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「あずきバー」を支える冷凍倉庫で、車両増でも待機減――効率化で生まれた余裕をドライバーへの気配りに

導入製品
MOVO Berth
会社名
井村屋株式会社
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「あずきバー」や「肉まん・あんまん」で知られる老舗食品メーカー・井村屋株式会社。三重県津市にある複合冷凍倉庫「アイアイタワー」では、全国に向けて冷凍商品を出荷しています。需要変動への対応と厳密な温度管理が求められる現場で、同社は「待機時間の削減」と「庫内作業の可視化」を目的に、トラック予約受付サービス「MOVO Berth(ムーボ・バース)」を導入しました。今回は、ISCMセンター 副部長 兼 SCMチーム長 大川博之様、同センター アイアイタワー物流チーム チーム長 友枝貴行様、同チーム 中西峰崇様に、導入の背景や運用の工夫、そして導入後の成果についてお話を伺いました。

導入前の課題
  • 先着順のため、準備が後手で非効率かつ長時間待機が発生
  • 紙の受付票をExcelへ転記、煩雑な集計業務による残業の発生
  • 作業開始時間や車両情報が見えないことによる現場の混乱とストレス
導入後の成果
  • 待機時間を3割削減し30分以下に、作業効率も大幅に向上
  • 事務作業をデジタル化し、残業をほぼゼロに
  • ドライバーのストレス軽減と現場のゆとりを創出
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冷凍倉庫の待機と混乱を解消 見えない現場を変えたかった

Q. MOVO Berth導入の背景や導入前の課題を教えてください

大川様: 導入の大きなきっかけは、「2024年問題」への対応です。ドライバーの労働時間がより厳格に管理されるようになる中で、先着順での受付運用では対応しきれなくなることが明らかでした。特に冷凍倉庫では、荷積み前に庫内準備や車両の予冷が必須です。そのため、トラックが到着してから準備すると、どうしても30分から2時間ほどの待機が発生していました。

1日平均25台ほどが出荷のために訪れますが、現場ではどの運送会社がいつ来るのか見えず、先の段取りを組むことができない。結果的にドライバーにも庫内スタッフにも負担やストレスが生じていました。特に夏から秋にかけての繁忙期は、アイスクリームの出荷ピークと肉まん・あんまんの製造が重なるため、混乱が顕著でした。

ISCMセンター 副部長 兼 SCMチーム長 大川博之様

中西様: 導入前は紙の受付表を使ったアナログな運用でした。ドライバーの方に紙の受付票へ「会社名」「車番」「行先」などを手書きで記入してもらい、ファイルで管理していました。現場の担当者がその紙を確認しながら呼び出しを行い、作業が終わればまた別の表に記入、1日の最後にそのデータをExcelに転記して集計する、という流れです。これが非常に手間で、毎日の作業終了後に1時間ほどの残業が発生していましたし、月末の集計にも時間がかかっていました。

友枝様: さらに、同じ行き先の便が複数ある場合、ドライバー自身も「自分がどの便を担当しているのか」がわからないことが多かったのです。そのたびに電話で確認したり、庫内を走り回って探したり。情報の曖昧さが現場全体の非効率につながっていました。

冷凍品は温度管理が命です。車両がいつ来るかわからない状況では、準備を前倒しすることもできず、庫内作業は常に後手に回っていました。MOVO Berthを導入すれば、「どの車が・何時に・どんな荷物を積みに来るのか」が明確に見えるようになる。そこに一番期待していました。

自社の運用に合わせられる柔軟性と現場視点の機能が決め手に

Q. MOVO Berthを選択した理由を教えてください

大川様: 複数のシステムを比較検討した結果、決め手となったのはMOVO Berthの「自由度の高さ」でした。自社で管理したい項目を細かく設定できる点が、特に優れていました。

たとえば、「車両を−15℃に予冷したかどうか」といった受付時のチェック項目も自社で簡単に設定・管理できます。また「予約希望時間」と「現場の作業計画」を両立できる点も大きなポイントです。運送会社の希望を反映しながら、庫内作業の効率を損なわないようスケジュールを柔軟に組み替えられるため、当日中に別拠点へ届ける便を優先するといった運用にも対応できます。

こうした多様なルールや管理を、複数システムを併用せずひとつの仕組みで完結できる点は、現場にとって非常に大きなメリットでした。

その他にも、CSVファイルの出力やボタンひとつで開始・終了の操作ができる点、呼び出し機能など、日常業務で助かる機能が充実していました。現場視点で設計されている製品だと感じ、MOVO Berthを選択しました。

予約情報を活かし、庫内作業をスケジュール化

Q. MOVO Berthの活用状況について教えてください

中西様: 運送会社から原則として前日16時までに予約を入れてもらう運用です。当日は、MOVO Berthで予約情報を一覧で確認し、庫内作業のスケジュールを立てています。トラックが遅れる場合はドライバーから連絡が入るので、状況に応じて先着車を先に作業するなど柔軟な対応ができています。ドライバー用の入場タブレットは事務所の入り口に設置しており、ドライバー自身が操作します。以前のように受付で紙に記入してもらう手間もなく、操作もシンプルなのでスムーズです。

物量増加で車両台数が増えても待機は30分以下に削減 ドライバーのストレスも軽減

Q. MOVO Berth導入後の成果を教えてください

友枝様: バース表で可視化されたスケジュールをもとに、「どの時間帯にどれだけの作業が発生するか」を事前に把握できるので、準備が格段にスムーズになりました。事前情報が正確であることが、作業を円滑に進めるうえでどれほど重要かを改めて実感しています。待機場所へ呼びに行く手間もなくなり、現場全体の効率が大きく向上していると感じています。

ISCMセンター アイアイタワー物流チーム チーム長 友枝貴行様

中西様: 受付をMOVO Berthで行うようになってから、Excelへの転記作業が不要になり、事務負担が大きく減りました。以前は業務終了後に1時間ほど残って入力していましたが、今では作業の合間に「確定」ボタンを押すだけで完結します。月末の集計も自動で出せるため、事務作業に伴う残業はほとんどなくなりました。

また、予約時間になったらバースに呼ばれるというルールが明確になったことで、ドライバーのストレス軽減にもつながっています。井村屋の敷地には待機場所が整備されており、あえて早めに来て休憩される方も多いです。「いつ呼ばれるのだろう」と気をもみながら待つよりも、予約時間までは安心して休めるとわかっている方がずっと良い。ドライバーも現場も、互いに気持ちの余裕を持てるようになったと感じています。

大川様: データで見ても、成果は明確です。導入前の平均待機時間は43分でしたが、導入後は30分以内へと約3割削減されました。物量の増加に伴い車両台数が1年で約300台増えているにもかかわらず、待機時間はむしろ短縮されています。効率化が着実に進んでいる証です。

法改正への対応は、単にルールを守るためではなく、ドライバーと会社の双方を守るための取り組みでもあります。予約時間を守り、計画的に作業を進めることで、健全な現場運営ができる。そうした意識を全員で共有し、この文化を現場に根づかせていくことが重要だと考えています。

慣れるまで寄り添い、定着まで伴走

Q. 苦労した点や工夫した点などがあれば教えてください

中西様: 導入初期の一番の課題は、やはり「人が慣れること」でした。社内にはタッチパネルの操作に不慣れな年配スタッフも多く、当初は不安の声も上がっていました。そこでプレオープン期間を設け、実際の業務の中で操作に慣れてもらう時間を確保しました。操作時には私が隣で立ち会い、わからない点はその場でサポート。約2か月で、全員が一人で操作を完結できるようになりました。

また、社内勉強会を開き、MOVO Berthの基本操作や導入の目的を理解してもらう取り組みも行いました。私たちが講師役となって「理解度テスト」も実施し、少しずつ操作への抵抗感が薄れていきました。実際に触れてみると操作はシンプルで、「やってみたら意外と難しくない」という声も増え、自然と前向きな空気が生まれていったと思います。

ISCMセンター アイアイタワー物流チーム 中西峰崇様

大川様: 運送会社向けに説明会を実施しましたが、当初は内容の理解に時間がかかったようで、質問はほとんどありませんでした。実際の運用が始まってから徐々に問い合わせが増え、予約方法に関する具体的な質問を多くいただくようになりました。導入初期は予約率が約40%にとどまっていましたが、運用を重ねるうちに着実に定着。約1年経った現在では予約率が93%まで向上しています。

効率化で生まれた余裕をドライバーと現場のために

Q. 今後の展望を教えてください

大川様: 今後はさらに予約率を高め、より計画的な運用を進めていきたいと考えています。予約外で急にトラックが到着するケースを減らし、すべてをスケジュールに落とし込める状態が理想です。

一方で、現場ではまだ一部に「バラ出荷」が残っています。これをパレット化し、全体の作業効率を高めたいと考えています。積載率を上げるためにバラ積みにしている部分もありますが、ドライバーにとっては負担が大きいのが実情です。パレットの積み替え機械の増設や、パレットのレンタル会社との連携も必要になるため簡単ではありませんが、MOVO Berthの導入によって事前準備に時間を割けるようになった今こそ、前向きに取り組むべき課題だと感じています。

また、今後は我々のような「発荷主」だけでなく、原料を受け入れる調達部門など「着荷主」への導入も考えていきたいです。現在も先着順の運用になっていると聞いており、MOVO Berthを広げていくことで、会社全体として待機削減と構内の整流化をさらに進められるのではないかと期待しています。

友枝様: 今後も運送会社やドライバーへの浸透をさらに進めていきたいと考えています。予約率を一層高めるとともに、より実運用に即したスケジュール設定ができるよう、精度の向上にも取り組みたいです。現在はトラックのステータスが「到着済み」になってから準備を始めていますが、今後はMOVO Berthのデータを活用し、事前準備型の運用へと発展させていく計画です。そうすることで、作業時間のさらなる短縮と現場全体の効率化を実現できると考えています。

中西様: 効率化が進む一方で、ドライバーへの対応が淡泊にならないよう気を配ることも忘れないようにしたいですね。井村屋の商品に最初に触れるのはドライバーの方々です。だからこそ、また気持ちよく来てもらえるような丁寧な対応を心がけていきたいです。MOVO Berthの導入によって生まれた余裕を、人に向けられる時間へと変えていく。それが、次のステップだと思っています。

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