配車から請求・支払いまで、データが一貫して流れる仕組みへ
Q.プロジェクトが発足した背景を教えてください。

東日本支店 国立流通センター営業所 チーフリーダー 齋藤裕太様
齋藤様: 以前から、協力会社様向けの配車依頼書を作成する簡易的なシステムはありました。ただ、そこで処理が完結してしまい、請求・支払いにはつながっていませんでした。配車は紙、請求・支払いは別のシステムで管理し、手作業で突き合わせていたんです。そのため、案件ごとの収入と原価をすぐに把握できず、収支が見えるのは月次の締め作業後になっていました。
社内でも、いずれは情報を紐づけたいという構想はありました。今回、新しい輸配送システムを構築するうえでまず目指したのは、案件ごとに必要な情報がきちんと紐づき、配車から請求・支払いまでデータが一貫して流れる状態です。それによって、案件ごとの収支をタイムリーかつ精緻に把握できるようにしたいと考えていました。
輪千様: 既存システムは国立で導入し、北関東でも一部使っていましたが、拠点によって業務の進め方に特色があり、十分に使い切れていませんでした。最終的にそろえる情報は同じでも、そこに至るまでの過程が違っていたんです。今回の開発プロジェクトでは国立だけでなく北関東にも最初から参加してもらい、2拠点で標準化しながら進めることにしました。

紙・Excel・システムに情報が分散。業務を支えていたのは「職人技」
Q.抱えていた課題を教えてください。

東日本支店 国立流通センター営業所 チームリーダー 原さえ子様
原様: 私は主に荷主企業への請求と運送会社への支払いを管轄しています。今使っているExcelは汎用性がある一方で、配車担当者によって入力が変わってしまうことが課題でした。例えば、同じ場所でも「愛知」と書く人もいれば「名古屋」と書く人もいる。運賃も、割増分が込みなのか、別なのかが人によって違い、入力した人の癖まで読み解かなければなりませんでした。Excelの数式が壊れていることもあり、その復旧に時間がかかってしまうこともしばしばありました。
請求・支払いは3人で担当していますが、正直「職人技」になっていたと思います。「この書き方ならこの人」と判断できないと仕事が進まず、完全に属人化していました。
荷主企業もデジタル化が進み、請求の締め時間がどんどん早くなっています。「私たちが行っているようなアナログのスピード感じゃだめなんだ」と感じ、どうにか工数を削減したいと考えていました。

輪千様: 配車担当者が登録した貨物情報と、事務担当者が扱う請求情報が連携していないため、Excelと依頼書を1日100〜200件ほど照合している状況でした。金額、車両、工程など、確認項目も多く、相当な負荷になっていたと思います。
また、予定していた車両が故障などで変わった場合、当日の手配はできていても、データの修正まで手が回らないことがあります。後工程のことを考えても、実際に走った内容とデータを必ず一致させたいと考えていました。
齋藤様: さらに、配車台帳は「紙」なんです。多い人では1人50台分ほどの車両情報を管理し、工程や車両が変わるたびに消しゴムで消して書き直します。毎月かなりの数の消しゴムを消費しますし、紙が丈夫でないともたないので配車台帳には一番高級な紙を使っていたほどです。
「先月のこの日に何が走っていたか」と聞かれたら、保管してある紙の台帳をめくって探す。必要な情報をすぐに検索できる状態ではなく、人の記憶と手作業に頼っていました。
パートナー選定の決め手は、物流現場の「話が通じるか」
Q.Hacobu Solution Studioを開発パートナーに選んだ理由を教えてください。
輪千様: 社内開発には規模的な限界があり、複数社に相談しました。ルート組みのパッケージはあっても、私たちが求めていたのは請求までデータをつなぐ仕組みです。飲料輸送では、日々変動する貨物量に応じて必要な車両を確保し、荷物と車両を効率よく組み合わせる必要があります。さらに、納期だけでなく、トラックドライバーの拘束時間や各工程のバランスを見ながら、頻繁な変更にも対応しなければなりません。単純に一つの荷物に一台の車両を割り当てる配車とは異なり、配車の組み方が事業の収益性を左右します。こうした前提を理解してもらうこと自体が難しかったんです。
話していると、相手が物流現場や当社が求めるものを理解できているかは分かります。前提がそろわないまま進めれば、違うものができあがるリスクがある。その点、Hacobuさんとは同じ温度感で「話が通じた」。物流や配車への現場解像度の高さが大きな決め手でした。
また、現場ではすでにトラック予約受付サービス「MOVO Berth(ムーボ・バース)」を使っていました。予約システムは複数使い分けていますが、そのなかでもMOVOはUI(ユーザーインターフェース)が直感的で使いやすいという共通認識がありました。新しいシステムへの抵抗感が予想されるなかでも、「MOVOの会社がつくるシステムなら」と現場が言ってくれたのも後押しになりました。
「無理」で終わらせず、現場に足を運び代替案を示す
Q.Hacobu Solution Studioの対応はいかがでしたでしょうか。

東日本支店 羽生とちぎ営業所 係長 輪千雄一様
輪千様: Hacobuさんとは終始同じ温度感で話せましたし、物流現場の知見も豊富で、信頼できると感じました。その姿勢は、私たちの希望への向き合い方にも表れていました。「こうしたい」と伝えても、簡単に「無理です」とは言わず、担当いただいた関口さん・清水さんは、いつも「では、この代替案はどうですか」と提案してくれました。要件定義を重ねるなかでも、前回話した内容は確実に押さえてきてくれましたし、分からないことは積極的に質問してくれました。私たちの業務や思いを前向きに理解し、実現する方法を一緒に考えてくれていることが伝わりました。
要件定義の最初の3カ月ほどは、ほぼ毎週現地に来てくれました。実際に会って話すことで伝わる情報は多く、その後のオンライン会議の進み方も変わったと思います。
齋藤様: 私たちは物流や配車のプロではありますが、システム開発は専門外です。「ここまで聞いていいのかな」という細かい質問にも答えてもらい、その場で回答できないことも、必ず次回までに答えを準備してくれました。配車台帳や実際の配車現場も見てもらい、当社にとっての配車とは何か、というところから一緒に理解を深めてもらえたことに安心感がありました。
案件ごとの収支をタイムリーに把握。配車業務を月160時間以上、締め作業を3日短縮見込み
Q.新システム導入の成果を教えてください。
原様: 請求運賃と支払い運賃もマスターで管理できるようになり、これまで手入力していた部分がなくなりました。案件ごとの収支をタイムリーに把握できるようになりましたし、データを一律に修正できるため、修正の抜け漏れも防げています。担当者の記憶ではなく、ルール化された情報を見て判断できるようになり、属人化の解消やメンバーの育成にも役立っています。
請求・支払い業務では、これまでExcelや依頼書などを突合するためにかかっていた時間がなくなり、月末の締め作業が3日早くなる想定です。以前は請求業務を優先すると支払いが後ろ倒しになっていましたが、現在は同じタイミング、同じ精度で並行できます。締め時間が早まる荷主企業への対応や、協力会社様への迅速な支払いにもつながっています。
輪千様: 配車業務では、スポット案件の入力や台帳作成、確認作業を合わせて、1人あたり1日約1時間を削減できる想定です。担当者は8人なので、チーム全体で月160時間以上の削減です。紙台帳やExcel、紙の伝票などに分散していたデータが集約され、一括で閲覧できるようになったことも大きな効果です。これまで必要だった、複数の資料から情報を集めて読み解く作業もなくなりました。
齋藤様: 現在は協力会社様にFAXで依頼書を送り、そこから各ドライバーへ電話やメールで伝えてもらっています。将来的には、希望する協力会社様にはドライバーまで依頼書を一斉送信できるようになる想定です。伝達の手間や、口頭連絡による時間の間違いも減らせると思います。

全てを自動化しない。現場の柔軟性とデジタル化を両立
Q.プロジェクトのなかで苦労した点や工夫した点などがあれば教えてください。

東日本支店 北関東流通センター営業所 サブグループリーダー 森圭司様
森様: ひとつは、これまで違う運用フローだった国立と北関東で同一システムを導入することです。国立と北関東では、同じ荷主企業の案件でも配車組みをする過程が異なるため、使っているExcelのデータも違うものでした。同じことを行うのに過程が違うというのはいつか改善したいと思っていたものの、20年以上同じ運用を重ねているなかで現場のアレルギー反応が起きないか非常に心配していました。
Hacobu 関口: 森さんにお話を聞けば聞くほど、国立と北関東では業務が全く違うことがよくわかりました。これまでの業務フローを変えるという点で、森さんにはご苦労をかけたと思います。森さんが要件定義のなかで想像力をはたらかせて現場にフィットするアイデアを出してくださったことで、国立と北関東のどちらにもうまく噛み合うようなシステムになったと思います。
我々としても実際に配車業務を行う人の感覚をより深く知るために、Hacobu社内の配車経験者にも意見を聞き、必要な情報を整理しました。早い段階でデモ画面をつくり、実際のディスプレイで触ってもらいながら改善を重ねました。国立と北関東では、スポット車両の比率や運送会社との契約・支払いパターンも異なります。両拠点が開発段階から参加したことで、一方に合わせるのではなく、双方の良いところを取り入れられました。

Hacobu Solution Studio 関口淳、清水昭博
齋藤様: もうひとつ難しかったのは、データがつながった後の業務フローを描くことでした。物流業務は知っているので、今ある業務を説明することはできる。しかし、それをシステムでどう改善してどんな業務にするのが良いのかは、Hacobuさんの協力がなければ描けませんでした。
これまではデータが分断されていたからこそ、人が判断して柔軟に処理できていた部分があります。キャンセルや車番変更が起きたときにどうするかなど、システム上で整合性を取るためのルールをひとつずつ決める必要がありました。
輪千様: 現場の抵抗感を減らすため、今の実務にできるだけ合わせることを大切にしました。特に配車台帳は、50台ほどの状況を紙1枚で俯瞰し、車両ごとの拘束時間や工程のバランスを見ながら判断する重要な道具です。画面で同じように見られるのか、上下左右のスクロールが多すぎないか、どのサイズ・解像度のモニターなら使いやすいかを早い段階から議論しました。
大切にしたのは、全てを自動化しないことです。配車では、積み込みの遅れやドライバーの拘束時間、協力会社との調整など、日々さまざまな変更が生じます。そうした状況に応じて人が判断・調整する余地は残しながら、情報の管理や蓄積、請求・支払いにつながる事務処理はシステム化する。現場の柔軟性と、データ管理の正確性・効率性を両立することを目指しました。
Hacobu 清水: 人手で行う作業は、そのときどきで「工夫」ができます。一方でシステムは一定のルールに従わせる必要がある。これまで鴻池運輸さんの現場で培われてきた業務をうまく取り入れるために、柔軟性・使いやすさ・覚えやすさを大切にしました。
システムは、開発しても使われなければ意味がありません。汎用性を高めることは技術的には可能でも、現場が使い続けられるシステムにするためにある程度シンプルにするという判断が必要だったと思います。
拠点を越えて情報をつなぎ、協力会社にも価値を広げたい
Q.今後の展望を教えてください。

東日本支店 国立流通センター営業所 所長 安田忠愛様
安田様: メンバーが開発プロジェクトをけん引してくれて頼もしく思っていました。これから現場に運用が浸透することを期待しています。
データが整備され収支管理が精度高く行えることは業績管理にもつながります。国の制度や法律が変わったときにはまた見直しが必要になると思うので、そのメンテナンスも含め、うまく運用していきたいです。
輪千様: 今後は、協力会社様向けの改善も進めていきたいです。具体的には車検証や免許証の管理を考えています。協力会社様がシステムのなかにアップロードできるようになれば、我々の管理や安全面の向上にもつながります。
さらに、国立と北関東だけでなく同じ荷主企業の輸配送業務を担う他拠点にも広げることで、同じ貨物情報を見ながら調整したり、空車情報をリアルタイムで共有したりできるようにしたいです。電話や口頭で確認するのではなく、画面を見て「この空車なら使える」「この貨物を引き受けられる」と判断できる状態が理想です。
齋藤様: 要件定義のなかで、特定の荷主企業だけでなく、さまざまなお客様や貨物を扱う他の営業所でも使える汎用性を意識してきました。この新システムを社内の別事業へも広げていきたいです。
MOVO Berthなどの予約システムとの連携も進めたいですね。車両や時間、協力会社の情報をこのシステムから連携できれば、複数のシステムに何度もログインして入力する手間を減らせます。今回で終わりではなく、これから育てていくシステムだと考えています。
強度の高い議論を重ね、現場で使える仕組みを形に
Q.プロジェクトを振り返っていかがでしたか?
安田様: Hacobuさんと当社のメンバーでしっかり議論してくれていたことが印象的でした。以前別のシステムベンダーと違う領域のシステム開発を行ったことがありましたが、その時はなかなかお互いの認識がそろわず苦戦したことをよく覚えています。Hacobuさんが現場を見て提案してくれているという安心感がありました。
輪千様: 難しかったのは、業務をシステムに落とし込んだとき、どこにリスクが生まれ、その先にどう影響するかを洗い出すことでした。会議で出た課題を持ち帰り、どう解消するかを考える。そこをHacobuさんに補ってもらいました。
原様: デジタルとはかけ離れた作業をしていたので、何ができて何ができないのかも分からない状態でした。できる限り現場のことを伝え、その意図を汲み取って形にしてもらえたことがありがたかったです。
森様: システム化の話は過去にも何度もありましたが、構想を話しては流れていくということが続いていました。今回は北関東の現場にも来てもらい、当社だけで使っているような物流用語まで理解してもらえたことで、話がスムーズに進みました。ようやく実現できるという期待がありました。
齋藤様: 通常業務を続けながら密なスケジュールで会議を重ねるのは大変でした。それでも、とことんこだわり、膝を突き合わせて意見を出し合えたと思います。生みの苦しみはありましたが、それに見合うものができたと実感しています。
Hacobu 関口: 鴻池運輸の皆さんが、当初から積極的に意見を出し、やりたいことを熱く語ってくれたことをよく覚えています。まだ要件定義が始まる前だったにもかかわらず、「このプロジェクトはうまくいくな」と確信していました。
Hacobu 清水: 雰囲気が良いだけでなく、強度の高い議論ができたプロジェクトだったと思っています。多くのインプットをいただけたからこそ、現場に合うシステムを形にできました。