Hacobu»ニュース»メディア掲載»2017年3月3日(1面および6面)、6日(6面)付日刊CARGOの「物流羅針盤」というコラムにおいて、「Hacobu(上)|ITで荷主・運送業者マッチング 荷主ターゲットが特徴」「Hacobu(下)|オフラインの需給調整解決」というタイトルでHacobuの代表取締役・佐々木太郎のインタビューが取り上げられました。

2017年3月3日(1面および6面)、6日(6面)付日刊CARGOの「物流羅針盤」というコラムにおいて、「Hacobu(上)|ITで荷主・運送業者マッチング 荷主ターゲットが特徴」「Hacobu(下)|オフラインの需給調整解決」というタイトルでHacobuの代表取締役・佐々木太郎のインタビューが取り上げられました。

Hacobu佐々木太郎代表取締役社長CEO
ITで荷主・運送業者マッチング

Hacobuが提供する「MOVO(ムーボ)」は荷主と運送事業者をマッチングするシステムだ。欧米では「フレート・ブローカー」(Freight Brokarege)がIT活用でマッチング事業を手掛けており、スタートアップからも関心が高い。同社は荷主をターゲットとする点に特徴があり、将来的には日本と海外を結ぶ一貫ソリューションも視野に入れる。人手不足が叫ばれる中、ITをベースとする物流スタートアップとして日本の物流をいかに改革していくのか。佐々木太郎代表取締役社長CEOに聞いた(文中敬称略、聞き手・井上昭憲)。

 

ーー物流マッチングシステムを提供するスタートアップは海外でも増えている。

佐々木 陸運の市場構造は米国と日本はかなり似ている。市場規模は米国が20兆円、 日本が13兆円。大手企業が数社あり、大半は中小企業が占める。米国には古くから、荷主と 運送事業者に対して輸送仲介事業を提供する「フレート・ブローカー」が多くあり、市場規模 も大きい。

私の考えでは、同市場ではこれまで、新規参入の波が2度あった。1度目は2006年から07年頃、ウェブベースで荷主用の管理ソフトウェアおよび運送業者用の運行管理ソフトウェアを提供する企業が事業規模を拡大した時期だ。コヨーテ・ロジスティクス(本社=シカゴ、15年にUPSが買収)、TQL(シンシナティ)、エコー・グローバルロジスティクス(シカゴ)らが有名だ。

第2の波は15年頃から始まり、現在に至る。ウーバーの「Uber for trucks」で知られるように、アプリで荷主と運送事業者をマッチングするビジネスだ。カーゴマティック(ロングビーチ)、トランスフィックス(ニューヨーク)、コンボイ(シアトル)らが有名だが、一部では人員削減も言われている。第一の波は成功し、第二の波はまだ成功したとは言い切れない。アプリだけのビジネスは厳しいということで第一の波に戻る動きもある。

 

ーー日本はどうか。

佐々木 日本では古くから「求貨求車」「水屋」と言われる業者・業態があり、現在でも、電 話やファックスで荷主と運送事業者の仲介が行われている。われわれは、米国で言う第一の波 の仕組みを考え、プラットフォームを提供する。

2015年8月に創業して以降、まず、運送事業者向けに運行管理の仕組みを提供してきた。 具体的には、運送事業者に対して車両に搭載するIoT(モノのインターネット)端末を提供 する。それにより、トラックの現在位置、運行ルート、作業情報などがダイレクトにわれわれ のクラウドに集まる。現在、パートナーは100社ほどだ。

一方、昨年11月中旬から荷主の貨物を運んでもらうよう、運送事業者との仲介サービスを始めた。立ち上がりは非常に良い。依頼を頂ければすぐに車両を見つけられると好評を頂いており、売上高は毎月50%ほど成長している。

 

ーーターゲットは。

佐々木 運送事業者はまず、関東圏だ。車両数は多い会社で50台、平均して30~40台規模の 中小がメーン。大手運送業者にもフリーの車両も利用している。大手の場合、車両台数の8 ~9割は定期便に活用しているが1~2割は物流の波動を吸収するためにバッファとして確保 している。そこも使わして頂いている。

 

ーー当面の目標は。

佐々木 売上高では18年に25億円を目指す。また、20年ごろまでに、パートナーのトラック 台数を数万台に増やしたい。現在、パートナー100社のうち、実際に輸送している会社は約 50社、利用台数は約1000台だ。現在は関東圏で集荷し、全国配送しているが、パートナ ーを増やし、ネットワークを拡大していく。拠点拡大により、幹線輸送も支援できると考えて おり、IT企業として利便性の高いシステム開発を進め、利用者の業務、経営に資するソリュ ーションを提供していく。

 

荷主ターゲットが特徴

ーー荷主のニーズは。

佐々木 われわれの特徴は荷主をターゲットとしている点にある。荷主の貨物ニーズを受け、 配送車両とマッチングしている。荷主をつかむことが非常に重要と考えており、営業も荷主中 心だ。荷主用のシステムも開発しており、荷主は物流の高度な専門知識がなくても利用できる 。荷主は一部大手もいるが、中小が多い。物流専任担当者がいない荷主から業務をアウトソー スして頂く考えだ。

荷主が車両を探す場合、例えば、メーカーの物流子会社が手掛けているケースがある。実際的には属人的な世界であり、業界が長いベテランであればすぐに車両を探せるものの、新人では困難という。われわれのシステムを利用すれば、幅広いネットワークから車両を見つけることができ、無駄な時間も削減できる。

 

ーーフォワーダーの利用はどうか。

佐々木 一部で依頼もある。例えば、輸入貨物の通関が遅れ、荷主からは割高となるがトラッ クのチャーター便で届けて欲しいというものだ。そうした緊急時の車両手配もある。また、大 手外資フォワーダーからも話を頂いている。日本国内では自社の配送ネットワークがあり、平 時は問題ないものの、物量が急増した際の対応を考える必要があるという。また、一歩踏み込 んで、彼らの自社車両の運行管理自体を当社のプラットフォームでできないかという提案も行 っている。一部のエクスプレス会社にも話はしている。

 

ーー欧米や一部のアジア物流先進国では国際物流も含めた物流 スタートアップが多く出ている。

佐々木 日本でも、もうすぐに出てくるかもしれない。ようやく、スタートアップでもロジス ティクス領域が注目を集め出しており、ベンチャーキャピタルらも資金を出しつつある。当社 の資本金は2億5000万円。出資会社はアスクル、ヤフージャパンのCVC(投資子会社) 、SMBC、大阪ガス子会社のオージス総研、孫正義氏の弟である孫泰蔵氏のファンドなどだ。この1、2年で日本でも物流スタートアップはさまざまに出てくるだろう。

 

ーー課題は。

佐々木 物流業界は外部から何が行われているのかが分からない。特にBtoBはブラックボックスであり、スタートアップの中心であるIT(情報技術)関係者には、参入へのハードルが高い。私はたまたま、コンサルティング会社在籍時に物流会社のコンサルを手掛けた経験があるため、物流業界を知ることができた。普通に生活をする中で、ロジスティクス領域で物流スタートアップをやろうとは誰も思わないだろう。

もうひとつの課題は、物流業界の方々はITに疎いことだ。ITを使用して何かビジネスを考えようという人材がいない。その2点が大きな課題だ。ただ、海外では自動運転、ロボット、ドローンだけでなく、ソフト、アプリ、システム面でロジスティクス領域がスタートアップに注目されており、これから日本でも関心は高まっていくだろう。

 

ーー海外とのサービスは。

佐々木 フォワーディング領域は面白い。最終的な目標は、例えば、ロサンゼルスのウエストローンアベニューから東京の浜松町に洗剤を20箱、送りたいという際、当社のシステムに情報を入力すれば、最適な利用事業者が複数出てくるようにすることだ。ホテル探しや旅行領域ではすでに実現しているシステムであり、フォワーディング、ロジスティクス領域でも、物流横断的な情報を提供していきたい。

 

オフラインの需給調整解決

ーー日本国内ではトラックドライバー不足が課題だ。

佐々木 その問題を解決したいと強く考えている。年末商戦で忙しい昨年12月、荷主からは車両が全然、見つからないとの声が聞かれた。ただ、運送事業者に聞けば実は結構、トラックはあった。

「ドライバー不足」と言われる一つの原因は、荷物と運送会社の需給調整が完全に”オフライン”で行われているためと考えている。そこを、オンラインで中央集中的に管理することで、配送車両の積載率を上げ、ドライバー不足の解決にもつなげる。一般的に積載率は50%と言われるが、いかに貢献できるかを考える。

 

物流業界として解決していく必要がある。

佐々木 課題解決のもう一つは「価格の適正化」だ。中小の運送事業者が自ら荷主に営業すれば、どうしても価格を叩かれる。ただ、現実的には車両を何とか貨物で埋めたいと考え、安い値段で引き受けてしまう。ドライバーの賃金は安くなり、外部に魅力が伝わらないことから、人手不足となる。われわれが荷主から仕事をどんどん獲得し、交渉力をついていければ、需給ひっ迫時には高く、余裕がある際は安くと、適正化も図れる。そうした環境作りを意識していかなければ、人手不足が慢性化し、やがて貨物は動かなくなるだろう。昨年12月、特に宅配便の世界は破たんしていた。

 

ーー荷主が物流を真剣にとらえてない姿勢も問題ではないか。料金を安く抑えるだけが物流の仕事と考えている節もある。

佐々木 そうだろう。国際物流では荷主がフォワーダーに業務を丸投げしている。また、国内物流部門の担当者にわれわれのサービスを説明しても、現在、どのような車両で自分たちの貨物が運ばれているかさえ、把握していないケースがある。そのような状況では、荷主自身で物流をコントロールできない。経営層から費用削減が指示された際、彼らとしての物流改革は運賃値下げ交渉だけとなる。

 

ーー荷主も人材不足だ。

佐々木 最近、外資アパレル会社と話す機会があった。物流をアウトソーシングしていた部分を内製化するそうだ。米国の会社は基本的にそういう考えであり、物流を見える化し、自らコントロールしているという。荷主の物流担当者も非常に優秀であり、MBA取得者や日本語と英語ができる人材がいた。米国本社から、このような条件の人材を日本でもどんどん採用して欲しいと言われているようだが、適した人材がまったくおらず苦労しているようだ。

 

ーーどうすればよいか。

佐々木 優秀な人材自体はこれから集まる可能性もあるだろう。IT業界にもいた経験から言えば、物流業界とのアナロジーがある。2000年代前半、IT業界では、いわば窓際族が企業のIT関連部門に配置されていた。企業にITに精通した優秀な人材がいなかったこともあり、大半の業務はベンダーに外注し、多額の費用を払っていた。Iただ、この10年近くで、企業の中でもIT部門に優秀な人材が配置されるように変化した。ロジスティクス領域でもある変化の兆しはある。ロジスティクスが企業の生命線であることを企業がようやく分かってきたのではないか。変わっていく可能性はあるだろう。