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次世代リーダーが異業種で挑む、データ駆動型の物流改革

物流の効率化が求められる中、「共同輸配送」が有力な解決策として注目を集めています。

2025年1月24日に開催された「Hacobu Innovation Day」では、キリンビバレッジの森本 貴一氏と、日本製紙の庄司 健一郎氏が登壇。モデレーターを務めたHacobuの大谷 草太を交えて、データを活用した異業種間での共同輸配送の可能性について議論を交わしました。

データ駆動型の共同輸配送とは

キリンビバレッジのサプライチェーンについて、森本氏は次のように説明しました。

「キリンビバレッジは、全国の工場で飲料を中心とした商品を製造し、全国へトラック・鉄道・船などで輸配送を行っています。特に首都圏への輸配送では、復路の荷量が往路より少なく、さらに効率化の余地があると考えています」

キリンビバレッジ SCM部 企画担当 主務 森本 貴一氏(左)

一方、紙製品の生産を軸に、エネルギー事業やレジャー事業などを行う日本製紙。北海道から熊本県まで13工場1事業所を展開しており、庄司氏は次のように語ります。

「紙製品の荷物形状は、大きな紙をロール状に巻いた『巻取』と、カットした紙をパレットに乗せた『平判』の2つに大別されます。日本製紙は往路での製品出荷、復路での古紙回収という循環型の物流を行っていますが、今後の古紙回収量減少を見据え、新たな復路活用方法を模索し、さらなる物流効率の向上を目指しています」

日本製紙 営業企画本部 物流部 庄司 健一郎氏(右)

両社が共に参画しているのが、Hacobuが2024年8月に創設した「物流ビッグデータラボ」です。ここでは、蓄積された物流ビッグデータをもとに、複数企業での共同輸配送を検討中です。

Hacobuが提供するトラック予約受付サービス「MOVO Berth(ムーボ・バース)」や、配車受発注・管理サービス「MOVO Vista(ムーボ・ヴィスタ)」には、トラックの発着地点や日時といった情報が日々蓄積されています。これらのデータをもとに、共同輸配送ができる可能性のあるルートを抽出し、議論を重ねています。

Hacobu カスタマーサクセス統括部 統括部長 大谷 草太

物流ビッグデータラボについて、庄司氏は次のように評価します。

「キリンビバレッジ、日本製紙の両社ともにMOVOを活用しているため、週間の運行量やルートの距離まで、共通のフォーマットで詳細に確認できます。そのため、議論が非常に進めやすいです」

異業種協働が広げる可能性

森本氏は異業種協働の魅力について、こう語ります。

「異業種の方々と直接議論を行うことで、多様な提案やアイディアを交換でき、刺激になります」

庄司氏も「生産拠点や輸配送ルートは業界によって特徴が異なるため、組み合わせの選択肢が広がります」と、異業種協働の価値を指摘しました。

現在、物流ビッグデータラボには6社が参加していますが、長期的にはさらに多くの企業が参画する可能性があります。

「データを組み合わせる範囲が広がれば、業界の垣根を越えた価値を創造できるはずです」(森本氏)

一方で庄司氏は、データ活用の意義を認めつつも、現場の負荷や企業間の信頼関係を考慮することの重要性を指摘します。

「データはあくまでも手段です。共同輸配送を実現していくうえでは、現場との連携や企業間の調整が不可欠になります」

森本氏も、「物流危機に立ち向かうリーダーシップが、今後さらに重要になるでしょう。自分もその一人として仲間を増やしていきたいです」と意気込みを語りました。

物流ビッグデータの活用は、まだ緒に就いたばかり。しかし、業界の枠を超えたパートナーシップとテクノロジーの組み合わせが、物流の未来に新たな可能性を示しています。