「運ぶを最適化する」をミッションとして、企業間物流の最適化を目指す株式会社Hacobu(ハコブ、本社:東京都港区、代表取締役社長CEO 佐々木太郎、以下「Hacobu」)は、第三者割当増資を通じて総額約9.4億円の資金調達を行ったことをお知らせいたします。これを機に、Hacobuは社会課題解決に賛同するステークホルダーとのパートナーシップを強化すると共に、アプリケーションの開発・販売にかかる人員の増強、物流ビッグデータ分析基盤の強化にかかる人員の増強、物流業界初となるビッグデータ・ガバナンス体制の立ち上げ及び運用等の施策を推進し、物流ビッグデータ活用に向けた体制強化を推進します。
資金調達の背景
物流業界は、トラックドライバーの人手不足に陥っている一方で、企業間のやり取りが電話やFAX、紙帳票などの非効率なツールが中心になっており、DX(デジタルトランスフォーメーション)による業務の効率化が急務となっています。Hacobuはそうした企業間(発着荷主、物流企業、運送会社)のやり取りや物流現場の業務をデジタル化するアプリケーション群「MOVO(ムーボ)」を提供しています。事業者・業界の垣根を超えた「モノと車両と場所」にかかわる物流情報をビッグデータとして蓄積し、物流全体が最適化された持続可能な社会を目指しています。
Hacobuでは現在4つのアプリケーション(トラック予約受付サービス MOVO Berth、動態管理サービス MOVO Fleet、流通資材モニタリングサービス MOVO Seek、配送案件管理サービス MOVO Vista)を提供しており、メーカー、小売、物流企業など、500社以上の企業に導入いただいています。
現場での長時間労働やCO2排出、在庫廃棄・食品ロス等、物流およびサプライチェーンの最適化を通じてアプローチすべき課題に対して、社会的な注目は年々高まっています。「Solve Social Issues.(社会課題を解決する)」をコアバリューとして掲げるHacobuは、これらの社会課題解決に向けた歩みを加速させるため、ステークホルダーとの連携強化および事業のさらなる成長を目的として、今回の資金調達を実施する運びとなりました。
Hacobuの目指すData-Driven Logisticsデータドリブン・ロジスティクス™について
「MOVO」の導入企業の広がりとともに物流ビッグデータの蓄積が進んでいます。Hacobuはこの個社の枠を越えた物流ビッグデータを分析・活用し、物流業界に還元することでサプライチェーン全体の最適化を図っていきたいと考えています。
物流の最適化には、個社内に閉じた取り組みだけではなくサプライチェーン内のステークホルダー間での調整が必要ですが、複数のステークホルダーで議論する際にはデータが不可欠です。Hacobuは、担当者間の属人的なつながりだけに頼るのではなく、データを基盤とした議論が行われる事によって、業界や会社の枠を超えた物流の協調が大きく進んでいくと考えます。また1つの会社内でも物流部と他部署が建設的な議論をするために、データがあると本質的な課題の抽出と部署間での連携が進みます。データがあることにより、事実を共有し、事実を見つめなおし、建設的な解決策を考え、新しいロジスティクスの在り方を考えていく、そのようなロジスティクスの世界を「Data-Driven Logisticsデータドリブン・ロジスティクス™」と定義し、Hacobuはその実現に邁進します。
資金使途:物流ビッグデータ活用に向けた体制強化
今回調達した資金の主な使途は下記の通りとなります。
(1)アプリケーションの開発・販売にかかる人員の増強
「MOVO」上の既存アプリケーションの機能増強はもとより、物流業界向けの他社サービスとのAPI連携によるプラットフォームとしての成長の加速、新アプリケーションの開発を推進するため、エンジニア、デザイナー、プロダクトオーナーの採用を加速させます。また、お客様の物流DXの推進パートナーとなるセールス、カスタマーサクセス、マーケティング、企画系職種の採用を加速させます。
(2)物流ビッグデータ分析基盤の強化にかかる人員の増強
HacobuではMOVOに蓄積された物流ビッグデータを分析・活用し、業務効率化の提案を既に複数の企業に対し展開しており、抜本的な物流コストの削減や現場の生産性向上に繋がる示唆をお客様に提供することに成功しています。この取り組みをけん引するHacobu Strategies(コンサルティングサービス)の物流DXコンサルタントや、データエンジニア、データアナリストの採用を加速させます。
(3)物流業界初となるビッグデータ・ガバナンス体制の立ち上げ及び運用
Hacobuは、サプライチェーン全体の最適化の実現に向けて、個社の枠を越え、公正性・客観性を確保しつつ物流ビッグデータの活用を進めるために、外部専門家で構成する物流ビッグデータ・ガバナンス委員会を設置いたします。第三者の視点や意見を取り入れ、物流ビッグデータ活用に関するガイドラインを策定、運用する体制を構築してまいります。
物流ビッグデータ・ガバナンス委員会の構成
委員長 國領 二郎氏(慶應義塾常任理事、慶應義塾大学総合政策学部教授政策・メディア研究科委員 経営学博士)
委員 岩田 彰一郎氏(株式会社フォース・マーケティングアンドマネージメント代表取締役社長CEO)
委員 水越 尚子氏(レフトライト国際法律事務所 弁護士)
物流ビッグデータ活用に関するガイドライン(後述)
引受先企業
・JICベンチャー・グロース・ファンド1号投資事業有限責任組合
・NREGイノベーション1号投資事業有限責任組合(野村不動産グループ)
・豊田通商株式会社
・Logistics Innovation Fund投資事業有限責任組合(セイノーホールディングス株式会社をアンカーLPとするSector-Focused Fund)
・SMBC社会課題解決投資事業有限責任組合
・株式会社ダイワロジテック(大和ハウスグループ)※
・三井不動産株式会社※
※既存株主
業務提携契約の締結について
資金調達と同時に、野村不動産株式会社および豊田通商株式会社と、物流業界における公正なビッグデータ活用を通じた社会課題解決と相互の事業発展を目的として、業務提携契約を締結しております。野村不動産株式会社とは物流施設とそれに関わるサービスを活用したオープンイノベーションの推進、豊田通商株式会社とは、物流業界が抱える課題解決やカーボンニュートラル社会の実現に向けて、自動車業界を中心とした物流およびサプライチェーンにおけるビックデータの活用と最適化の実践が中心的な取り組みとなります。
新規引受先各社コメント
JICベンチャー・グロース・インベストメンツ株式会社 プリンシパル 桑原優樹氏
企業間物流においては、荷主・物流事業者ともに大小様々な事業者が数多く存在しているため業務の効率化・標準化が遅れ、労働力の不足やトラック積載効率の低迷など多くの課題に直面しています。Hacobuの提供するクラウドサービスによって企業間物流のDXによる業務効率化・生産性向上が進展し、蓄積された物流ビッグデータを活用した物流の最適化が実現されることを期待しております。
野村不動産株式会社 都市創造事業本部 物流事業部 課長 網晃一氏
当社は、データを活用して業界や会社の枠を超えた物流の改善に取り組むHacobu社の考えに賛同し、共に社会課題の解決に取り組んでいくべく、出資および業務提携を実施いたしました。
当社も、テクノロジーの活用によって物流業界全体が最適化されていくことを目指しております。Hacobu社のサービスや、本業務提携によるオープンイノベーションの取り組みを、当社物流施設「Landportシリーズ」に導入することで、物流ビッグデータの蓄積や活用の普及を図って参ります。また、こういった共創の取り組みを通して、物流課題の解決に邁進して参ります。
豊田通商株式会社 ロジスティクス事業部 部長 遠藤昭弘氏
当社は世界中で物流事業を展開しておりますが、今回Hacobu社というパートナーを得て、共同で国内の輸送最適化に関する事業に挑戦することを決断しました。これまでに培った知見や各種社内リソースを投入し、多業種の荷主企業や物流企業と共に社会課題の解決に貢献すべく、ひとつひとつ愚直に取り組んで参ります。当社が取り組んでいるカーボンニュートラル推進にも大きく貢献できる分野であり、全力で取り組んで参ります。
Spiral Innovation Partners株式会社 プリンシパル 松本泰拓氏
※Logistics Innovation Fund投資事業有限責任組合を運営
この度、物流業界の変革を目指す同志として、ご一緒できることを大変嬉しく思っています。Hacobu社の物流プラットフォームMOVO上で会社横断のビックデータが蓄積、分析されるようになれば、日本の企業間物流の生産性が根本的に改善されると考えております。今後の更なる事業の成長に期待しております。
SMBCベンチャーキャピタル 投資営業第一部 部長代理 森田諒氏
Hacobu社は、荷主・3PL・運送会社、大小様々なステークホルダーが複雑に絡み合う「企業間物流の最適化」という難解なミッションにチャレンジする会社です。以前から指摘されてきた、ドライバーの人手不足や労働環境の改善、積載率の向上といった課題は、コロナ禍で社会課題としてより強く認識されています。弊社もHacobu社が掲げる社会課題の解決に賛同し、その実現を支援して参ります。
Hacobuの物流ビッグデータに関する考え方
Hacobuは、個社の枠を越えた物流に関するデータ(物流ビッグデータ)を活用し、サプライチェーン全体の最適化を図ることにより、持続可能な社会の実現に貢献したいと考えています。サプライチェーンを構成する各ステークホルダーが個別の最適化を行ったとしても、サプライチェーン全体では様々な非効率が発生します。その結果、環境負荷が高くなるだけでなく、労働人口の減少が更に進む日本社会において、これまで当たり前に享受してきた生活レベルを維持できない可能性が高まっています。サプライチェーンの個別最適化から全体最適化へと社会を前進させるためには物流ビッグデータ活用が重要であることは、有識者の共通意見であり、理想の社会モデルとして語られてきました。
同時に、物流ビッグデータ活用について様々な議論が行われていることを認識しています。その中では主に2つの懸念が存在すると理解しています。即ち、①物流ビッグデータ活用によって自社データの秘匿性が損なわれるのではないか、また、②物流ビッグデータをシステムに蓄積する会社が不当に利益を得るのではないか、との懸念です。Hacobuは、2つの懸念を払拭しながらサプライチェーン全体の最適化を実現するために、物流ビッグデータ活用についてのガイドラインを策定し、それを遵守するための体制を構築いたします。
物流ビッグデータ活用に関するガイドライン
1.ステークホルダーとの対話とガイドラインの継続的な見直し
a. Hacobuは物流ビッグデータ活用に関して、サプライチェーン全体の最適化という社会益と ステークホルダーの個社益の両立を目指し て、ステークホルダーの皆様との対話を進めてまいります。
b. ステークホルダーの皆様との対話やビッグデータ活用に関する社会通念の形成や事例の蓄積などを踏まえ、必要に応じて本ガイドライ ンを見直し、継続的に進化させていきます。
2.データ・ポータビリティの確保
a. 会員企業がMOVO プラットフォーム上のアプリケーションを操作することで生成したデータ(1次データ)は、アプリケーション上のデータ・ダウンロード機能を利用して会員企業のローカル環境にダウンロードすることができます。
b. ダウンロードした1次データは、会員企業の裁量で自由に活用することができ、会員企業はHacobuと関係のない第三者に当該1次データを提供することも可能です。
3.1次データ秘匿の保証
a. Hacobuは、1次データを、当該1次データを生成した会員企業の承諾を得ることなく、当該会員企業以外の会員企業や株主、業務提携を行った事業者に提供することはありません。
4.Hacobuの1次データアクセス
a. Hacobuは、利用規約に従って、当該会員企業の1次データにアクセスし、分析を行うことがあります。分析した結果は、当該会員企業のみに提供し、当該会員企業の承諾を得ることなく、それ以外の会員企業や株主、業務提携を行った事業者に提供することはありません。
b. Hacobu社員による会員企業の1次データへのアクセスについては、アクセス権を設定して管理し、業務上必要とする社員にのみアクセス権を付与します。
c. 1次データへのアクセスログを記録していきます。
d. アクセス権を付与された社員がダウンロードしたデータの取り扱いは、ISMS(ISO27001)に準拠します(2019年3月取得済)。
5.ビッグデータ・ガバナンスオフィスの設置
a. 本ガイドラインの運用状況をモニタリングするために、ビッグデータ・ガバナンスオフィスを設置します。
b. アクセスログの分析を含め、本ガイドラインの運用状況のモニタリングを四半期に一度行います。
6.ビッグデータ・ガバナンス委員会の設置
a. 物流ビッグデータ活用が、①社会益に貢献しているか、②特定のステークホルダーに偏在した益もしくは害となっていないか、③社会通念から逸脱していないか、を担保するために、ビッグデータ活用に関する有識者から構成されたガバナンス委員会を設置します。
b. ビッグデータ・ガバナンス委員会は、四半期に一度の定例会議を開催し、ビッグデータ・ガバナンスオフィスによるモニタリング結果をもとに上記3つの観点から検証を行います。
c. 1次データへの不当なアクセスのおそれがあると認められる場合、アクセス状況の詳細把握やデータ流出の可能性の調査をビッグデータ・ガバナンスオフィスに指示し、調査結果に基づき対応策を講じます。
d. Hacobuの物流ビッグデータ活用について、ステークホルダーからの懸念が提示された場合、臨時会議を開催し、対応方針についてHacobuに指針を提示します。
物流ビッグデータ・ガバナンス委員会の構成
委員長 國領 二郎氏(慶應義塾常任理事、慶應義塾大学総合政策学部教授政策・メディア研究科委員 経営学博士)
1982年東京大学経済学部卒。日本電信電話公社入社。1992年ハーバード・ビジネ ス・スクール経営学博士。1993年慶應義塾大学大学院経営管理研究科助教授。2000年同教授。2003年同大学環境情報学部教授などを経て、2009年総合政策学 部長。2005年から2009年までSFC研究所長も務める。2013年より慶應義塾常任理事に就任。主な著書に「オープン・アーキテクチャ戦略」(ダイヤモンド社、1999)、「ソーシャルな資本主義」(日本経済新聞社、2013年)がある。
委員 岩田 彰一郎氏(株式会社フォース・マーケティングアンドマネージメント代表取締役社長CEO)
1986年プラス株式会社入社、1992年新規事業であるアスクルの開始にあたりアスクル事業推進室室長に就任、1997年の同事業分社独立とともにアスクル株式会社代表取締役社長就任、2000年に最高経営責任者(CEO)就任。2019年8月に代表取締役を退任し、2019年9月に株式会社フォース・マーケティングアンドマネジメントを設立し、現職。 2006年より2018年まで株式会社資生堂社外取締役就任。2003年には経済同友会に入会し、2004年度より幹事、2008年度から2012年度まで副代表 幹事を務める。2012年5月より幹事(現任)。
委員 水越 尚子氏(レフトライト国際法律事務所 弁護士)
1992年一橋大学法学部法律学科卒業。1995年弁護士登録。2002年日本マイクロソフト株式会社法務本部を含むIT企業の社内弁護士を経て2018年12月レフトライト国際法律事務所を設立。総務省 情報通信審議会 情報通信政策部会 通信・放送の融合・連携環境における標準化政策に関する検討委員会専門委員、知的財産戦略本部 検証・評価・企画委員会 次世代知財システム検討委員会委員、経済産業省 産業構造審議会 知的財産分科会 不正競争防止小委員会委員を務めた経験を有する。