輸送業務のDXを推進し、時代に合わせたデジタル運用へ
Q.MOVO Vista導入の背景を教えてください
才本様: 輸送事業本部は、輸送業務を管轄しております。全国15カ所の物流センターから出荷される商品の量は相当なものであり、その輸送網を管理することがミッションです。具体的には、膨大な輸送手配の適正化や輸送網の可視化、また輸送効率の良化に取り組んでいます。
現在弊社は、アスクルの輸送とアスクル以外の荷主様の輸送を行っています。当初はアスクルの配送店への輸送である通常輸送と、在庫移動の輸送のみ行っていましたが、2020年にアスクル以外の荷主様との取引が始まりました。これにより、輸送の依頼数が増加し、依頼の手間も増えたことで、電話やFAX、メールといったアナログなやり取りを止め、デジタル化することが急務となり、アスクルの輸送も対象として、西日本センターで取り扱う全ての輸送を対象にVistaを導入するに至りました。
Q.MOVO Vista導入前の課題を教えてください
豊森様: 私は、輸送事業本部と西日本輸送管理センターを兼務しており、今回のVistaの導入を主導しました。弊社のセンター業務とその先の輸送業務との間には、文明レベルで10〜20年ほどの開きがありました。それをDX化によって、時代に合わせたデジタル運用へと改革することが課題でした。具体的には、電話やメール、口頭といったアナログな方法で行っていた輸送手配から請求までの一連の運用をデジタル化するということです。
配車計画の管理は暗黙知であり、パッと見てすぐ確認できる形にするまでの加工に多くの時間を費やす必要がありました、また、請求業務に関してはメールの情報を元に表計算ソフトで管理する運用で手間がかかっていました。また、協力会社との間で受発注や請求内容に対する認識の齟齬が発生することがあり、その確認作業に時間がかかっていたことも課題のひとつでした。輸送手配のコミュニケーションをMOVO Vistaに置き換えることで業務をデジタル化し、これらの課題を解決することを目指しました。
Q.MOVO Vistaを選択した理由を教えてください
豊森様: 導入を検討していた当時はMOVO Vistaがリリースされ間もない時期で、現在と比べると、操作性やUIといった機能面において未完成な部分もあったと思います。ただ、コンセプトを聞き、これからどんどん進化していく可能性を感じましたし、その過程で弊社の希望も反映してもらえるのではないかと考えました。
「システムでできること」を前提にサービスを導入するのではなく、「システムでできそうなこと」を想像しながら導入を進めることができるのではないかと感じたことが、MOVO Vistaを選択した一番の理由です。実際に、導入後から現在に至るまで、機能面だけでなくコンセプトまで一緒に作ってくることができたと感じています。
MOVO Vista導入により依頼から請求までの一元管理が可能に
Q.MOVO Vista導入の成果を教えてください
豊森様: 西日本輸送管理センターでは、MOVO Vistaを全12社の協力会社様に展開しており、配送依頼から請求までの業務をMOVO Vistaを利用して行っています。臨時便の手配は、MOVO Vistaを通して弊社が協力会社に依頼をし、協力会社が応諾して配送をする流れになっています。配送完了後に協力会社に実績を入力していただき、弊社でそれを確認する、という方法で運用を行っています。
定期便も臨時便と同様にMOVO Vistaで管理しているため、導入後は一括で配車の管理ができるようになり、それに伴って請求明細も一元管理できるようになったことが大きな成果です。導入前に多くの時間を費やしていた配車管理表の作成も、MOVO Vistaを導入することによってその作業自体が不要になり、計画の可視化が容易になりました。
さらに、受発注や請求内容の認識の齟齬から発生していた協力会社様とのやりとりや調整業務もなくなり、工数は大幅に削減されたほか、全てが”データ”で管理できるようになったことにより、信頼性も高まりました。
また、配車の情報を登録さえしておけば、他者が登録した配車であっても、部内の全員が確認することができるようになり、業務の属人化を防ぐことができる点もメリットのひとつです。概算にはなりますが、輸送手配・配車計画管理・請求にかかる業務が導入前は月次で1人あたり40〜50時間かかっていましたが、導入後は10時間と75%以上削減し、業務効率化を実現しました。
今後の取り組みとして、協力会社12社がMOVO Vistaから請求書を発行する運用を開始する予定です。これまではバラバラの形式で請求書を受領していましたが、協力会社にて請求書を簡単に発行していただき、弊社は実績データに紐づく共通フォーマットの請求書を受領できるようになる見込みです。
才本様: 西日本センターでは月間数千にも上る依頼があります。タイトな時間の中、アナログな方法で請求確認業務を行っていたため、膨大な依頼や請求の内容を100%確認できていたかというと疑問ではありました。MOVO Vistaを導入することによって、受発注の情報・金額が合致し、それに基づいた請求がくるため、「情報の整合性が100%とれている」と自信を持って言えるようになりました。また、今年6月に発表されたガイドラインにもある「運送契約の書面化」にも対応し、法的な観点からも対応できる体制を構築することができました。これによって、「輸送手配の適正化」が実現し、MOVO Vista導入の第1フェーズが完了したと考えています。
東日本でも運用開始。西日本・東日本の運用の差異を解消し全社での標準化を目指す
Q.MOVO Vista導入の苦労や運用成功の秘訣を教えてください
豊森様: まず、協力会社への展開を丁寧に行うよう意識しました。リリースの状況を確認しながら、比較的案件数が少ないところから導入をすることにしました。一度は協力会社を訪問し、対面による説明を行いました。
これまでは西日本輸送管理センターのみでMOVO Vistaを導入していましたが、現在は東日本輸送管理センターにも導入を展開しています。協力会社3社を対象に導入しましたが、東日本輸送管理センターは西日本管理センターと比べると2〜3倍の案件数があり、どうしても工数がかかってしまい、東日本と西日本では運用方法も異なっていたため、全く同じ方法での運用は難しいと実感しています。しかし、輸送事業本部のミッションは、東日本と西日本の運用の差異を解消することでもあるため、今後どのように調整していくのか、ということが現在の課題のひとつでもあります。
Q.今後の展望を教えてください
才本様: アスクルの輸送は複雑かつ台数も膨大でコストがかかる、という大きな課題があります。課題の解決には、「輸送手配の適正化」「輸送網の可視化」「輸送効率の良化」に向けたDX化に取り組む必要があると考えています。
1つ目の輸送手配の適正化とは、受発注情報の整合性が取れており、取引先との認識も合致していること。これについては、MOVO Vistaを導入することによって実現されました。輸送網の可視化と輸送効率の良化については、これからさらに積極的に取り組んでいく予定です。まず、積載率が低い運行や、同一箇所に対して複数センターから配送しているといった情報を、動態管理サービス「MOVO Fleet」を活用して可視化していくことを目指しています。さらに、MOVO VistaとMOVO Fleetにより可視化された情報を、センターの配置や在庫配置の適正化に活かし、輸送コストの削減といった、輸送効率の良化につなげていきたいと考えています。
弊社と協力会社間のやりとりのデジタル化は完了しましたが、弊社内や、弊社とアスクル物流センターとのやりとりは、依然アナログで非効率であり、デジタル化の余地が多くあります。電話やメール、口頭でのコミュニケーションが非常に多いため、失念や遅延といったヒューマンエラーにもつながります。今後は、社内連携のデジタル化にも取組み、さらなる業務の効率化を図り、MOVO Vistaの第2フェーズの実現を目指します。