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荷主50社・サプライヤー30社の海上コンテナのトラック輸送データを一元管理。スピーディな戦略立案で輸送効率の改善へ

更新日:2025年02月10日
会社名
A.P.モラー・マースク
導入製品
MOVO Vista

マースクは、デンマークの首都コペンハーゲンに本拠を置く世界でも大手の海運物流企業です。総合的なロジスティクス企業として、貨物や貨物を管理するサプライチェーン・ソリューションを提供しています。
2023年にMOVO Vistaを導入いただき、配送依頼のデジタル化を実現しました。
今回、導入の経緯や成果について、執行役員 ロジスティクス事業部 統括本部長 須藤 仰様、インターモダルプロダクトマネージャー 海沼 千尋様、ジャパン・インターモダルオペレーション マネージャー 佐野 英一様、ジャパン・インターモダルオペレーション 大城さおり様にお話を伺いました。

執行役員 ロジスティクス事業部 統括本部長 須藤 仰様
インターモダルプロダクトマネージャー 海沼 千尋様
ジャパン・インターモダルオペレーション マネージャー 佐野 英一様
ジャパン・インターモダルオペレーション 大城さおり様

導入前の課題
  • 海上コンテナのトラック輸送依頼に関するデータが一元管理されておらず、集計に時間を要していた
  • 輸送データから、輸送効率化や戦略に関する示唆を得ることが難しい状況だった
  • 配送の依頼手配において、メールやエクセルといったアナログな方法を使用しており、非効率な作業が発生していた
導入後の成果
  • 輸送データをMOVO上で一元管理。データに基づくスピーディな戦略立案を実現した
  • 配送依頼のデジタル化により、業務効率を改善。やりとりが見える化されることによって、情報の透明性向上につながった

Q.MOVO Vista導入前の課題を教えてください

須藤様:弊社は陸海空の各輸送モードに適したDX化を推進しています。
航空輸送、海上輸送はグローバルに使用できる自社システムを使用していますが、私が責任者を務めるロジスティクスサービス(陸上輸送)においては、各地域の特性があるため、グローバルで同一のシステムを活用していくことが困難でした。そのため、それぞれの国でソリューションを導入し、DX化を進めています。

佐野様:これまではTMS(輸送管理システム)を使用しておらず、エクセルやメールを用いたアナログな方法で、海上コンテナのトラック輸送手配を行なってきました。そのため、手配業務の手間が発生するだけではなく、トラック輸送に関するデータの抽出が困難であり、集計に時間を要していました。

加えて、トラック輸送に関するデータが、台帳、配送依頼書、支払いシステムの3つに分散していることも非効率の要因となっていました。
台帳で輸配送における基本的なデータを管理していましたが、配送先の情報とサプライヤー様の情報はカバーされていなかったため配送依頼書と突き合わせる必要があり、更に最終的な金額に関しては支払いシステムを確認しなければなりませんでした。入力規則等が統一されていないため、集計において抜け漏れが発生しうる状況であり、情報の正確性にも不安を抱えていました。そのため、データから示唆を得ることが困難でした。

以前よりTMSの導入がグローバルで計画されており、各国で続々と導入がスタートしたものの、日本は先送りになっている状態でした。システム導入をせず、アナログな方法で業務を行うままではデータ化が進みません。まずは現状の見える化を行い、データを分析・活用することが1番の課題でした。

データの可視化、そしてオペレーションの効率化することを目指し、システム導入を決めました。MOVO Vistaは導入がスピーディに行える点やコストが抑えられる点を評価し、選択しました。

荷主50社、サプライヤー30社のトラック輸送データを一元管理し、販売戦略や輸送効率化のための施策立案に活用

Q. MOVO Vistaの活用方法について教えてください

大城様:コンテナの陸上輸送手配に使用しています。

荷主様からのオーダー情報をエクセルでMOVO Vistaに取り込み、各サプライヤー様に依頼を出しています。サプライヤー様への支払い料金はMOVO Vistaでマスタ化しており、依頼から最終価格確認までシステム上で行っています。

Q.MOVO Vista導入の成果を教えてください

 

須藤様:1番の効果はやはり「可視化」だと思います。スピーディにデータが集計・分析できるようになり、販売戦略や輸送効率化のための施策立案に活用しています。

海沼様:私はロジスティクスサービスの内陸輸送のプロダクトマネージャーを担っています。港から倉庫までのドレージや、国内における内航船の輸送ソリューション、また販売戦略の立案が主な役割です。
MOVO Vistaから抽出されたデータを使うことで、荷主様別の売上や利益率、サプライヤー様別の支払いの数値がスピーディに、また正確性をもって算出できるようになりました。

また、これまで抽出が難しかったデータが確認できるようになったことで、必要な輸送能力の確保に向けた施策が打てるようになりました。

具体的には、MOVO Vistaに蓄積されたデータから港別の月間案件量推移を確認することで、輸送力が不足しそうな港や時期を事前に察知し対策が打てるようになりました。新たなサプライヤー様に仕事を依頼する際に具体的な時期や輸送量で交渉ができるようになり、ミスマッチも防ぐことができます。

須藤様:サプライヤー様との関係構築はロジスティクスにおいて非常に重要な要素のひとつです。物流の「2024年問題」だけでなく、年末年始などの繁忙期において配送できないことが生じると荷主であるお客様の信頼を失ってしまうため、大きなリスクにつながります。

「2024年問題」によって運べるキャパシティが限られていく中で、サプライヤー様のご要望を汲み取り、対話していかなくては、事業の継続にも大きな影響を及ぼしかねません。話し合いの場において、より具体的な内容で意見交換できるようになり、解決策や今後の取り組みの提案につなげることができたことは大きな変化だと思います。

大城様:私たちインターモダルオペレーションでは、サプライヤー様とのトラック輸送手配業務を担当しており、チャーター車の配車繰りにも活用しています。
今まではチャーター車の空きが発生した場合、チャットでチームの者に聞いて回るなど、苦労していました。現在はMOVO Vista上で条件が合致しそうな案件を自分で探すことができています。

佐野様:手配業務においても”脱メール”が実現でき、業務効率化の成果を出せています。
サプライヤー様への輸送手配を担っているのですが、以前はエクセルをPDF化してメールで依頼しており、メール作成作業に多くの時間を要していました。現在は、MOVO Vista上で簡単に依頼ができ、時短につながりました。

また、以前のようなメール手配ですと、CCに入っている者しか各手配の進捗状況を把握することができません。やり取りの履歴などを関係者に確認せずとも、MOVO Vistaを見るだけで把握することが可能になりました。MOVO Vistaでやり取りが可視化されたことによって、メンバー全員が必要な情報を、即座に確認できるようになり、情報の透明性向上にもつながりました。

Q. MOVO Vista導入時に苦労されたことはありましたか?

大城様:サプライヤー様やチームメンバーにご協力いただき比較的スムーズに進んだように思います。導入の際に最も苦労したことは、マスタの登録です。

まず、MOVO Vistaに蓄積されたデータを使ってどのような分析がしたいかを先に考え、そこから逆算する形でマスタ登録を進めていきました。登録方法やルール作りに最も時間を要しました。
コンテナ配送の料金は、コンテナのサイズ、タイプ、輸送する地点間の距離によって決定します。これらをどのように表現するかが、MOVO Vistaをスムーズに使用することにおいて重要なため、慎重に考えました。

 

Q. 今後MOVO Vistaをどのように活用していきますか?

大城様:現在は手配業務での利用に留まっているため、支払業務にも活用範囲を広げたいです。
現在、MOVO Vista上でサプライヤー様に請求額を入力していただいているものの、実際の支払業務には活用できていません。マースクが使用している会計システムとの連携により、更なる効率化が望めるのではないかと期待しています。

須藤様:配送先情報を活用して、コンテナのラウンドユース(※)に適したお客様との取引強化につなげていきたいです。
マースクは輸入貨物の割合が多いのですが、貨物を取り出した後の空コンテナを、輸出で再利用したいお客様とマッチングするべく、データ分析を行っています。通常、輸出貨物の場合、空コンテナをわざわざ港まで取りに行く必要があります。しかし、ラウンドユースでマッチングできるお客様を見つければ、荷積み拠点の近くで他のお客様が使用した空コンテナを転用できるようになります。結果として帰り便案件を効率的に獲得できるようになります。このような利点に加えて、走行距離が短縮されることにより二酸化炭素の削減にも貢献できると考えています。

※ 輸入貨物の運搬後に空となったコンテナを港に返却せず、輸出貨物の運搬にも使用することで、空コンテナの輸送を削減する方法