アナログによる非効率、属人化、残業発生…輸送手配・庫内作業業務でも課題が山積
Q.MOVO 導入前の課題を教えてください
吉村様: 現在、物流2024年問題への対応として、「荷待ち・荷役時間の2時間以内ルール」が話題になっていますが、東ソー物流では2年前から独自に調査を行っていました。調査によってかなりの荷待ち時間が発生していることが判明し、対応が必要な状況でした。
藤巻様: 調査を進める中で、荷待ちだけでなく、輸送手配や庫内作業においても課題が見つかりました。
輸送手配書を協力会社に送付し依頼を確定しますが、紙・FAXなどアナログな手法で行われていたため非効率で、業務が属人化していたのです。
真辺様(茨城営業所長): 輸送手配が確定したのち、協力会社の車両は荷物を取りに倉庫に向かいますが、倉庫では日常的に3~4時間の荷待ち時間が発生していました。倉庫では、車両が到着しても現場の作業準備が整っておらず、すぐにバースに誘導することができません。車両入場時間が予測できず十分な事前準備ができないため、作業が後手になり、結果、庫内作業員の時間外労働が避けられない状況でした。
Q.どのように課題を解決しましたか?
藤巻様: これらの課題を解決するため、2つの取り組みを進めました。1つ目は協力運送会社への紙・FAXでの依頼を電子化すること、2つ目はバース予約システムの導入です。具体的には、MOVO VistaとMOVO Berthの導入です。
輸送手配はすべてMOVO Vistaを通じて行えるようになり、以前は印刷したものをFAXで送付していましたが、現在はPCで全ての手配作業が完結します。
MOVO Vistaで輸送依頼を受けた協力運送会社は、MOVO Berthで入場予約を行います。倉庫の庫内作業員は、各現場でタブレットを使って予約状況を確認し、どの車両が何時に入ってくるかを把握できます。
吉村様: 配送依頼の電子化とバース予約システムの導入の2つを取り組みとして進めたことが奏功したと思います。
協力運送会社への依頼が電子化されることで、その依頼内容の情報がそのままMOVO Berthの予約手配に引き継がれることになります。それにより、協力運送会社が予約手配する際に情報を入力する手間が省けます。また、当社でも何時にどの荷物を取りに来るかの情報を正確に把握することができます。電子化によるメリットは輸送手配の業務効率化や属人化解消だけでなく、輸送手配に続く予約手配や車両受入にも効果があると感じました。
荷待ち、アナログな輸送手配、庫内作業の非効率を別の課題として捉えていましたが、MOVO VistaとMOVO Berthの導入により、これらの課題解決が繋がっていることを認識しました。
物流現場のDX化で、荷待ちほぼゼロ、紙の削減、時間外労働の削減とみんなが喜ぶ倉庫に。今後は運送会社の脱FAXにも貢献
Q.MOVO導入の成果を教えてください
藤巻様: MOVO Vistaにより、輸送手配でのFAX使用が廃止され、月約400枚の紙を削減することができました。また、MOVO Berthにより、荷待ち時間はほぼゼロになりました。導入前は、半数以上の車両で荷待ち時間が2時間を超えていたので、月換算で1,250時間以上の荷待ち時間が削減されたことになります。
真辺様(茨城営業所長): 倉庫現場では、車両の到着に合わせて先回りして準備ができるようになり、時間外労働の削減にもつながりました。また以前は、入場受付後、準備が整うまで車両で待機するドライバーに対して、事務所から電話で接車案内をしていました。導入後はフォークリフトに装着したタブレットで呼び出すとドライバーに通知される仕組みになりました。これにより、事務所からの電話連絡が不要になりました。また定性的ではありますが、荷待ち時間の短縮によりドライバーのストレスが軽減されていると思います。以前は、荷待ち時間が長いため帰ってしまうドライバーもいましたが、いまは「予約が取れたことで待たずに作業ができて良い」との声もいただいています。
Q.協力会社への導入はスムーズでしたか?工夫されたこともあれば教えてください
藤巻様: 輸送手配では、初めの1ヶ月間はFAXを併用し、MOVO Vistaへの切り替え時に手配漏れがないことを確認しながら進めましたが、想定よりもスムーズに移行できたと思います。
前田様(茨城営業所): MOVO Berthでは、特に年齢が高いドライバーの方への運用定着には注意を払い、現行業務からの変更で混乱が生じないよう慎重に対応しました。当初は予約をせずに入場する車両もありましたが、協力運送会社に丁寧に説明することで、徐々に改善していきました。
Q.今後の展望を教えてください
吉村様: 配送依頼の電子化とバース予約システムの導入の2つの取り組みをさらに進めていきます。配送依頼の電子化は、協力運送会社からの情報の電子化(脱FAX)を進めたいと考えています。東ソー物流から協力運送会社へのFAXは廃止されましたが、協力運送会社からの情報はまだFAX運用が残っています。既存のシステムの改修が必要となりまだ実現できていないですが、道筋は立っていますので、MOVO Vistaで協力運送会社の脱FAXにも貢献していきたいです。
バース予約システムの導入については、既に検討を進めていますが、他の営業所にもMOVO Berthの導入を拡大し、全体の効率化をさらに推進したいと考えています。
「意義ある効果」と荷主も評価。荷主との連携で更なる改善を
Q.ロンシール工業様は今回の取り組みをどのように評価していますか?
ロンシール工業 織田様: 私たちから見ても、非常に意義のある効果が出ていると考えています。まず輸送手配の電子化は、業務効率化だけでなく、輸送状況がデータで可視化され、深い洞察ができるようになりました。荷待ち解消について、待機料の請求リスクがなくなったことはひとつの成果ではありますが、ドライバーさんや近隣住民、環境を考慮した取組みができたことを評価しています。私たちも東ソー物流様に任せきりにせず、どのような改善ができるのか、両社で密に連携し、協力していきたいと考えています。
今回の取り組みは、ロンシール工業のCSR活動の一環として社内外にも発信していく予定です。物流の効率化や、ドライバーさんや庫内作業員の方の労務改善、省エネ・省資源・CO2の排出量削減といった環境への配慮、そしてSDGsの観点でも貢献度が高い活動として評価しています。
また、ロンシール工業と東ソー物流の間のやりとりの電子化を進めたいと考えています。ロンシール工業でシステムから紙に出力したものを東ソー物流がまたシステムに手入力する、FAXでやりとりするといった作業もまだ残っています。これらの作業を電子化により効率化していく予定です。加えて、荷主と物流事業者間でデータを共有することで、更に物流の動きを深く洞察できるようになるのではないかと期待しています。このような物流ビッグデータの活用は、Hacobuさんからも様々なご提案をいただければと思います。