トラックの入場が同じ時間に集中すると待機が発生していた
Q.MOVO 導入前の課題を教えてください
高本様:弊社は創業100年を超え、2030年に向け新たな飛躍を目指すにあたり、2022年に長期ビジョン「KAWANISHI2030」を策定しました。また同時に、そのPhase1にあたる中期経営計画「Vision2024 物流イノベーションへの挑戦」を策定し、2024年までの期間を成長戦略の具体的な施策を策定する時期と位置付け、様々なチャレンジを行っています。
その上で、DX推進は重要な要素となります。MOVO の導入は、出荷業務における課題を解決するDX推進と捉えています。
大東様:大東営業所は、主に食品を取り扱う保税倉庫で、入荷車両は主に海上コンテナです。我々の課題は入荷ではなく、出荷業務にありました。倉庫は待機場所が狭く、トラックの入場が同じ時間に集中すると、待機が発生するだけでなく、物理的なオーバーフローが発生し、大きな課題でした。
また、出荷車両の9割が自社手配便であるにも関わらず入場時間をコントロールしていなかったため、翌日の出荷車両が何時に到着するかを把握できず、前日に翌日のすべての出荷の準備を行う必要があり、庫内の作業員の時間外労働が避けられない状況でした。
出荷業務の課題をMOVO Berth×MOVO Vistaで解決へ
Q. MOVO Berth・MOVO Vistaを選択した理由を教えてください。
大東様:大東営業所が多くの課題を抱えていた時、本社からMOVO Berth の紹介を受けたのがきっかけです。
高本様:本社ではDX推進を継続的に行っており、営業所の悩みやニーズに適したソリューションを探しています。定期的な情報収集の中で、大東営業所の課題とMOVO Berthのサービスが非常によくマッチしていると感じました。
大東様:本社から紹介を受ける前から、お客様や配送先から予約システムの資料や説明会の案内が配布されることがあり、今後大型センターではこのようなシステムが導入されてくるだろうと予想していましたし、資料ではMOVOの名前をよく目にしていたので、恐らく市場シェアが高いサービスなのだろうと見ていました。市場シェアが高いということは、使いやすさが評価されているということなので、MOVOには好印象を持っていました。また、自社と納品先で同じ予約システムを使用する利点は大きいと感じており、この点でも市場シェアが高いMOVOは魅力的でした。
当初はMOVO Berthのみを導入する予定で検討を進めていましたが、検討する中で、9割が自社手配である配車業務もMOVOで行うことで、出荷業務全体の課題を一気に解決できるのではないかと考え、MOVO Vistaを同時導入するに至りました。
Q.まずMOVO Vista導入の成果を教えてください
大東様:出荷車両は9割が自社手配便ですが、この手配業務における省力化と属人化が課題としてありました。以前は一つの案件に対して、配車依頼書の作成・FAX送信、配車依頼の電話対応、依頼書受領のFAX受信、車番確定のFAX受信と複数回電話やFAXによるやり取りを行っていましたが、MOVO Vista導入により、それもなくなりました。
また、MOVO Vista導入時に、運送会社、車両、および行き先ごとに料金マスタを整備したことにより、同じ地域に依頼する際の料金の相場が誰でも分かるようになりました。さらに、送り先マスタに軒先条件や納入時間の条件を登録し、誰でも分かるようにしたことで、以前は一人の担当者に属人化していた配車業務を、今では事務所の従業員が誰でも行うことができるようになり、まさに「配車業務のコモディティ化」が実現しました。
MOVO Berthによる荷待ち時間削減でドライバーが積極的に行きたがる倉庫に
Q.次にMOVO Berth導入の成果を教えてください
大東様:MOVO Berthについては、情報の可視化ができるようになったことが大きな成果です。以前は、トラックが翌日に来ることは分かっていても、具体的な到着時間が不明だったため、何時に来ても対応できるように、前日に翌日の出荷分のすべてを準備する必要がありました。しかし、MOVO Berthを導入したことで、到着時間が可視化され、翌日の遅い時間帯に到着するものは、前日に準備をする必要がなくなりました。これにより時間外労働が削減されました。また、以前はトラックが到着するまで、準備した荷物を積み込み場所に移動することができませんでしたが、現在は、到着時間に合わせて荷物を積み込み場所に準備できるようになり、作業効率が向上しました。私たちは「15分前行動」をルールとして採用しており、トラックが到着する予定時刻の15分前には、準備していた荷物を積み込み場所に移動するようにしています。これにより、トラックの荷待ち時間も削減されました。
また、リフトにタブレットを設置しトラックの到着状況をリフトマンが直接確認できるようになったことで、荷役作業が飛躍的に効率化しました。MOVO Berth導入後は、月を追うごとに荷役作業や事務作業の工数が削減され、時間外費用にして約30%の削減効果が出ています。
高本様:先日、物量が2番目に多い運送会社を訪問した際に、「MOVOを使っているおかげで非常に便利で助かっています。荷待ち時間が少なくなったため、ドライバーが積極的に川西さんの倉庫に行きたがる」と言われ、大変嬉しく思いました。運送会社にも満足いただいている点は、大きな成果だと感じています。
大東様:MOVO Berthの導入にあたって、従業員全員がこのシステムを使いこなせるかどうかに不安がありました。はじめから従業員にタブレットを渡して、試行錯誤しながらも自分たちなりの作り込みを行い、その中で自分たちが使いやすさを実感できるようにしました。効果を実感することで、より使いやすくするにはどうすればよいかを自主的に議論し改善する文化が根付いてきました。私は、MOVOという便利なツールを現場に与えたに過ぎません。それを現場が工夫して活用したことが効果に繋がったと思っています。
Q.MOVO Berth× MOVO Vistaの運用成功の秘訣を教えてください
大東様:運用成功の秘訣は、まず、我々がMOVO Vistaで配車を依頼し、それを受けた運送会社が依頼を受諾すると同時にMOVO Berthで引取り時間の予約を行うという一連の流れをMOVOというひとつのシステムの中で確立できたことです。
また、配車依頼は前日の午前中までに行うようにし、運送会社は1日1回、お昼にMOVO Vistaをチェックするというルールを設定しています。依頼が前日の午前中を超える場合は、電話で連絡をする運用にしています。これにより、運送会社が常時MOVOを確認する必要がなくなり、お互いが効率的に運用することが可能となりました。システムだけに頼るのではなく、運用ルールを定め、運送会社と合意して進めることも成功の秘訣だと思います。
運送会社と持続的な関係を築くためにもMOVOは欠かせないものに
Q.今後の展望を教えてください
大東様:MOVO Berthの導入以前はデータがなかったため、何を検証すべきかわからない状態でしたが、2022年9月からデータが蓄積されているので、このデータを活用して、荷待ち時間の削減、コアタイムの荷役効率の向上、バース配置の適正化など、様々な形で検証と改善を進め、MOVOをさらに我々の業務に適した形で使いこなしていきたいと考えています。
前述のように、私は、MOVOという便利なツールを現場の従業員に与えたに過ぎません。それを現場が工夫して活用したからこそ成果がでています。MOVOをさらに我々の業務に適した形で使いこなすためには、この従業員のモチベーションを崩すことなく維持していくことが重要だと感じています。今後は、新たに得たデータをもとに、更なる改善に取り組んでもらいたいと考えています。
高本様:会社としては、大東営業所での成功事例は非常に価値があると感じており、他の営業所での展開も進めていきたいと考えています。このような取り組みは、営業所の現場力の強化はもちろん、運送会社を含めた協力会社との持続的な関係を築く上でも重要です。MOVOはそれを実現できる効果的なツールですので、今後も積極的に活用していきたいと考えています。
一方で、現場からは「現状はうまく回っている」との声も聞こえてきます。しかし、将来的なリスクを先読みし、現状に甘んじることなく成長を目指す必要があります。社内の成功事例を積極的に紹介することで、身近なものと捉え、自分たちにもできると実感し「会社からのやらされ感」なく取組んでもらうことが大切だと考えています。
我々は倉庫会社であり、荷主のお客様、運送会社、協力会社など多くの関係者と協力しながら事業を展開しています。物流2024年問題を目前にし、このような関係者と円滑な運用に向けた枠組みを作り、それを持続可能なものにしていくことが、さらに大切だと考えています。そのため、倉庫会社として、倉庫に電気を通すのと同じように、MOVOを導入し、運送会社や協力会社が円滑に業務を進められる環境を用意することが求められてくると考えています。