送会社主導で予約を取っていただくことを考えましたが、全車両が予約の取り合いになってしまうのを懸念し、この形が基本になりました。
基本的に毎日来る車両を拠点予約にし、不定期の車両については運送会社主導で予約をしてもらう。この2通りの予約を組み合わせて使っています。
拠点予約を行うと運送会社に確定通知が送信され、ドライバーはその時間を目指して入場、入場口のタブレットで受付操作をするという流れになっています。
扱うトラック台数が多いので作業効率を考え、車両の到着状況や構内の様子を把握できる車両誘導担当者にタブレット操作をしてもらう形にしています。
松本様:タブレットは、ドライバーが受付操作を行う入場口、車両誘導担当者が誘導するための車両待機場所と2階入り口の3カ所で使っています。
ドライバーは入場受付をしたら一時的に待機してもらい、車両誘導担当者がタブレットで車両状況を把握、呼び出しすることで、スムーズに案内できています。
ダイヤを定量的に改善することで、バースをフル回転
Q.MOVO Berth導入後、どのような成果が出ていますか?
井崎様:これまでは、現場の“なんとなく”の肌感覚や経験則で何十年も現場を運営していましたが、MOVO Berthを使うことでデータが可視化され、ダイヤを定量的に改善できるようになったことは大きいメリットであると感じています。
早朝が一番込み合うのですが、長い時は2時間、通常でも1時間程度の待機時間がこれまでありました。現在は予約が分散されたことで、9割以上のトラックは30分以上待たせることはなくなりました。
実はMOVO Berthの導入にあたり、予約時間を決めてしまうと、予約と予約の隙間時間ができてしまうのでは?という懸念がありました。
そこで拠点主導で、徹底的に調査して導き出したダイヤを作り、実態が一致しているかを確認して改善を重ねました。おかげで、現在車両間の空き時間は10分以内に収まっています。
松本様:導入後は、混雑が緩和され、構内が空いたのが大きいですね。車両誘導担当者からも「だいぶ減りましたね」という声をいただきまして、目に見えて分かる効果が出ています。
井崎様:車両の状況が可視化されることで、人員の配置も根拠を持って適正化できるようになったことも成果のひとつだと思います。
休憩時間の見通しも立てやすくなりましたし、作業が予定より押している場合は増員するといったこともできるようになりました。
もっと活用することで現場の生産性を上げられるんじゃないかと思います。
丁寧なフロー構築と事前のデータ調査がバースフル活用の鍵
Q.導入にあたり、苦労されたポイントはありましたか?
石津様:運用フローはかなり細かく詰めました。車両誘導担当者のトレーニングや事前のシミュレーションは総務課でやっていただきました。
松本様:マニュアルを作成し、何度も何度もシミュレーションを行いました。車両誘導担当者の平均年齢は40代後半。そのぐらいの年齢層だとタブレット操作をしたことがない方もいるので、「常に触っておいてください」と話して、とにかく触ってイメージできるようにしました。
井崎様:拠点予約を作るにあたり、ダイヤ作成には慎重に時間をかけました。これまでカンと経験に頼っていたものを、徹底的に調査して言語化しました。どれくらいの作業時間がかかりそうか?を一概にパレット数だけで予測することは難しく、運送会社レベルで実態を調査、パズルのように組んでいったんです。
現場側での一番大変な部分でしたが、これが功を奏して初日からうまく回すことができたんだと思います。
稼働範囲を広げて生産性向上やコスト削減に
Q.今後、MOVOを使って実現したいことはありますか?
井崎様:入場・退場の実績が積み上がってきているので、ダイヤ組みをうまくパターン化していくことがひとつ。そして、もう少し詳細なデータを共有することで、翌日の作業体制まで工程を組むなどして、構内の生産性をより上げていければと考えています。
石津様:情報収集の観点で有効活用していきたいです。
現在弊社では運送会社の配送コースを再編する取り組みを行っており、有効な手立てが見つかるのではないかと思っています。
松本様:待機車両が減ったことで誘導はとても楽になってきています。MOVOの稼働範囲を拡大した先には、社内リソースの有効活用を図れればいいなと思います。