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三菱食品が挑む「輸配送の見える化」──MOVO X-Data 活用によるサステナブル物流の実現

会社名
三菱食品株式会社
導入製品
MOVO Fleet、MOVO X-Data
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Hacobuでは、2025年4月に企業の物流部門の責任者の方々をお招きしたクローズドイベント「Hacobu エグゼクティブモーニングサロン」を開催しました。

本イベントには、三菱食品株式会社 執行役員 ロジスティクス本部長の白石 豊氏と、同社ロジスティクス本部 物流 DX 企画オフィスの倉田 洋平氏をゲストにお迎えし、物流現場における「データ活用」の最前線をテーマに、三菱食品における「MOVO Fleet(ムーボ・フリート)」および「MOVO X-Data(ムーボ・クロスデータ)」の導入経緯や、可視化によって得られた成果についてお話しいただきました。

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「7600 台・16 万店舗」の巨大ネットワークを支える三菱食品の物流体制とは?

白石氏: 三菱食品は、食品や飲料などの卸売を全国で展開しており、仕入先は約 6,500社、納品先店舗数は約 16 万店舗にのぼります。全店舗に自社物流で納品しているわけではありませんが、非常に広範なネットワークを有しているのが特徴です。

配送体制としては、全国に 376 の物流拠点を構え、約 400 社の物流パートナーと連携し、合計 7,600 台の車両を活用しています。うち、約 109 拠点・3,000 台に MOVO Fleet を導入し、配送データの可視化を進めてきました。

倉田氏: MOVO Fleet は、シガーソケットに端末を差し込むだけで車両の稼働状況を把握できるソリューションです。導入以降、日々の走行軌跡、滞在時間、配送ルートなどの定量データが自動で取得できるようになりました。これが改善活動の大きなベースになっています。

なぜ三菱食品は“見えない物流”に投資したのか?

白石氏: 2022 年度、SCM 部門の最高責任者である SCM 統括の直轄組織として「物流 DX推進オフィス」を開設し、私が室長を拝命しました。その際に最も強く感じた課題は、「自社の輸配送の実態が把握できていない」ということでした。物流を変革するには、まず事実を知ることが欠かせません。

現 CLO(Chief Logistics Officer)である田村からは、「デジタル化は手段であって、真の目的は会社そのものを変えること」と示され、私自身も DX の本質をそこに見出すようになりました。

可視化に取り組むことは、短期的なコスト削減をゴールとするのではなく、長期的で持続可能な物流体制の構築をゴールとする「サステナブル投資」であると位置づけました。その為に物流改善のベースとなるデータ取得は今やらなければならない重要課題でした。
その方法として「MOVO Fleet」を選んだ理由は、各拠点に無理なく展開できるからです。複数の TMS(Transport Management System)を比較検討した結果、ドライバーに対して特別な操作説明が不要で安定したデータが取得できるという観点から、輸配送管理システムを「MOVO Fleet」に一本化しました。

改善のヒントはデータの中に 可視化から最適化へ

白石氏: MOVO Fleet の導入によって、それまで各拠点の運送会社や担当者しか持っていなかった情報が社内全体で見えるようになりました。これまでは拠点ごとの配送効率化の取り組みを中心にしてきましたが、拠点をまたいだエリア全体の配送効率化の取り組みができるようになりました。

倉田氏: 1 つ目の事例として、あるスーパーマーケットチェーンに対する配送において、店舗によって配送車両の平均滞在時間にばらつきがあることがわかりました。最も長い店舗で 168 分、最も短い店舗では 23 分と、145 分の差がありました。

滞在時間が長い店舗では、店舗書類の回収に時間がかかっていることがわかったため、店舗と協議し書類を回収する頻度を週 5 日から週 3 日に集約することで、年間 95 時間の削減につながりました。

2 つ目のケースは、搬入口から複数の箇所に荷降ろししているためにドライバーの滞在時間が長くなっている店舗があり、搬入口から近いバックヤードへの集約に変更することで年間 48 時間の短縮につながりました。

白石氏:こうした改善を加速させるために、2024 年 2 月に Hacobu が提供する「MOVO X-Data」の β 運用を経て、同年 9 月より本格導入を開始しました。「MOVO X-Data」は地理・時間・頻度といった要素から配送パターンを分析し、組み合わせの候補をシステムが提案してくれます。

年間 1,700 台分の稼働を最適化

倉田氏:  3 つ目に、午前だけ稼働する拠点 X の車両と、午後だけ稼働する拠点 Y の車両を統合し、1 台の車両で両業務を担うようにしました。これにより、車両台数を削減することができました。

4 つ目に、長距離配送の帰り便を別業務で活用し、これまで空車だった時間を有効に使えるようになりました。これも「MOVO Fleet」と「MOVO X-Data」のデータ連携によって見出すことができました。

白石氏: こうした取り組みの成果として、「MOVO X-Data」を活用していない取り組みも含まれますが、年間ベースで 1,700 台分の稼働最適化につながっています。また車両台数を削減しただけでなく、削減した車両は別業務に充てて有効活用しています。1 つの施策で 100%改善できることは少ないですが、小さな改善の積み重ねによって、大きな成果を生み出すことができたのです。

データでつながる企業間連携──X-Data による共創の可能性

倉田氏: 5 つ目の事例は他社も含めた取り組みです。「MOVO Fleet」導入済の B 社と配送データを持ち寄り「MOVO X-Data」で分析することで、同一エリアでの共同配送を実現することができました。お互いの物流拠点が近接していたこともあり、現実的な連携が成立したことも、嬉しい成果です。

また、「MOVO Fleet」未導入の C 社から配送実績を表計算ソフトのデータで提供いただき「MOVO X-Data」で分析を行いました。その結果、共同配送が可能であると判断し、C 社も「MOVO Fleet」を試験導入することになりました。

白石氏: TMS が異なる企業同士では、これまでデータ共有が困難でしたが、「MOVO X-Data」は異なるフォーマットでも取り込みが可能で、共同配送に向けたハードルを下げてくれます。

「MOVO X-Data」で抽出できた課題が 100 件あっても、実際に運送事業者さんと改善までこぎつけられるのはそのうちの 1 割程度です。それでも地道に交渉を重ね、年間ベースで 1,700 台分の車両最適化を実現することができました。
重要なのは、「荷主が最適化したから、車両 1 台分減らせますね」という一方的な話ではなく、「その分の運賃収入をどう担保するか」まで含めて、運送会社と対話していく姿勢だと考えています。

これからは、企業間で物流リソースをシェアし、ドライバー不足や稼働率の問題を解決する時代です。持続可能な物流のために、誰が損か得かという話ではなく、“共に運ぶ”という視点からの共創を進めていきたいです。

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